十スラ おいでませ!どうぶつは森! スライムさん

このお話、話数の数え方なんだけど、1スラ→ワンスラのように読んでくれ。

でも、10スラだけはイケナイ。すごくイケナイ。

だから、ジュウスラですよ。

サブタイもかましているけど気のせいですよ。



「はいほー♪ はいほー♪ むにゃむにゃぷー♪」

「ムニャムニャプーってなに? ベル。」

「んふー? んー? わかんないっ!」

「……。そう、わかんないか。」

「うん!」

「ローズ。幼児のノリで出た言葉に意味を求めないほーがいいぞ。」


さすがスライムさんの悟り具合は鍋磨き修養を感じさせる。


今日はとっても良い天気。

うららかな春の日差しに汗ばみそうな陽気は睡魔を誘うが、子供たちは電池が切れるまで元気全開だ。

ひとしきり走り回ったベルは森に行ってくると言い出し、慌てた両親が姉を添乗員に雇ったのであった。


ここは、スライムさんとベルが邂逅した草原。

のすぐそばにある雑木林。

意外と広い。

田舎であることからも小動物が棲んでたり、ドングリやら木の実が落ちてたりと近場の癒し空間である。

つっても田舎なので回り全てが似たようなヒーリング空間なんだけどね。


現在、このパーティ。

勇者ベルを筆頭に、保護者ローズ、その頭上に睡眠担当ぴよこ、遊ぶ人スライムさんの4人構成。

遊び人ではなく遊ぶ人なところがスライムさんの深淵のような深い業が伺える。

世界全てで遊ぶ!…というカンジな雰囲気な匂いが濃厚。


睡眠担当のぴよこはローズの頭の上に張り付いている。

「重力? 知らん人ですよ。」とでも言うようにペタリとくっついている。

頭を振っても下に下げても微動だにしない。

それ、どーなってんの?


「ピヨー…zzz ピヨー…zzz」


それが答えか!うん、判らん。寝息よね?それ。


スライムさんはポヨンポヨンと跳ねながら移動している。

這い寄る混沌的なジワリジワリな移動じゃなくてヨカッタ。

ポヨンポヨンを侮ってはいけない。

バスケット部員が体育の授業で素人なクラスメイトをあざ笑うかのようにティーンティーンとゆっくりドリブルするナメプに近い。

腹が立ってスライディングかました記憶が蘇るほど、移動には丁度良い速度である。

あと複数人で結託してバスケットボールで射的の的にした記憶も合わせて蘇る速度だ。

スライムダンク決めちゃるねん!決まると検閲削除だがな!


そして雑木林の入り口付近にモグラ穴。


 つんつんつん あっそれ つんつんつん もいっちょ つんつんつん


 グサッ ボロ グサッ ボロボロボロ モファッ ウスウスウスー


「んふー♪」


ベルはご機嫌のようだ。いつもより余計にツンツンしております!

哀れモグラ穴は終末世界の建築物のように崩壊し、なんかシャベルで穿り返してみました!的な惨状を呈している。

ここに本人モグラがいなくて良かった。

顔出しカメラ目線用出口に手を出されたら、土竜たちは怒りのあまりブレスを吐くぞ。モグーッ!と。

たぶんな!


「なんだ? ベル。物差しなんて持ってきてたんか。」

「んふー♪  おうちにあったー。」

「ちゃんと持って帰りなさいよ? 叱られちゃうから。」

「はーい。わかったー。」


なんと、今日のベルは30cm定規を装備していたのだった。

これでは破壊力が当社比1.25倍になる。

なるほど、モグラ穴は成るべくしてあのような姿になったのか。

然り然り。

納得の一コマである。


「あ! まつぼっくい!」


ベルの索敵範囲にトラップされたマツボックリ。彼の運命や如何に!

ポケットにポイッと入れられた。

すでに先客には。


ドングリ部隊

サルノコシカケをモギリモギリしたもの

セミの幼虫の抜け殻(去年度製作作品。現在風化中)

メメズ

メメズ用に腐葉土

腐葉土の上にいて巻き添えを食らったダンゴムシ


が共同生活中である。


大家さんであるベルは入居者から家賃を取らない博愛の精神。

そして入居者は後を絶たない。

主に大家さんの強制であるが。


「お、あそこにリスがいるな。」

「え? どこどこ? スライムさん、どこ?」

「んゆー? いすー? すわるー?」


ローズは木の上をキョロキョロ探す。

その動作に頭上のぴよこもキョロキョロ振り回される。

ピヨー…zzz あ、全然平気っスね。

ベルは地面をキョロキョロ探す。


「ベルはどこ探してんだ? ホラ、あの木の枝だぞ?」


そう言いながらスライムさんは触手状のナニかニュルンと生やし、クイッと指、いや触手さす。

幼児が怪訝な顔をする。


「あ! いた! かわいい! ほっぺが膨らんでる!」

「いすー、ないよー?」


賢明な読者諸君は十数行くらい前から薄々感付かれておられるだろう。

そう、椅子である。

ベルは着席可能な椅子を探していたのである。

そして、幼児が物を探すとき、対象以外が目に入らないのである。

飽きると対象自体も目に入らなくなるが。


椅子。人間椅子とか見つかるかな。

江戸前ランポ的なヤツとか家畜人ヤップ的なヤツとか。

うん、出ないけどね。イス。


「あ? あー、イスじゃなくてリスな? ホラ、あの木の枝にチョロチョロしてるだろ。」

「りすー? !! なんかいる! りす?」

「そう、あれがリスだ。」

「やー、なんかポリポリ食べてるー。ほっぺがプクーって! プクーって!」


「りすさーん! こんいちわー!」


ビクッ! ポロリ コロン スササササッ!

ビクッ! ピヨー? ピヨー…zzz


ベルさん相変わらずの大音量野外放送。

小動物がビックン!ドングリぽとーりするメズラシ映像をカメラが捉えた!

ぴよこがビックン!そしてグースカピー。おまえ、動じないな。


「あらら、逃げちゃったわね。」

「……いなくなっちった…。」


幼児ショボーン。

子供は騒がしいのが当たり前なのでこれはしょうがない。

不幸な事故だ。


「おいおい、ベルさんや。ちんまい生き物に大きい声で挨拶したらビックリして逃げちまうぜ?」

「ちんまいくまかぞく(仮)みたいに優しく優しくな?」


「…うん。やさしすくる。」


 ガサガサッ ピョコッ! ウッサウサ!


「あ! うさいさーん!」


ショボーンは時の彼方へ。

ああ、安室、時が見える…。

それは見えてはイケナイ文字列だ。バンザイで日が昇って〆られちゃうゾ!


幼児は耳が長い小動物を追って元気よく駆け出すのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る