12スラ とびでた!どうぶつは森! スライムさん

この雑木林、意外と色んなモノがあったり生き物がいる。

侮ることなかれ。

都会人が想像する雑木林と田舎人の言う雑木林は根本から違うのだよ。

規模が。


勇者ベルのパーティは奥へ奥へと当てもなく彷徨う。

リーダー幼児だからあっちへウロウロこっちへフラフラした結果だ。


染色ぴよこは果汁が乾いて甘ったるい匂いがプーンプーン。

そのカラダに黒く蠢くちっさいのはアリじゃねーのか?たかられてない?


果物ゼリーなスライムさんはポヨンポヨンと見事な跳躍が光る。

あ、日の光が反射して物理的に光ってたのね。


我らがリーダーのベルさんはと言うと。

30cm定規をフリフリあっちへウロウロこっちへフラフラが止まらない。


たまにローズがベルの襟元引っ張り捕獲する。

手慣れてるね、アナタ。そうですか、いつもこうなんですね。



ポッケの入居者も着々と増えている。


途中で捕獲されたメタルなミドリに輝くカナブン

木にくっついてたゴマダラカミキリムシ

入居者がいなくなったデンデンムシの殻

風化して白くなったシジミの貝殻

何故か木があるところによく落ちてるビーダマ

ビスクドールっぽいナンかの右手

半分埋まってた謎のペンダント

虫食いで穴だらけの落ち葉

モギリモギリしたシメジ2本

小鳥っぽい生き物の頭蓋骨


春先だからね。引っ越しシーズンだからね。

勧誘上手な大家さんデスネ。

野生のシメジは味が濃いからイイよね。



ちょこっと開けた空間に到達。

結構樹齢がありそうな木を中心に背の低い系植物くらいしかない。

そうです。真ん中の木が太陽遮るんで他の木が育たないのです。

日照権の問題で近隣住民との確執が!


「ほー、こりゃなかなかデカイ木じゃねーか。生き物の気配が多いな。」

「どんぐりいっぱい!」

「森の外から見えてた目印の木ね。結構奥まで来たのね。」

「ピヨ」


この木は近辺の目印にされてるようだ。

成る程、森で迷わないためのおばあちゃんの知恵袋的アレですね。


スライムさんが触手のようなナニかでなかなかデカイ木に触手さす。


「ぴよこ! 体当たり!」


スライムさん、ぴよこにナニを仕込んでるんですか。


「ピヨーン!」


おい、鳴き声。おかしくね?


ヒュゴッ ダカーン エグリエグリ グラングラン ボトボトボト


「おー、すげーな。」


空気を切り裂く音と強固なナニかが衝突したような大音響。

盛大に揺れまくる木。

ナンかボトボト落ちてきましたがな。


紫に黄色斑の弾丸が命中。

つーか、音速出てたよね?

木が抉れてますが?

おまえ、頑丈だな。


「ピヨ~ッ ピヨヨ」 テレテレ


羽で頭を掻くひよこ。

そこ、照れるとこチガウ。褒めてナイ、褒めてナイDEATH。


木から小動物がモッサリこんとフリーフォール。

ぴよこの衝撃的な体当たり映像が、いやさ、物理的体当たりの衝撃怖し。

小動物、ピクピクしとります。


「うわー! いっぱい! どうぶつさん!」

「ホント、たくさんいたのね。って大丈夫なの? この子達、ピクピクしちゃってるケド!」

「んん? 体当たりの衝撃で失神したみてーだな。まぁ、大丈夫だろ。気が付きゃとっとと逃げてくさ。」

「ピヨ? ピヨッ!」


動物愛護団体から壮絶なバッシングを食らいそうな絵面だがこれはファンタジー。

だから問題ナッシング!

