第37話

久しぶりにこの世界の料理の洗礼を受けてしまったわ…


伯爵家の屋敷に引っ越して来てすぐの晩餐でこの家の料理人とは関わりが無かったので食べたことは無いけれどもあたり美味しくないと言われるイギリス料理?(あくまでイメージで偏見だけれども)みないなフルコースと言えばいいのかしら、とにかく塩がメインの味付けで下ごしらえのしてない食材に硬すぎるパンと食欲を無くしてしまう内容だったわ。


幸い、咲百合は疲れて居たので早めの食事としてストックしていた料理をアイテムボックスから出して食べさせてからそうそうに寝かしつけてからの晩餐だったのでグズることはなくて良かったわ。


「すまない」

食後のサロンでの1杯をとルッカ様に誘われておつまみとして乾き物のナッツにドライフルーツ、チーズの盛り合わせととりあえず無難に食べれるシリーズとワインで乾杯した後ルッカ様が謝ってきたの。

「謝らないでください!ルッカ様が悪いわけではありませんから。」

そう悪いのはこの世界の料理事情なのだから。

「しかし、こうなるのは予想が着くはずなのに気付かずほっといたのだからやっぱり申し訳ない。」

確かに公爵家では料理長のジャンさんがロン君達に習って一気に食事は美味しくなったのですっかり忘れていたのも仕方が無いと思うわ。

「明日からは私が作りますから気にしないでください。それとここのお屋敷の方がやる気があるのならばまた教えます。」

ルッカ様はもう今までの料理だと満足出来ないと王都に行った時は何を食べればいいんだろうかと嘆かれていたけれども、それはスグになんとかなると思うのよね…


ロン君が数週間後には王都でお店を開くとタスマニアさんは言っていたからね。

宿屋の改装はまだかかるので先に王都で隠れ家的な高級料理店をオープンする手筈になっていて会員制にしていると言っていたのでちょっと心配だわ。


公爵家に来てからは高級料理的なメニューも教えていたので大丈夫だと思うのだけれども教えたメニューは庶民的なのが多いかは心配だわ。

「大丈夫だと思いますよ?王都でロン君が料理長としてお店をオープンする手筈は済んでいるとタスマニアさんが言っていましたし、ロン君が王都に向かう日にはお迎えに来てルッカ様に特別会員権をお渡しすると言っていましたし。」

私と、ルッカ様、マイク様とタスマニアさんの4人だけ特別会員権を発行すると意気込んでいたし、何時でもVIP待遇なハズ?よね。

とりあえず落ち込んでいるルッカ様にアイテムボックスにしまっていたフライドポテトとサイコロステーキと温野菜サラダを出してあげたら少しご機嫌になっていつものように美味しそうに食べてくれたのを嬉しく思ったのだった。



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(ロン君ウィスター君視点)

「なぁロン、俺たちコレからやっていけるのかな…」

もう少しでそれぞれの雇い主の元に戻ることになって不安が隠せないウィスターは弟子仲間であるロンに不安を漏らす。


「あーウィスターはマイク様のお屋敷に戻るんだもんな、また前の上司の所に帰って新しい料理を作って優遇されていたらやっかみとか怖そうだな。」

「もともと新しい料理を自力で考えたいと色々やってていじめられてたとか言ってたもんなぁ…」

「たまたまソコを普段厨房に来ないマイク様が来て鉢合わせたからこそユーコさんに弟子入りさせて貰えたから幸運だったのかもしれないけどな。」

「あぁ、俺も料理なんて自分がこんなにするとは思って無かったけどホントユーコさんにあえて良かったと思うよ。」

「ロンは王都に行くんだろ?いいなー」

「タスマニアさんが言うにはもう店は有るらしいんだよ、そこで料理長になれって公爵家に初め来た時みたいに小僧に教わるなんてとかなりそうで怖いよ。」

「あー、そういう問題もやっぱりあるだろうけど大概はあの料理を食べたら何とかなりそうだけどな!」

「それを言うならウィスターも大丈夫じゃないのか?」

「いや、アレは自分に変な自信がありすぎて食べもしないと思う、そして今まで通りだろうな。」

苦笑いするウィスターだが、

「じゃあさ!素直にマイク様にその事を相談してみろよ、何とかしてくれるかもしれないぞ?そもそもマイク様がユーコさんの料理が食べたくて俺らを弟子入りさせてもらってるのに作らせて貰えなかったとか大問題だろ。」

「確かにロンの言う通りだ、次マイク様と話をすることがあった時にお願いしてみるよ。」

「そうしてみろ!でも行く先は分かれるが俺らはユーコさんの一番弟子なのは変わらない、何か困った時はちゃんと連絡くれよな!」

「あぁ、ロンもな!」


こうして2人の青年は新しい道に進むことになり、周りの様々な思惑に振り回されつつのびのびと料理をしてお互い名を馳せるがけして慢心せず精進するのだった。

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