14スラ 機関車トマース! スライムさん

うららかな春の日差しは1スラ目から続いているので天候については端折る。


 オレたちは、まだ乗ってるんだぜ?列車によぅ


傷だらけでイカツイ顔したオッサンが言い出しそうなセリフで現状報告終了。


大人たちは、窓の外を舞い散る光の欠片(スライム胞子)をウットリ眺めて良い雰囲気を作っている。

ここにテツコがいたら「う~ん、ロマンチック~」と言っているレベルだ。

どのテツコか言及しないからセーフだ。 …セーフだよね?


幼児、ポヨヨンなスライムさんクッション(特大)の上で48の感嘆技であるオムスビコロリンデングリガエシを披露中。


 コロリン コロリン


「んふー♪」


 コロリン コロリン ムギュリ ピヨーッ


「んふー♪」


 コロリン ムギュリ ピヨーッ コロリン ムギュリ ピヨーッ ツカミ


「ちょっとベル、止まりなさい!」


車内を所狭しとコロリンする幼児が静止された!

実姉ローズは、あろうことか試技中である回転幼児の襟首を正確に掴むと言う離れ業をやってのけた。

さすが、チョコマカウロウロ幼児を捕獲することに関してはエキスパートだ。

ここが地球であれば、ギネスブックに登録されるであろう偉業だ。


「でんぐり返しにヒヨコさんが巻き込まれてるわよ。」

「ぴよこさん~? どこ~?」

「背中だ、背中。ワンピースの吊り紐に引っかかってんぞ?」


幼児、背中を見ようと首を後ろに回すが見えないためピョコンタピョコンタ跳ねながら首を向けた方に回転する。

うん。そうやっても見えないよね。

あれだ。自分のシッポを追いかけてグールグル回るいぬちゃんと同じだ。

いぬちゃんは加藤さんちの子だ。東京タワーず!。これで著作権も大丈夫!


「ちょっとまってろ。いま取ってやる。」


などと言いつつ、スライムさんお得意の触手状のナニかが器用にウネウネリと!SAN値チェック!OK、水準だ。

ぴよこ、ムギュリと掴まれペイッとされた。

ぴよこ、服についた糸クズと扱いが変わりませんよね、スライムさん。


「ほら、取れた。」

「あ! ぴよこさん、いたー!」

「ピ、ピヨ…」


ぴよこ、幼児に両手でムギュリと掴まれ天高く持ち上げられる。まるで天上にて讃えるかの如く。

上下にバンザイを繰り返す様は神々しくもある。

そこへピョコンタピョコンタが加わった!

奇しくも48の感嘆技コレハトテモイイモノデスワアナタニハサシアゲマセンコトヨという奥義とも言えるべき技が開始されたのだ。


 スポーン ピヨッ!? スチャ プラーン


奥義の激しさから、ぴよこが等加速度運動にて天上、もとい天井へ射出された。

弾道が放物線を描く場合、一番飛距離が出る射角は53度だ。和弓でも200mほど飛距離が出る。


「あれ? ぴよこさん、いなくなった!」

「上見ろ、上。ぴよこのヤツ、器用にぶら下がってるぞ。」

「え!? ぶら下がってる? アレはくっついてない?」

「ピヨ? ピヨ~」


いつものパターンで器用に羽で頭を掻いているテレッテレなぴよこ。

が、天井にくっついている。どんな状態であるかと言えば。

コネコネして柔らかくなった粘土をエイヤッと天井に投げつけてペッチョリした時と同じ状態だ。

なんか、天井に重力働いてないかい?

キミ、ローズの頭にも引っ付いてたよね?重力無視して。

とりあえず褒めてナイからテレッテレはやめなされ。


「!! ピヨッ!?」


 ガタン ゴトン ガタン プシュー ガタゴトン

 ガタガタ ガタン ガ タ ン ゴ ト ン


「とまった! おそと、うごいてない!」

「あら? 着いたのかしら。」

「ああ、到着だよ。みんな、降りる準備をしよう。スライムさんは元のサイズに戻ってくれるかな?」

「おう。ポケットサイズくらいにしとくか。」

「あら、このままじゃダメなのかしら? ポヨポヨでとっても座り心地が良いのに。」


ママン、移動するんだってば。スライムさん格納しないといけないんだってば。

ナニか?もしや移動式スライムさんソファーを期待してたのか?


「ぴよこ…は、ローズの頭にくっついてんな。いつの間に移動しやがった。」

「え? あれ? ホント、いつ頭の上に乗ったの? 気付かなかったわ。」

「ピヨー ピヨヨ」


なんか、羽を顎の下に当てて「うーん、マンダーム」をするぴよこ。

多分、そのポーズ意味ナイだろ。


家族そろって駅のホームへ。


 ポヨヨーン スッポリ チクチクチックン


スライムさんはベルのポッケにストライク!


