第26話

あの後お食事をしながらジョバンニ様たちは色々とお話をされていたのは知っていたのだけれども、食後のデザートをお出しした時に言われたことには未だに戸惑いを隠せない。


「それで、ユーコさんには申し訳ないことをするが、しばらく私の所に来てもらう事になりそうだ。」

ちょっと言いずらそうにしているジョバンニ様だけれども説明を聞いた限りお邪魔させてもらった方が安全なのは間違いないし、咲百合の事を考えると危険な場所にいる訳にも行かないわ。


「分かりました、ジョバンニ様にはご迷惑おかけして申し訳ございませんがよろしくお願い致します。」

まさか砂糖を作っただけでここまで大事になるとは思ってもいなかったけれども、私が作ったことはスグバレるだろうしなにより咲百合を人質に取られる危険性もあると言われてしまったら断ることも出来ないわ。


「そうか!では私のところの用意が出来るまではマイク殿の所にいて欲しい。スグに用意をしてまた戻ってくるのでそれまで待っていて欲しい。」

勘違いとかはしないけれども、ジョバンニ様の言い方が何だか告白されているような錯覚を起こしそうな言い方でちょっとときめいてしまったわ。


宿屋の方もしばらくロン君とウィスター君に任せて大丈夫にはなっていたのでしばらく任せることになったと宿屋のおじいちゃんキリスさんに挨拶をしたらそれならばと言われたことが、

「実はユーコさんのお陰で老後の資金がたんまり貯められたのでこの宿屋をユーコさんに譲って田舎に移住しようと思っていたんだよ。」

「えぇ!?」

「ユーコさんが宿屋は要らないと言うならばタスマニアさんに譲ってユーコさんには今まで通りに働けないかという相談もしていてな。」

全然気づかなかったけれどもそこまで私のことを考えてくれていたなんて。

「しばらくはロンたちが厨房を担当してもらって一月後に1度宿屋を閉めることにするのはどうかい?」

同席していくれていたタスマニアさんからのアドバイスを貰う。

「1度閉めてどうするのですか?」

「改装をしていっそうのことレストランのみの営業に変えてしまうのですよ、改装中にはロンとウィスター君にはユーコさんの所でメニューの開発や修行をつけてもらってはどうでしょう?」

「私はそれで構いませんよ。」

キリスさんが納得して宿屋を閉めるのならば私は何も言えないわ。

「タスマニアさん、この宿屋の雰囲気を活かしたお店にしてもらえますか?短い期間だったとしてもココは実家のようなものなので全部変わってしまうのは寂しいので。」

日本にはもう帰れないし、そもそも実家も無かった。

ここで暖かく迎え入れてくれ咲百合の事も可愛がってくれたキリスさんとミチェさんは私自身も父親と母親が居たらこんな感じかしらと勝手に思ってしまっているの。

そんなこの世界で初めて出来た安心できる場所が無くなってしまうのは何だか受け入れられなくてつい頼んでしまった。

「問題無いですよ。ここの宿屋の雰囲気は本当に落ち着くのでそれを私も無くしたくは無いですしね。」


「ありがとうございます!そしてキリスさん、ミチェさんには本当にお世話になりました。」

ちょっとうるっとしそうだけれどもグッと我慢してしっかりお礼をつたえる事が出来て良かったわ。


「それでは急ですが明日の昼頃に迎えに来ますね。」

そう言ってタスマニアさんは帰っていくのを見送り、部屋で寝ている咲百合の寝顔を見ながらいつもの作業をした後再び厨房に戻る。


ここで料理をするのはコレで最後かもしれない、お礼も兼ねて色々作っておきたいし、私自身の気持ちのケジメにもなるかと思って無心になって色々つくるのだった。


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