第35話
それから私は拍子抜けするくらい何も変わらない日々を過ごしているのよね。
変わったことといえばロン君たちが来て料理の特訓をする事が増えたのとジョバンニ公爵家の料理長がそこに混じってロン君とウィスター君に料理を教わっているという異様な光景があるくらいで、日本から来たことを2人に伝えた事による不利益は一切なく今まで通りに接してくれていることがとても嬉しいわ。
やっぱり神様と会ったことあるとか頭がおかしいとか思われてしまうのではないかとチョット不安だったのだけれども私の話を信じてくれたしタスマニアさんは頼れる親戚のオジさんってこういう人のこと言うのかな?と思ってみたり、ジョバンニ様じゃなくて、ルッカ様(公爵家にいるとどのジョバンニ様?になってしまうからとキラキラスマイルでこう呼ぶように言われたのよね)はなんでも話せる頼れる友人の様に想えるはとても素敵なことで、日本にいる時はそういう相手が居ればもっと幸せに暮らせたのかしらと思ってしまったけれども今この世界で咲百合と暮らせて幸せだから忘れましょう!
それよりも今は、
「あー!ジャンさんそれだとエグ味が出ちゃうから…」
「ジャンさん!この水は捨てちゃダメですって。」
ロン君とウィスター君に容赦なくしごかれている公爵家料理長のジャンさんね。
私の料理をルッカ様がいたくお気に入りという事で最初は対抗意識が凄かったのだけれど今では弟子にしてくださいと華麗なる手のひら返しでロン君とウィスター君の弟弟子として2人にしごかれているのよね。
2人の成長の為にもあえて親子ほど年の離れているジャンさんを教えるように言っただけれども、最初はやりずらそうにしていたけれどいつの間にかお互い真剣に料理をしているのでそんな心配も無くなってきたのは良かったし2人が教える事も上手にこなしていて伝言ゲームにありがちな教えた事が何人か通すと別モノになっていたにはならずに済んだのでもう少し料理のレパートリーを増やしたら独立させても良いのかもしれないわね。
なんて偉そうに言っているけれども私はズル(チート)をしているのだけれどもサンクート様にとって料理の発展は悪いようにはなっていないからこそ追加機能も貰えたのだと思っているので天狗にだけはならないように私が出来ることならば広めて行こうと思っているの。
「ユーコ!」
3人の様子を見ながら色々と物思いにふけっていると厨房には不釣り合いなイケメンが顔を出す。
「ルッカ様、こんにちは」
「頼まれていたものが届いたから持ってきたよ。」
そう言うと抱えていた包みを作業台の邪魔にならない所に置く。
以前レガシィさんに頼んでいたパスタマシーンがようやく完成したとタスマニアさんの商会経由で公爵家に届けてくれたの。
実はパスタはラビオリとかもチャレンジしたのだけれども手作りって大変なのよね。
宿屋で毎回作るのは厳しいので作ってもラザニアが限界だったのだけれどもコレがあれば麺状に出来て色々作れるわ。
ちなみに太麺、中太麺に細麺と3種類のサイズに歯を取り替えて作れる工夫もしてもらったので時間が思ったよりかかってしまったのは仕方が無い事なのだけれども念願のパスタマシーンにテンション上がるわ。
「ありがとうございます!早速後で作ってみましょう。」
アイテムボックスの中にラザニア用の生地が残っていたのでそれをさっそくパスタマシーンにセットする。
一般的なスパゲッティの細麺サイズをまずは試してみると、
「おおぉ!これは面白いね。」
ルッカ様はパスタマシーンに興味津々ね。
作業していたロン君たちも思わず手を止めてこちらを見ている。
とりあえず麺は出来たけれども味付けはどうしようかしら、定番のミートソース、ナポリタン、カルボナーラ、ペペロンチーノ…この辺りですぐ作れるのはナポリタンとペペロンチーノね。
個人的に使う分のケチャップは作っているけどそろそろストックが無くなってきたしまた作らないとなんだけれど、ロン君とウィスター君が独立してお店を出したらタスマニアさんが量産して販売することになっているからそれまでは手間をかけて作らないといけないのよね。
まずはパスタをつくりますか!
「幸せだ。」
結局みんなでパスタ作りになりルッカ様も最後まで見学していらして、今は咲百合とルッカ様で日当たりの良いサロンで昼食中なの。
結局ペペロンチーノとナポリタン(咲百合がペペロンチーノはまだ食べれないから)を作りルッカ様は2皿ペロリと食べてしまったわ。
「ふふ、美味しそうに食べてくださるので作りがいがあります。」
食後のお茶を入れてもらい片付けも任せて優雅に食後の休憩、こんな贅沢な生活で良いのかしら?と思うけれどもサンクート様ならきっと今まで頑張ったんだから良いんだよと言ってくれる気がなんとなくするので無理せず甘える事にしているの。
「ユーコの料理を毎日食べられるなんて本当に幸せだよ。このままウチにいて欲しいな。」
この世界の貴族の常識だと専属料理人としてという意味なのはわかっているけれど、日本の感覚で恋人や夫婦の様に作ってあげている感覚になってしまう自分に最近ちょっと戸惑っているのは内緒。
「いつまでもお世話になる訳には行きませんから、砂糖の事が落ち着いてお金が溜まりましたら家を買おうと思っています。」
元々宿屋暮らしでお風呂が欲しい!と思っていたのでここの暮らしは本当に快適だけれどもいつまでもお世話になる訳にはいかないし咲百合にも教育を受けさせたいもの。
「うーん、それなら私の家に来ませんか?今度伯爵位を貰って独立する事になったので引っ越してその家は幸い部屋は沢山ありますし、ここからも近いので甥っ子姪っ子ともサーユちゃんはまた遊べるので。」
実はルッカ様のお兄様のお子様が咲百合と歳が近く遊び相手として仲良くさせてもらっているの、そして上のご長男のお勉強に一緒に受けさせて貰うというさらなるご好意に甘えている。
「でも…」
お貴族様のしかも公爵家の教育を受けれるのはこの世界の最高峰の教育なのだろうけれどなんだか便乗させてもらい申し訳ない。
「気にしなくていいよ、サミーとエリサもサーユちゃんと一緒に居ることでだいぶわがままを言わなくなったし、兄様はこのまま幼なじみとして一緒に勉強させては?と言ってくれているさ。」
「私たちは平民ですからそんなにご好意に甘えている訳にも、」
「気にしないでいいよ、むしろこちらからお願いしたいくらいさ。」
キラキラスマイルにもだいぶ慣れだけれどもさりげなく丸め込まれてしまうのよね。けして悪いようにはしないしむしろ私たちのためになることばかりだからというのもあり断りきれない。
「分かりました、少し考えさせてください。」
今の私にはこう答えるので精一杯だった。
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