第14話 パーティのまとめ役(ティター視点)
「なんだぁ、偉そうに」
ミッドイが鼻白むが、少女は怯む気配はない。
変わらずに嫌悪の眼差しを向けている。
「泥汚れって魔法でキレイに落とせる?」
「え、ええ。聖魔法を使えば落ちると思うわよ?」
聖魔法を応用すればできなくはない、と思う。
だが、不浄とか汚れとか呪いとかを落とす魔法で、目に見える汚れは洗って落とす方が普通だ。聖乙女程度の力では洗濯したほうが綺麗に落ちるような気がする。そもそも通常の用途以外で使えるほど力が強くない。そのため、どこまで綺麗になるのかは確信がもてない。
「姉御、僕の魔法でも綺麗になりますよ!」
「お前が魔法使ったら服自体がボロきれになるだろうが」
少年が嬉しそうに声をあげるが、カテバルが一瞬で否定した。
少女はそんな二人のやりとりを無視して、仕方ないとつぶやいた。
「次からは服を用意してほしい。着替えてからしか行かない」
「はあ、服だ? そんな平民の格好の何が大事なんだよ?」
ミッドイが呆れたように告げた瞬間、彼の姿が見えなくなった。
掻き消えたとか、立ち去ったとかでもなく。倒れているとか、空に浮かんでいるとかいうわけでもなく。
文字通りに姿が見えない。
「え?」
「あああっ、なんで今代勇者を殴り飛ばしたっ?!」
ティターが瞬きして隣にいた筈のミッドイを探していると、慌てたカテバルの怒鳴り声が聞こえた。
殴り飛ばす?
誰が誰を?
「あー、姉御のあの拳は効きますよねぇ。僕も受けた時から世界が変わりましたよ。気分爽快、目覚めすっきり、ようこそ新しい世界へって感じで」
「お前はなんでも前向きに受け入れすぎなんだよ、変態! いやそれより早く助けないとリザードマンのいる前線まで吹っ飛んだんじゃないか。方向考えて殴れよ。いや間違えた、殴るなよ?!」
「お義兄ちゃんが作ってくれた服だもん」
「わかってるよ、お前がお義兄ちゃんを大好きなのは。だけど誰彼構わず殴れってお前のお義兄ちゃんは言ってないだろうが!」
「大丈夫ですよ、カーティさん。腐っても勇者なんだからリザードマンの真ん中に飛ばされても大丈夫ですよ」
「大丈夫の根拠が薄いな! それに気絶してるかもしれないだろうがっ」
三人の今代勇者パーティを茫然と眺めていて、カテバルがまとめ役と言った意味が分かった気がした。確かに、これは大変だ。
なんだかよくわからないが、大変なことだけは伝わった。
いや、しかし今は勇者パーティの心配よりも自分たちのパーティの勇者が心配だ。
「え、ミッドイをリザードマンたちのいる方向まで殴り飛ばしちゃったの?!」
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