第25話

ジョバンニ様、マイク様、タスマニアさん、小百合が皮むきをして、私とロン君、ウィスター君がサイコロ状に切っていく作業をしながら切ったものを少し冷ましたお湯につけておく、冷静に見ると異様な光景なのかもしれないわね。


ある程度切れたので残りはロン君達に任せて1時間ほど付けておいた液からテンサイの実を取り出し早速煮詰めていく。

途端甘い香りが厨房に広がりだす。


「おお!これはすごいなこんなに甘い香りは嗅いだ事が無い。」

長い時間匂いを嗅いでいると胸焼けしそうになるほどの香りだったけれども砂糖を大量に作るなんてありえない光景という状況ならば感動するのかしら?


「確かに凄い香りです。」

タスマニアさんがちょっと胸焼けしてそうね、甘いものは嫌いでは無いようだけれどもここまで甘ったるいのは私も匂いだけでおなかいっぱいになりそう。

「しかし本当にコレで砂糖が出来上がるというのは不思議だな。」

マイク様もちょっと眉間に皺を寄せているので甘い香りにどうしていいのか分からないのかもしれないわね。


焦がさないように弱火でゆっくりかき混ぜて、途中でロン君達に任せてやっとの思いで砂糖が出来上がったわ。


「ぉぉお!私も手伝った砂糖。」

嬉しそうに砂糖を入れたお皿を眺めているジョバンニ様がなんだか可愛らしくてクスっと笑ってしまう。

「しかし、本当に簡単な手順で砂糖が出来てしまったとは。」

マイク様も感慨深く砂糖を眺めていらっしゃる。

「一鍋テンサイが10個で出来上がりが小皿1つとはいえ作った手間隙を考えてもしたらとんでもない利益になりますな。」

タスマニアさんは早速計算しているわ。

確かにこの小皿1つ分で金貨1枚ほどすると思う。テンサイ1個で銅貨1枚と考えるととんでもない利益率よね。


小百合は途中で疲れて厨房に置いた長椅子でお昼寝中だし、このお砂糖でなにかお料理しようかしら…

ぱっと思いつくのは何故か照り焼きチキンなのよね。

でもそれには問題があってお醤油がないの。


色々調べられるようになったことで作れるようなりそうなのだけれどもまだじっくり試せていないこともあって完成していないの。

コレを作ったご先祖さまも凄いし、ノベルで再現したと言うお話も凄かったのだと感心してしまったわ。(由有子は知らないがノベルでは御都合主義が作用しているものもあったりしたり…)


当面の目標はお味噌とお醤油作りね!

でも今日は簡単に作れる甘い卵焼きを作ってみましょう。

いつもお店で出しているだし巻き玉子はお塩で作っていたのよね。


横でロン君達が追加の砂糖を煮詰めているけれどサッと作ってワイワイと話しているジョバンニ様達にお出しする。


「ん?ユーコさんコレはだし巻き玉子ですか。」

よくおつまみで食べているタスマニアさんが何故だし巻き玉子?という顔になっているわね。


「ふふ、いつもと違う味付けなので良かったら召し上がってみてくださいな。」


小百合も甘いだし巻き玉子が好きでこっそりあの子にだけは時々作っていたけれどもせっかくだし追加でいくつか焼いてアイテムボックスに閉まっておけばいつでも焼きたてを食べさせてあげられるのは本当に便利だわ。


「う、」

「え?」

「ほぅ」

三人三様で面白い反応ね。


「なんと、ユーコさんのだし巻き玉子はいつも美味しいがこの甘いのも癖になりそうだ。」

ニコニコご機嫌なジョバンニ様のキラキラオーラご増した気がするわ。

この方は結構甘いものがお好きなのよね。


「コレは贅沢な卵焼きですな。」

「ユーコさんお代わりをお願いしてもよろしいかな?」

あっという間に1本食べ終わってしまったみたいで既にお皿には何も残っていないわ。

「あまり食べすぎるとお夕食が召し上がれなくなりますよ?」

子供じゃないから余計なお世話だったかしら。

「ユーコさんのご飯はいくらでも食べれるので問題ないよ。」

と笑顔のジョバンニ様に対してマイク様とタスマニアさんは

「そうですね、これ以上食べるとユーコさんの美味しいご飯が食べられないのも困ります。」

「たしかに、私もこの後のために我慢かな。」

「ふむ、それならば私も我慢するとしよう。」

タスマニアさんはともかく、ジョバンニ様とマイク様はお貴族様なのに、すっかり私にも胃袋を掴まれてません?

そんな事で良いのかしら?


とは思いつつも私の料理を楽しみにしていてくださることにはやっぱり嬉しいので、

「それでしたら、お夕食にも少しお出ししますね。」

特にジョバンニ様は何故そのイケメンでそんなに食べれるの?と思うほどよく召し上がるので少しくらい料理が増えても問題ないと思うし。

「「「やったー!」」」

男の人はいつまで経ってもお子様とは言いますけど今まで周りの男性達にそういうのは感じられなかったのに、彼らを見ているとそうなのかもしれないわ。と思うようになったのよね。


その後砂糖作りをお夕食の時間ギリギリまで行ってなんとか持ってきてもらったものは全部作り終わったけれどもやっぱりあの大量にあったテンサイから小壺1個分にしかならないとは改良が必要かもしれないわね。

でもタスマニアさん曰く、この小壷だけでも金貨10枚くらいにはなるそうなので人件費を考えても利益はかなりのものになるそう。

テンサイ200個つかって原価は銅貨20枚それが金貨10枚に化ければ確かにかなりいい商売よね。


それと残ったテンサイの実も餌にするだけではなくもう少しいい活用法は無いか考えてみてもいいかもしれないわね。

そう私が考えている横では3人がどこに工場を作るのか、情報漏洩はどうするのか、などなど既に話が白熱して居たけれども、急いで夕食の用意に取り掛かっていたため、話が大きななっている事にこの時は気づかなかったのだけれども、もう少し気にしていれば良かったわと後でちょっぴり後悔するのだった。

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