第22話

翌朝いつもよりスッキリ目覚めた由有子はさっそく新しく貰った検索機能をフル活用してある事を調べ始めていたのだ。


実はこの世界のお砂糖事情はサトウキビの様なものから作られているらしく“てんさい”砂糖大根のようなものからは作られていないようで、暖かい気候の他国でしか栽培できず遠くから運ばれてくるためとても高い値段になってしまっているらしい。


だが、サンクート様はてんさいモドキの野菜もこの世界に用意してくれていたようで以前見つけてから宿の裏庭の花壇の隅で試しに育ててみているのだけれども家庭菜園レベルでも簡単にそだつのだけれども、精製の仕方がサッパリ分からず試行錯誤していた所だったのだ。


サトウキビのように汁を絞ってから煮詰めていたらエグ味や渋みがどうやっても出てしまっていたのだけれども、調べてみるとお湯に付けてエキスを溶かしてから煮詰めるやり方なら地球のような文明機械が無くてもそれなりに美味しい砂糖が出来たのよね、生活魔法や簡単な攻撃魔法なら出来るようになっていたので乾燥させたりも簡単に出来るようになって大量のキノコ類を乾燥させてみたりと実験してアイテムボックスを使わないでもできる方法を考えたりしていたので、煮詰めたエキスを布巾で絞ってから魔法で乾燥させるとちょっと茶色いけれどしっかり甘いてんさい糖が出来上がったのよね。


「ユーコさんコレ…」

横で見ていたロン君たちもびっくりしているけどそうよね…

馬の餌でしか無かったモノを庭で育てて何しているんですか?とか聞かれていたし、ソレから砂糖を作ってしまったんだから驚きを通り越して驚愕かしら?


「ふふふ、ロン君、悪いんだけどコレをタスマニアさんに渡して近いうちにコレについて話したい事があると伝えてきてくれるかな?もちろんこのことは2人ともまだ誰にも言ってはダメよ?」

「「はい!」」


その後すぐに支度をして

「それではいまから行ってきます!」

そう言うとあっという間にロン君は出かけてしまった。

「ウィスターくんもそのうちご領主のマイク様に伝言を頼むと思うけれども暫くはまだ待っててね。」

「もちろんです。」

ウィスターくんにもマイク様に伝言をそのうちお願いするとして、まずはタスマニアさんとのお話し合いが必要ね。

幸いこのてんさいモドキは近隣の小さな農村でしか栽培されていないらしくここから馬車で1日程度の距離との事で少しばかり山になっている土地で他に作物の育ちにくい所のようね。

この当たりの情報はすべて八百屋のマーサから聞いた事で、てんさいモドキもマーサの八百屋で普段は仕入れないのだけれども馬の餌として仕入れたもののキャンセルされてしまっていた所に出くわしてこっそり鑑定してみて砂糖が作れるかもしれないと代わりに買ってきたもので試作で無くなる度に買い求めていたら苗を少し分けて貰えたので庭でも栽培してみていたのよね。


砂糖をアイテムボックスにしまい、夜の仕込みをウィスター君としているとロン君がタスマニアさんを早速連れて来てくれたけど、お仕事大丈夫なのかしら?


「ゆ、ユーコさん!!!!」

あら、タスマニアさんの目が血走ってるわ…

「いらっしゃい、こんなに早く来て下さるとは思わなかったわ。コチラにどうぞ。」

ひとまず個室に通してお茶を出す。



「それでユーコさん、コレはどういう事ですか?!」

さっきロン君に持たせた小さな布袋に入れた砂糖を見せて聞いてくる。

「さっきようやく砂糖を作ることが出来たのでタスマニアさんに相談させて頂ければと思って。」

作り方は分かっても砂糖を作る事だけしている訳にも行かないので作り方を売ってしまってタスマニアさんに丸投げしてしまおうかしらという訳なのよね。

「つ、作ったと!!相談ということは、私に任せてもらえると思っても?」

さすが商人さん、話が速くて助かるわ。

「ええ、作り方を売るので工場を作って、販売もお願いしますね。」

「ユーコさん、コレは特許を取りませんか?」

さっきまでの興奮はどこに行ってしまったのかしら?と思うほど商人モードが入ったタスマニアさんが真剣な顔で提案してくださる。


「特許?」

失礼な言い方かもしれないけれどもこの世界にも特許という概念があったのね。

「ええ、契約魔法で製法を外部に漏らさないようにする事が出来て最短でも5年間、国に認められれば最大30年間の独占が可能です。」

「30年間独占出来たならば大金持ちに慣れちゃいますね(笑)」

「モノがモノなのであっという間になれると思いますよ。そしてコレは国も認める事間違いなしです。」

まぁ既に現状他国でほぼ砂糖の独占生産をしている事を考えれば認められるのかもしれないわね。

「ならばなおさら気をつけて事を進めないと行けませんね、タスマニアさんとのお話がある程度まとまったらマイク様にも御報告しようと思っていたのですが…」

「その方がいいと思います、なんならこれから私が面会を求めて話してみますよ。」

「話が早くて助かります。詳しい製法等は今後お伝えするとして、資金調達とかそういった問題もありますよね。」

正直、普通の料理屋よりは儲かっているとはいえまだまだ大掛かりなことができるほどの資金は持ち合わせていないし、その辺はタスマニアさんとご領主のマイク様任せになりそうね。

「その辺はこちらにお任せ下さい。借金してでもチャレンジする価値がありますから心配いりませんよ。」

餅は餅屋というし、経営とかはよく分からないので深く考えるのはやめてタスマニアさんに丸投げしてしまいましょう。


「では私はいまからマイク様に会ってきますね。」

タスマニアさんにあのあといくつか質問をされある程度の話をしたあとその足で領主館に向かわれるそう。

「さてと、思ったより話し込んでしまったわ。急いで仕込みをしないとね。」



少しばかり思っているより大事になりそうだわと、呑気なことを思っている由有子だったが、本人が思っている以上に周りは大騒ぎになり、ちょっとした騒動になることになるとまでは思っていなかったのだった。

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