15日目 夜 防衛大臣とNEW WORLD

ーー彼が亡くなるまであと2年



彼は初めてNWの存在を知った。「NEW WORLD…?」「そうです…世界的犯罪組織NEW WORLD…奴らが関わっているんです!」「そもそも、NEW WORLDってのはなんですか?」「我々国際警察はNWと呼んでいる組織で、世界中で起きている事件に絡んでいる犯罪組織なんです」「夕神さん…仮に奴らが日本で事件を起こしていないとしても、世界的犯罪組織なら日本で事件を起こしてもおかしくないと思うんです…」「希島さんの言う通りです」「それなのに、なぜ日本で公にやっていないのでしょうか?」「それはですね…日本のマスコミ、警察や政界にまで奴らのスパイがいるからです」夕神の口から語られたのは驚愕の事実だった。「少し待っていてください、資料を取ってきますので」そう言うと、夕神は資料を取りに行った。彼は紅茶を飲みながら、考え事をしていた。(もしかすると私は巨大な組織から日本を守らないと行けないのかもしれない…)心の中に不安を抱きつつも、彼は既に覚悟を決めていたのだ。





「良かったら、紅茶のお代わりありますけど…?」考え込んでいる彼に、彼女は優しく声をかけた。「あぁ…すいません、こんなに長居してしまって…」「いえいえ…旦那の為にご足労頂いたのですから、本当はもっとおもてなししないといけないのに…」「いやいや、紅茶を頂けるだけでも大変ありがたい事ですから」夕神が資料を探している間に、彼は彼女から夫婦のことについて話を聞いていた。「ここに住んでる人は創設メンバーだけだと聞いたのですが、遥さんもそうなのですか?」「えぇ、リーダーのアランと旦那は昔からの知り合いでして、アランが国際警察を創設する時に一番最初に声をかけたのが旦那なのです」「遥さんは反対はしなかったのですか?」「反対なんかしませんでしたよ、なんせ夫婦揃って正義感のかたまりですから…」「そうなのですね、なんだか私もゆっくり妻と話したくなりました…」彼は仕事が忙しく、なかなか妻と話せていないことを気にしていたのだ。「休みは頂けてないのですか?」「いえ、一応今日から1週間は休暇という形になっていますから…」「でしたら、今日の話が終わったら家に帰ってみたらいかがかしら?」「そうですね、そうしたいと思います」「そういえば…でしたら…」彼女は部屋の中にある機械を操作し始めた。「これを奥さまにあげて頂けないでしょうか?」「これは…」渡されたのは綺麗な宝石のついた指輪だった。「よろしいのですか?指輪なんて…」「それはここの技術で作った世界に一つだけの指輪ですから、奥さまも喜んでくれますよ」「ありがとうございます!」会話をしているうちに、夕神が資料を持ってきた。「すいませんお待たせしました、こちらを…」渡された資料にはNWの情報がまとめられていた。





「組織が結成されたのは約30年前…夕神さん、もしかして奴らはあの事件に絡んでますか?」彼が言ったあの事件とは、大統領暗殺事件であった。「そうです、30年前に行われた国際環境維持議会に参加していた国の一つ、その国の大統領であったマインド大統領が議会後に何者かに暗殺された事件、あれの犯人が奴らだったんです」「しかし…あの事件は未解決だったはずでは?」「公にはそうなっています、しかし裏には奴らがいたのです」「なるほど…でも、30年前の事件ですよね?なぜ国際警察が真相にたどり着けたのですか?」「確かに国際警察は10年前に創設されましたが、捜査自体は30年前から行われてました」「一体誰が…?」「当時、マインド大統領の秘書を務めていたアランの父親です」「アランさんの父親が大統領秘書?」「そうです…秘書を務めていた彼は大統領の死後、事件が一切捜査されていないことを知ったのです」「捜査されていなかったのですか…」「それをおかしく思った彼は、独自に事件を調べたのです、そしてNWの存在にたどり着いたのです」「それじゃあ、なぜリーダーはアランさんの父親ではないのですか?」「彼もまた、NWに消されたのです」「それじゃあアランさんの母親も…?」「いや、彼女は自殺してしまったのです」「自殺ですか?」「そうです…NWが自分らの存在がバレるのを恐れて、彼の関係者を消そうとしたんです…それを知った彼女は当時3歳だったアランを日本の知り合いに資料と共に託して自殺をしたんです」「なぜ自殺なんかを?」「情報が漏れないように、自ら命を捨てたんです」「そうだったのですか…アランさんはその後どうなったのですか?」「託された日本人によって、真実を聞かされていた」「聞かされていた…?もしかして、その状況を見たのですか?」「あぁ、私の両親がアランに伝えたのだから…」夕神から聞かされた様々な事実。NWが巨大な組織であること。NWが大統領を暗殺したこと。アランが夕神の両親に育てられたこと。他にもNWが関わった世界中の事件などを教えてもらい、彼は国際警察を後にした。そして夕神の車で家まで送ってもらう中でまた来ることを約束し、一緒に戦うことを決意した。






ーー彼が亡くなるまであと2年

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