それよりキミたち、突撃ぴよこにツッコミはないんかい。


10ぴきくらい小動物が転がってる。あとちっさい鳥とか。

なんかガッチン漁みたいだ。

水ン中のおっきい石にデッカイ石をぶつける衝撃で魚がマヒしてプカーリするヤツ。

日本じゃ禁止されてるけどファンタジーだからオールおk。


「これー、りすさん?」

「ああ、こいつはリスだ。」

「りすさん! いっぱいいる!」


ベルは両手を拳に握り肘を支点に上下にフリフリする48の感嘆技マチョーメマンを敢行する。

両手が下に降りた際、M字に見えるところがマチョーメなのである。マコトムシは出ないよ。

勢いでポッケの居住者がフリーフォールするのは決まり事なのである。


「じゃあ、これはー?」

「おっ、珍しいな。おこじょ、だ。木に登ってたんじゃねーか。そんで巻き込まれたんだな。」


はた迷惑な話である。

巻き込まれ異世界召喚並みのはた迷惑さだ。

そしてチートない程度で切り捨てられるパタン。

お話を解かり易くするために対立する脇役の知能指数を低下させる手法だ。


「おこじょ! おこじょ! すごーい! どうぶついっぱい!」

「顔が丸っこいわね。胴が長いわ。なんかイタチに似てる。」

「イタチの親戚みたいなもんだ。そいつ、肉食だぜ? ウサギとかネズミとか食うんだ。リス狙って巻き込まれたんじゃねーか?」

「え!? リス食べるの? 顔はかわいいのに…」

「りすさん? たべゆの? おいしいの? もってかえる?」

「この辺じゃ、リスは食わねんじゃねーか? 人間からすりゃ肉がくせーし身が少ねーし、捌く手間かかるしな。同じ手間なら鳥食うだろ。」

「!! ピヨッ!!」

「いや、ぴよこのことじゃねーよ。おまえら食えねーだろ。ぴよこ齧った熊とか泡吹いておっ死んじまうし。」


え!?ぴよこ毒あるの?触って平気?エンガチョする?


「そもそも、ぴよこ鳥ってホントに鳥か怪しいからな。」

「ピヨッ! ピヨピヨッ! ピ~ヨ~ッ ピッ!」


ナニ言ってますねん、アンタ!のジェスチャーをするぴよこ。

ツッコミ芸人並みのリアクションだ。

キレッキレにキレまくるツッコミには全米が驚いた。らしい。


 つんつん つんつん


 ピクッピクッ ピクピク


「んふー♪」


 つんつんつん つん つつんつん


 ピクッピクッピクッ ピックン ピピクンクン


「んふー♪ んふー♪」


只今、主砲の30cm級戦略刺突定規が射撃中。

目標、小動物。敵機10機以上!即座に迎撃態勢に移れ!

というカンジで幼児のツンツンが始まっている。


 つんつん つんつん


 ピクッ ハッ! キョロキョロ ビビクンッ スタコラサッサー


「あ、いちゃった。」


ツンツン攻撃でリス覚醒。ツンツン幼女を発見、即座に撤退。

それは英断だったと後の彼は語ったという。

後ってどのくらい後のこと?

アンタら埋めたドングリのことすぐ忘れちゃうレベルじゃん。


「ベルはホントにツンツンするのが好きねえ。」

「うん! つんつんするー!」


などと話しながらローズの手の中にはリス(失神中)が収まりナデリナデリされている。

ベルはスタコラサッサーしたリスへ向かって場外放送敢行。


「りすさーん! またねー!」


おててフリフリ大音量。


 ビックッ ビックン ビビクン ビクッビクッ ビク ビックンビックン

 ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ヌ? フホッ! ホゲッ!

 スタコラサッサー スササササー シュバッ チョロチョロリー

 シュパーシュパシュパシュパー キュッキュッキュキュー


小動物全員おっきしました。

消え去ること脱兎のごとく。リスなのに。

ローズが手に持ってたリスも戦略的撤退。

フリーフォールからの遁走。トリプルアクセル並みの回転キメッキメ。

シュパシュパと唸るのはエンジン音。忍者の科学はスゴイぞ!

ペンダントはキュッキュッキュキューと鳴るぞ!怪人くるぞ!


「あれー? みんないなくなっちった? へんなのー。」

「みんな逃げちゃったねー。ザンネンザンネン。」

「おいおい、ベルよ。でけえ声でビックリして目え覚ましたんだぜ? おまえだって大きい声出されたら起きるだろ?」

「んふー? おきたー? べる、おこした? おこした!」

「ピヨッ! ピヨピヨ」 カリッ コリッ カリカリッ


ぴよこ落ちてたドングリ貪り中。おまえハナシに参加しろ。


小動物の起床係として役目を果たしキャッキャと喜ぶ幼児。

定規フリフリピョンコピョンコと48の感嘆技ヨロコビノアマリスッポヌケタを披露。


 スッポーン プッスリ


幼児の手からスッポ抜けた30cm定規はスライムさんにプッスリと。

この感嘆技の正しい在り方だ。


「すらいむさんになんかはえた! すごいっ!」


生やしたのはアナタです。


「ベルさんや。おまえさんの定規だぞ、これ? ホレ、ちゃんと持っとこうな? スッポリ飛んでっちまうからな?」

「うん! ちゃんともつー!」


定規の両端を持ち、バンザイロールする幼女。

ポッケの住人がまた落ちてますよ?

あ!デンデンムシの殻が!踏まれてクシャッて!


「さあ、そろそろ帰りましょう。じきに暗くなるからね。」

「はーい! おうちかえるー!」

「おう? もう帰るんか。まだ日は高えんじゃないか?」


帰り道のあっちウロウロこっちフラフラの時間込なのである。



「ピヨー! ピヨピヨ」


ぴよこ、締めはおまえかよ。何言ってるかわかんねーよ。


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