かくれんぼ

「みよがオニさんするからママとパパはかくれてね?」

「それじゃあ、みよちゃん。目を瞑って十数えてね」

「うん! い~ち、に~い、さ~ん……」


 ママとパパの笑い声がとおくなる。


 十かぞえて目をあけるの。それからママとパパをさがすの。


 パッと目をあけると青いお空が広がっていて、すごくきれい。


「う~ん、どこかな」


 公園のまんなかで、ゆっくり目を大きく広げて見渡したら、木の後ろからママが顔をのぞかせわたしを見てるの。


 かくれんぼなのに顔を出しちゃうなんてママのおドジさん。


「ママみっけ!」

「あら~、もう見つかっちゃったか。みよちゃんは凄いね!」


 ふふ、ママがほめてくれた。つぎはパパにもほめてもらおう!


 ママと手をつないで、パパをさがしてキョロキョロするの。


「パパみっけ!」

「うまく隠れたつもりだったんだけどな~。みよはすごいな」

「ふふ、すごいでしょう?」

「うんうん!」


 ほらね、パパもほめてくれた!


 もっとほめてほしいな。もっとあそびたいな。


 毎回わたしがオニさんになって、見つけるたびにほめてくれるの。


 でもね、お空がまってくれなくて、オレンジ色になっちゃうの。


「もっとあそびたい……」

「それじゃあ、もう一回やったら帰ろうね?」


 わたしが少し泣いたら、ママとパパがこまった顔をして、それから笑ってもう一回かくれんぼしてくれるって言ったの。


 それでもかえりたくないから、ゆっくりさがすの。


 そうするとママもパパもかくれているところから、ひょっこり顔を出しちゃうの。


 もう、かえらなきゃダメなんだな……。


「ママ、パパみっけ!」

「あら、見つかっちゃたわ」

「さぁ、帰ってご飯にしよう」


 もうお空はまっくらで、それでもわたしはこわくないよ? だって、ママとパパが手をつないでくれるもの。


 かえったら手をあらってほめてもらうの。


 そのあとはあったかいごはんを食べて、いっしょになって笑うんだ。


 あぁ、わたしはしあわせだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る