第28話

「暇だわ」

結婚してから初めてこんなに時間を持て余している気がするくらい何もすることが無いのよね。


ジョバンニ様の御屋敷に居候させてもらって1週間もすると時間を持て余してしまって今ではすることが無さすぎてもっぱら咲百合と魔法の練習か本を借りて読むか3食食事を作るだけの生活がそろそろひと月になろうとしていた。


あと数日でロンくん達もこちらに来て今後のメニュー開発?などに時間を費やす予定なのだけれどもお貴族様の生活は庶民からしたらどうしても落ち着かないわ。


ジョバンニ様から離れをお借りして好きなように過ごしてくれって言われたのまでは良かったのだけれども、料理人以外は全て執事さんを始め侍女さん?メイドさん?達がやってくれるので料理と咲百合と遊ぶ以外は本当に何もする事が無いのよね。


もちろんゆっくりと咲百合に時間を使える事は幸せな時間ではあるけれども今も咲百合がお昼寝をしている時間は暇を持て余してしまっている。


「そうだわ、せっかくだし異世界知識チートってものを考えてみましょう!」

ここに来る時に馬車の中でタスマニアさんに教えたバネ事も知識チートと言えるはず。


確か定番はボードゲームとなんだったかしら…

ささやかな趣味?みたいにいくつかの異世界モノのネット小説は読んだけれどもいざ自分がってなると思い出せないものね。


ボードゲームは今度タスマニアさんに伝えて作ってもらう為に企画書?を書いてみましょう。


下書きを黒板にしてその後で紙に書いていく。

書き終わってアイテムボックスにしまっている時にふと思い出したの。

「マジックバックってたしか…」

以前タスマニアさんからマジックバックを見せてもらった時に巾着サイズで容量が6畳位の物で金貨20枚もすると言っていたけれどもジョバンニ様クラスの大貴族様ならポンともっと大きいものを買ってしまえそうよね。


なんて他愛も無いことを考えているとふと思いつく。


「マジックバックって空間魔法よね?」

以前読んだ小説に空間拡張をつかう原理は同じなので馬車の中でも快適に過ごせると言うシーンがあったのを思い出しそちらも企画書を仕上げてみることにしたのだ。


後にこのふたつの企画書はこの世界の娯楽事情と移動事情に革命を起こしたのだが、チート知識を甘く見ていた由布子は軽い気持ちでジョバンニ様とタスマニアさんに企画書を披露して質問攻めに合うことになるとは全く考えて居ないのだった。



「よし!コレで良いかしら。今後他の土地に移動する時に快適な旅になれば助かるわね。」

当の本人は能天気に快適な旅になるために丸投げしてしまおう、あわよくば発案者として移動する際馬車を気軽に借りれたらラッキーだわとしか考えていないのだが、実際は目標だったお風呂付きの自宅が豪邸になるくらいの収入になるとはまったく想像してないのだった。



後日、ロン君たちを連れてきてくれたタスマニアさんとジョバンニさんから今後についての話があると言われ行ってみると既にテンサイの売買契約と工場予定地の目処、資材の確保人材の選抜が早速始まっていると教えてもらったのだけれども2人とも目が血走っていてすごい勢いで計画を立ててくれているので体の方が心配になるわね。


そろそろタスマニアさんが来ると思っていたので咲百合とクッキーを作っておいてよかったわ。

やっぱり疲れた時は甘いものを取るといいって言うのは日本では常識だったのであまり深く考えていなかったのだけれども、


「お二人共おつかれの時は甘いものでも召し上がってくださいね。」

とクッキーを渡したらどういう事なのかと聞かれて糖分は疲れた時に少し摂ると頭の働きを活性化させるとお話したらそんな事が本当に有るんでしょうかとなにやら2人で話し込み始めてしまったので、話をそらそうと思って先日書いたボードゲームと馬車の魔道具化の企画書を渡したのは失敗だったかしら、余計に食いついてしまい収集がつかなくなってしまったが、魔道具化の方は専門家を後日呼んで検証すること、ボードゲームはタスマニアさんが責任をもって試作品を用意してくれると言う事になったのでなんとか話はまとまってよかったわ。


知識チートって難しいわね、私はやっぱりのんびりお料理を広めていくだけでいいわ、もし知識チートが必要ならばサンクート様がまたちゃんと専門の知識を持った方をこの世界にお呼びするだろうし、余計な事はもう辞めることにしておきましょう。


と自分の中で折り合いをつけた由布子だったが文明の発達度合いの差で無意識に周りに知識をこれからも振りまいてその度にタスマニアさんが目を輝かせて実現させようと躍起になるとは思わなかったのであった。

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