11スラ あつめろ!どうぶつは森! スライムさん

ウサイさん。

40絡みの中年太りに髪がさみしくなった草臥れた中間管理職。

不況をその身に受けつつもなんとか会社にしがみ付き、家に帰れば邪魔者扱い。

人生の意味について漠然とした不安を感じる今日この頃。

ってカンジの名前だよな。


盗んだモーターサイクルで走り出す青春の一ページ的なにかとは似ても似つかない元気いっぱい幼児のかけっこは今始まったばかりだ。

俺は走り続けるぜ、この幼児坂をよ、などと微妙なラインの台詞はOKでしょうか、天の声よ。


ステテテテー スッテン コロリーン


始まったのか打ち切りなのかの微妙なカンジの抒情詩的何かは盛大にコロリンしてたった今息の根が止まった。


「あははー! ころんじった!」


幼児、盛大に前転かまして軟着陸。

ポッケの居住者がぶちまけられております。

ベルは大家さんとして責任もって住民を回収しております。

ポッケにポポイッと。

店子は大事です。

大事ですがマツボックリとかポッキリぷらぷらーんしてますよ。

なんか枝というか房というかプロペラみたいのが。


「おーい、ベル。大丈夫かー。」

「ベル、急に走ったら危ないわよ? 転んじゃったじゃない。」

「んふー♪ へいきー!」


右手をシュピッ!と頭上へ元気よく。たぶんマッハ出た勢い。

幼児は多少痛い多少熱いなどはすぐさま忘れて遊び続行するので大人は良く見ておこう。

熱中症になってたり鎖骨が折れてたりすることがあるからね!(マジで)


「あれー? うさいさんどこー?」


キョロキョロとウサイさんを探す幼児。

そんな草臥れた中年オッサンはおりませんよ?


「なんだ、ウサイさん? ダレだそりゃ? どこのおっさんだ?」

「ウサイさん? ウサイ…ウサギさんのこと?」

「そう! うさいさん! ぴょんぴょんするの!」


驚愕の事実。草臥れた中年オッサンはウサギだったのだ!

なんてこった、ウサミミオッサンなんてどこに需要が………。


両手を頭の脇に付けてウッサウサを表現しつつピョコンタピョコンタするベル。

ピョコンタの反動でポッケの住人がフリーフォールしてますよ、大家さん!


「ウサギ? んー? ちと、待ってろ。(索敵中)お、あそこにいるな。」


スライムさんがまた触手のようなナニかで指さす、もとい触手さす。

さすがスライムさん、世界全てを感知するゴッドなカンジが這い寄るなんたらでウサ吉程度は全てスライムさんの手の平の上で小躍りしている様なものである。


指し示されたそこには茶色く耳が長い小動物。

お腹の白い毛がチャームポイント。

身体を起こしてこっちを見ているぞ!


<●><●>


その目はヤメロ。


ウサミミピコピコ、口元フンス!フンス!してマス。


ガサガサッ ビックン ウッサウサピューン


「うさいさん、いっちゃった…。」

「あらら。いちゃったわね。何の音かしら? それに驚いたみたいだけど。」


ガサガサガサッ


「お、あそこにベリーが生ってるじゃねーか。なんか動物が食いに来てるんじゃねーか? 枝が盛大に揺れとるわな。」

「あ、ホントだ! こんなトコにベリーがあるなんて知らなかったー。」

「んにゅー? べりー? べりー! べりーおいしい! たべゆ!」


野生のブラックベリー参上。意外と繁殖力強し。

茎にトゲトゲあるから要注意。チクチクチックンするぞ!


ガサガサガサッ ヒョコッ


「ピヨ?」

「おまえかよ!」


背の低いブラックベリーの木から顔を出す黄色いぴよこ。

いや、すでに紫っぽい斑が全身に!斑ぴよこ!

キミたちも食べる?みたいなジェスチャー付き。

おまえIQテスト普通に受けられるレベルだろ。


「あれ? いつの間に? え? さっきまで頭の上にいたハズなのに?」

「あははー! ぴよこさん、へんないろー!」


ベルさん、あなたの口の周りも早速ヘンな色に染まっとりますがな。

あ!また袖でナイナイされた!

袖の色が紫に染まっとりますがな。叱られ案件ですがな。


「もう、ベルったら。ハンカチで拭きなさい。」

「はんかちー? ないっ!」


それじゃ袖でナイナイするしかないよね。仕方ない仕方ない。


「ほら、ここに入ってるわよ? ちゃんと見なさい。」


ベルのスカートには両脇にポッケがあった!

青色で猫型と言い張るロボのポッケだけじゃなかったのね!


「! ぽっけがある! すごい! いっぱいはいる!」


両脇のポッケと初めて邂逅したようだ。

さっそくブラックベリーがポイッとされ…なかった。

まさかの展開。

ポイッ挙動を制止されたのだ。姉に。


「ダメよ? ポケットにベリーを入れたら色が着いちゃうわ。叱られちゃうのよ?」

「えー? べりーはどのぽっけならいいのー?」

「なんだ、ベルはベリー持って帰りたいんか?」

「うん! おみやげ!」

「んじゃ、オレが持ってってやるよ。」


とか言いながらスライムさんは触手のようなナニかでブラックベリーをポポイのポイと身体の中に取り込む。

もっさりと。

なんか、果物入りゼリー見たくなっとりますがな。


「わ、身体の中にしまえるんだ。うわー、便利ねぇ。」

「すらいむさん、すごいー!」

「おうよ、すごかろ?」


ベルは驚きを表現する。

バンザイの勢いでジャンプを繰り返す48の感嘆技オドロキモモノキサンショノキを達人の域で連発中だ。

これに回転技が加わると、変化技であるブリキニタヌキニセンタッキに変わる。

しかし、ダイ巨人が乱入してくるため、変化技は国際的に禁止されている。

お見せ出来なくてとても残念だ。


「ピヨー」


モッチャモッチャ


いつの間にかぴよこの黄色部分の方が斑になっている。

病気のような紫色にヤバげな黄色い斑点が!

紫芋も真っ青です。紫なのに。

つーか、まだ食ってるんかよ。


「おいおい、ぴよこ。食い過ぎだ、食い過ぎ。他の生きもんの分も残しとけ。」

「ッ!! ピヨッ! ピ、ピヨ、ピヨ~」

「うわー…、ヒヨコさん、凄い色になってる…」

「んふー! ぴよこさん! むらさしいろ!」


ぴよこ、羽を広げて驚きのポーズから流れる様に羽で顔を隠し嘆息した後、反省が伺える表情になる。

「また、なんかヤっちゃいました?」と。

その台詞は反省しても学習しないからまた繰り返すって前フリだぞ、ぴよこよ。


反省?知りませんなそんな人。

そろそろ定型文乙!って認定される台詞だから大丈夫さ!


…………たぶん。きっと。切望。


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