第18話

「ママ、できた!」

「うん、とっても上手に出来てるわよ。」

咲百合はさっき受け取ってきたピーラーを使って人参の皮を剥いているの。

じゃがいもはさすがに初心者には難易度高めなので私が皮むきをしていて、今日はホワイトシチューを作っているところ。

美味しそうなチキンも手に入ったし咲百合と親子の料理タイムはとっても楽しいものになったのは言うまでもないわね。

「ユーコ!今日もめちゃくちゃいい匂いだね!」

突然厨房の入口に現れたのはアンナさんだった。

「アンナさん、おかえりなさい。ゴメンなさいねまだお夕食が出来てないからもう少ししたらまた来てくれるかしら?」

「あぁ、それなら良かったよ!今日行った先で取れたキノコをお土産に取ってきたからコレで何か作ってよ。」

そういって袋いっぱいに入っているキノコをアンナさんはくれたけれども、

「こんなにあったら売った方がお金になるのに良いの?」

これだけのキノコを市場で買うとなるとそれなりにいい金額になるので他で売った方がアンナさんにとっていいと思うのに。

「良いってことよ!これで美味しいもの食べさせてくれればさ!」

「それじゃぁ悪いから今夜のアンナさんのお食事代はこのキノコで払ってもらったことにするわね。」

「うーん、まぁユーコがそれでいいならいいよ!」

さすがにキノコの方が値段が高いけれどもそこは有難く頂くことにした。

「それじゃお夕食の時間を楽しみにしていてね!」

せっかく沢山あるのでキノコシチューにしようかしら。

それとアンナさんには別にキノコでもう1品何にしようかちょっと部屋に戻ってレシピを検索してこないと。


「キノコ、おつまみ…あ!これなんて簡単で良いわね。」

部屋で検索してみるとキノコのペペロンチーノ風のレシピを見つけたのだけれども、この前鷹の爪を見つけてアイテムボックスにしまい込んでいたのをすっかり忘れていたわ。

ベーコンの代わりに干し肉を水で戻して炒める事にして試しに作ってみたら結構美味しくできてこれでパスタが食べたくなってしまったわ(笑)

ここではパスタは見たこと無かったので今度は麺うちにチャレンジしようかしら、そんな事を考えると食堂に人が集まり始めてしまったので急いで支度をする。


「ユーコ!キノコ炒めおかわり!」

お料理を出してからまだ5分も経ってないのにアンナさんが厨房に声をかけてきてちょっとびっくりしちゃったわ。

「あら?もうたべちやったの??あとどれくらいたべるかしら?」

「うーん、さっきの倍は欲しい。」

「分かったわ、すぐできるからちょっと待っててね。」

干し肉は水で戻すのに時間がかかるがそこはアイテムボックスで時間を進めて何とかしてしまえばあっという間に出来るので本当に簡単で良いわねコレ。


「はい!お待たせしました。」

厨房も落ち着いてきているし、久しぶりに食堂に料理を持っていくとアンナさんは既にイイ感じに酔っていたわ。

「あー!ユーコぉ待ってました!」

「おぉ!今度こそ俺にも食わせろ!」

「あ!それはアタイが採ってきたキノコで作ってもらってんだよ!だからオマエらにはもうやらん!」

あらあら(笑)争奪戦ね。

「ふふ、たくさん作ったから皆さんで食べてくださいね。」

最初のひと皿はあっという間に無くなったのでかなり多目に作ったけれどもそれも直ぐに無くなりそうね。

ごゆっくりと声をかけてまた厨房に戻る。


「ユーコさんの料理は本当に凄いですね。」

ウィスター君がそう声をかけてきたけれども、

「ふふ、コレでも結構簡単な料理ばかりなのよ?本当はもっと複雑な料理も有るんだけれどもそこまでまだ手を出せてないのよね。」

正直日本にいた頃ならもっと手軽に出来る調味料とか調理器具が沢山あって難しい料理も簡単に作れちゃったりするのでこれくらいのレシピはそこそこ料理をする人ならレシピが有れば誰でも出来ちゃうレベルなので内心は複雑なのよね…

でもサンクート様が私にお願いをしてきた事は少しづつ出来ればいいと言う事だったので焦るつもりもないのだけれどもコレで良いのかしらとちょっと悩んでしまうわ。


だからと言って無理をするのも違う気がするし、私には咲百合も居るからあの子に寂しい思いさせたくないわ。

結局今私にできることを少しづつやっていきましょう。


寝る前の日課を済ませながらこんな事を考えつつサンクート様にお祈りをして眠りについた由布子だった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

『あぁーもー、由布子は真面目すぎ!私は貴女に新しい人生を楽しんでもらいつつ少し料理の改革の糸口になって欲しかったくらいなのに、本当によくやってくれているわ、毎日お祈りしてくれているし』

異空間で由布子を見守っていたサンクートがはらはらしている所だった。

『でもそのお陰でもう少しで加護を与えられそうだからそうしたらもう少し由布子の役に立てれるものを加護にして渡せるようにしておかないと!』

自分で頼んだ事とはいえ思ったより料理の革命が起こりそうなのでより由布子が料理しやすくなるためには何が必要なのか頭を悩ませてしまったサンクートだった…

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