「って、おい! ベル! ポッケの中にカブトの頭が入ってんぞ! チクチクするじゃねーか!」

「うん! みつけた!」

「…あー、そうか、見つけたのか。そんじゃあポッケにしまうわなぁ。」

「うん! しまった!」


どうやらベルは列車に乗るまでの移動途中で拾ったようだ。

カブトムシのアタマ。

昆虫の王者がっ!なんて姿に…!死して尚、その偉大な角はチックン力が絶大だ。

裸足で踏むと痛いぞ!


列車の構造は、機関車の次に客車が2両繋がっている。あと貨物車がいっぱい。

機関車は水色だ。

ほどよい筋肉が付いた灰色の腕は、頭上?の煙突のようなものを上下に撫でている。

時にソフトに、時にハードに。そして撫でる速さが加速する!


 シュッ シュッ シュッ シュッ ポッポー ボフッ


煙突のようなものから大量の白い煙が立ち上った。


「すごい! いたんしゃ、ぼふっした!」

「煙が一気に出たわねー。へんなの。」

「ピヨッ!」

「この機関車はトマースって言うんだよ。可愛らしいお客さん。」


駅員が余分な情報を幼児に提供する。

黙っておればガン無視出来たのに!

ほら、幼児が興味持っちゃったじゃん!


「とまーす! こんいちわ!」


機関車の顔に向かって元気に挨拶する幼児。

元気があればナンでもできる!元気ですかーっ!


つーか、顔ありますよ。

少し肉付きの良い人が笑った時に出来るホッペの丸くなる部分が搭載されている。

アレだ。ファット、ファットと笑った時のホッペのタコヤキ部分だ。


大きなお目めはまん丸。

白目の中にある大量の小さな黒い点が羽虫が舞う様に自由運動していなさる。

おや? 黒い点たちのようすが…


黒い羽虫が一カ所に集まってまん丸くなった!縁がもぞもぞしてるぞ!

進化じゃなくて合体の方だった…

黒い点の集まりが!


( ゚д゚)

(゜д゜)彡 ギョロン ポッポー


こっちみんな。


「キモッ!」


直球だなスライムさん。


「うえぇ、虫が…虫が集まって…目になった…。」

「ピヨ? ピヨー」


うん。ローズから見ても虫に見えるよね。


「とまーす、すごい! めがでた!」


幼児、悪魔合体に喜びまくり。

両手を上に挙げピョンピョン飛び跳ねる。

万歳仰天回転、もしくはバンザイウレシロールと呼ばれる48の感嘆技のひとつだ。

1スラからコピペした。


 ピョコンタ ピョコンタ ポロン ブニョン スッポーン ベチリッ ポトリ


あまりに激しいピョコンタに、スライムさんはポッケからフリーフォール。

そして悲劇が始まる。

垂直に上昇した幼女の全体重がスライムさんのハジッコを踏みっと。

一点に集中したピョコンタ力はキブン的にフレミングの左手の法則に当てはまるような雰囲気を持ちながら砲弾が射出されるかの如く力学的に変換される。

うん。スライムさん踏まれて反動でスッポーンと飛び出しちゃったね。

トマースの側面に勢いよく衝突、からのーー落下。


「すらいむさん、とんだー!」


 ポヨン ポヨン


「うおーい、ベルさんや。気い付けてくれや。オレ、また踏まれたぞ。」

「ごめーん。」ギュッ ギュッ


再度、スライムさんを格納するベル。いつもより多めに押し込んでいます。


 ポッポー ポー


あ、くそっ!このまま無視する方向で終わろうと思ってたのに!鳴き声だすなや!


「うおっ! キモッ! 目ん玉高速移動してやがる! なんじゃそりゃ!」

「とまーす、すごい! ぐるぐるー!」


幼児、両手を天に向け、そのまま頭上で手の節と節を合わせる!

節合わせ!ナムー。

その勢いは重力から切り離されピョコンタピョコンタと飛び跳ねることに!

更に!クルクルと横回転入りましたー!

これは48の感嘆技のひとつ、ドリルハオレノタマシイダである。

この技は禁断の技に数えられ、穴掘り職人からアニキ合体を経てナンかいろいろしちゃうのだ。


 ピョコンタ ピョコンタ ポロン ブニョン スッポーン ベチリッ ポトリ


そして過去は繰り返される。


「うおぃっ! だから踏むなっ!」

「ごめーん。」ギュッ ギュッ


「機関車は魔法で動くゴーレムなんだよ。感情があるとは聞いたことないが。」

「あら、そうなの? あのだらしない顔は碌なことを考えていない顔よ?」


大人組が余計な話を持って来やがった。

トマース、また煙突のようなものを上下に撫でている。

時にソフトに、時にハードに。そして撫でる速さが加速する!


 シュッ シュッ シュッ シュッ ポッポー ボフッ


煙突のようなものから大量の白い煙が立ち上った。

その顔は、だらしなく口を半開きにし、よだれが糸を引いている。

虫の塊で出来た瞳は上瞼に半分以上隠れて白目に。


「とまーす、ぼふっしたっ!」


そして過去は繰り返される。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る