夢の追憶

星々来

いいな

 空が青色にそまって、近くの公園にわたしと同い年くらいの子が遊びに来ている。


 空が白色にそまって、木の下で休んでいた大人が子供といっしょにかけ回っている。


 空がオレンジ色にそまって、泣きじゃくる子供に大人はこまっている。


 空が黒色にそまって、子供は大人に手を引かれて公園からいなくなった。


「わたしもママとパパと遊びたいな……」


 わたしはいつも二階のまどからずっと公園をぼんやり見てはかなしくなった。


 好ききらいなんてしないよ? だって、わたしのごはんはないもの。


 べんきょうなんてしないよ? だって、わたしの本やノートはないもの。


 だらだらしていてもおこられないよ? だって、ママもパパもわたしを見てくれないもの。


 それでもわたしは泣かないよ? だって、なみだが出てこないもの。


「みかちゃん、手を洗いましょうね」


 一階から聞こえたママの声。公園からかえってきたみたい。


「ママ、パパ、おかえりなさい! みよ、おなかすいたよ~」


 ママとパパのところに行って、話しかけてみた。本当はおなかすいてなかったけど、かまってほしかったんだもん。


「ママ? パパ?」


 あぁ、まただ……。


 わたしの声なんて聞こえていない。だって、二人はふたごのあねしか見ていないもの。


「ママ~! みか、一人であらえたよ? ほめてほめて~」

「あらあら、よくできました! 今日はご褒美にみかちゃんの好きなオムライスにしようね」


 いいな、いいな……。


 わたしもほめられたいな。オムライス食べてみたいな。


「ママ、わたしもいっしょに──」


 あぁ、行っちゃった。


 わたし、えらいからね。おへやにもどるよ。だからほめて?


 二階のおへやにいても聞こえてくるの。ママとパパ、みかちゃんの笑う声。


 みかちゃんいいな。わたしも、見てほしいな……。


「おやすみなさい、ママ、パパ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る