第38話
「コチラになります。」
伯爵家の侍女さんに案内されてきたのは別邸の厨房。
ここでも私が自由に料理をする事が出来るようにとルッカ様は別邸の厨房を整えてくれていたみたい。
昨夜の食事が口に合わなかったので早速朝食から作る事になったのでコチラに案内をしてもらったの。
「ありがとうございます。」
「あっ、あのぉ」
あら?厨房にロン君達と同じくらいの少女?こっちだとでも成人したばかりくらいの子が声を裏返しながら呼び止めてきたのだけれども、緊張なのかしら震えてるわね。
「はい、おはようございます。」
多分、ルッカ様に頼んでいた調理補助の人かしら?
この世界こういうの職業的な料理人は男性が多いのにこの子は下働きのお着せでは無く厨房服のようなものを着ているわね。
「ひゃぁい」
それにしてもどうしたら緊張がほぐれるかしら。
「ユーコ様、こちらは料理補助を致しますナンミです。」
見かねたのか案内をしてくれた侍女さんが間に入って紹介してくれたので助かったわ。
「ナンミと言うのね、よろしくお願いしますね。」
一応ルッカ様の客人扱いなので平民なのにあまり侍女さんや下働きの方々に敬語は使わない方がいいと公爵家に居る時に言われてしまったのよね。
最初は加減が難しかったけれどもだいぶ慣れてきた気がするのだけれども、やっぱり普通に喋れる方が気が楽なのよね。
「よろしくお願いしまひゅ」
うーんいつまでこの調子なのかしら。
打ち解けるのを待つ暇は残念ながら今は無いのよね、咲百合がまだ寝ているうちに済ませたいし、公爵家からのお世話係さん(乳母さん的な)が見ていてくれているので心配は無いのだけれども起きた時に傍に居てあげたいわ。
「さぁ早速だけれども窯に火を入れてくれるかしら?」
アイテムボックスは使いこなしていてパン種も焼くだけの物が入っているけれど人がいるところでは出せないし、今日はホットケーキかしら、でも無発酵のパンは少し焼きたいから部屋で酵母種の入った壺は出してから来てるのでササッと捏ねて窯に入れてしまいましょう。
ナンミはあがり症みたいだけど仕事はキチンとする子で小麦粉を出して、コレを用意してと頼むとスグに出てきて私の手元をキラキラした目で幸せそうに見ているのよね。
「ナンミもやってみる?」
思わず誘ってしまったのだけれども、どちらにしろいつかは誰かに料理を覚えてもらうので彼女でも問題は無いもの。
ルッカ様が何をもって彼女を選んだのかは分からないけれども、純粋に新しいものを楽しそうに受け入れる姿勢がある限りは私も教えたいと思うので仲良く楽しく料理ご出来そうね。
無発酵パンはそんなに捏ねないのでちょっとベタベタな感じでサッと適当な大きさに丸めて鉄板に並べていく。
窯は既に暖まっていたのでコレを入れたら次は咲百合用のホットケーキね。
ルッカ様もホットケーキ好きだし適当にフルーツ盛りにして今朝は済ませてしまいましょう。
ホットケーキを焼いている間にナンミにはカットフルーツを作ってもらい何とか朝食が出来上がる。
ちょうどパンもいい匂いがしてきたのでそろそろ焼ける頃かしら。
この釜のクセがまだ分からないのでなまやけにはならないと思うけれどしばらくは全部中を割ってみて確認はしないとね。
ほんの少し焦げたぱんがあったけれども中は全部火が通っていたのでいつものように焼いて大丈夫そうね。
こんな簡単にパンが焼けるなんて!とナンミほ驚いて中身を確認したパンをじっと見つめていたので焦げたパンの無事なところを渡す。
「い、いいんでしょうか…」
だいぶ緊張もほぐれて料理に夢中になって居たのでカミカミな感じは無くなったのは良かったわ。
「ええ、味を覚えるのも料理のうちよ。」
なんて偉そうなことを言っているけれどもそんなに大したことはしてないのにこの世界だと偉業になってしまうのはまだなれないわね。
「はわぁわぁわぁ」
あ、でも食べて興奮しすぎて語彙力低下したているわ。
公爵家のジャンさんにもこれを教えた時に今までのパンはなんだったんだ!と叫んでいたのは少し前の事なのに何故か懐かしいわ。
「ふふ、こっちのホットケーキも少し失敗してるので悪いけれども食べてね。」
出来上がったパンはあえて横にカットしたのでベーコンハムサンドにしてルッカ様の完食と私と咲百合のお昼にするつもり。
それぞれを包んで残りは伯爵家の使用人の皆さん用にナンミさんに仕上げを頼んでいで部屋にもどる。
ちょうど起きたところのようで、
「ママ!おはよう」
本当にこの笑顔が見れるようになって良かったわ。
その後部屋での朝食にルッカ様が乱入してきて3人でほのぼの朝食の時間を満喫しただった。
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