第46話 諸刃でもギフトはギフト

「はあ、はあ……げんきになーれ、痛いの痛いのとんでいけ~♡」


 ちょっとエッチくなったブレスツお姉ちゃんが封印を解いて放たれる魔法。

 それは『癒し』の魔法。


「あ……え?」

「あれ? おれ、怪我が……」

「ッ!?」


 倒れて虫の息だった男子の先輩たちの傷が癒されていく。

 そう……


「これがブレスツお姉ちゃんの力。どんな怪我でも一瞬で癒しちゃう脅威の回復魔法!」

「おおぉ、マジか! つか、これ全然いいじゃねぇかよ! 何で封印されるんだよ!?」

「う、うん、それが……」


 何でも回復しちゃう。確かにそれだけなら優れた力。だけど……


「あ、急に、なんだ、眠気が……」

「う、うぅん……」

「あっ……」


 癒す力。だけど癒され過ぎて……



「「「くか~~~~~」」」


「ええええ、全員寝たぁぁぁぁあ!!??」


「うん。あまりの癒されぶりに、回復された人は皆、三日三晩寝続けちゃうの」



 戦争で大けがした人を治せる……でも、そのままその人は数日間寝続けちゃう。

 

「これが~、私の~、力です~……んくっ♡」

「そう、味方が戦争中に寝ちゃったらまずいでしょ?」

 

 それなら普通のレベルの回復をしてすぐに動ける方がいい。そして何よりも……


「ちなみに、これをやると精力まで回復しちゃって、目が覚めたら男の子はそれはもうお猿さんになるとかなんとか……」

「……なに?」

「だから、子供の時にお父さんたちが試しにかかったら……お母さんたちと寝室に籠って数日間……」

「………………」


 色々と危険な代物ということで、同じように封印されちゃったこの力。

 でも、セカイくんにとってはギフトなんだよね?

 そうじゃないと……



「…………だったら、敵に対してその力を使えばいいじゃねえか。そうすりゃ戦ってる敵が全員寝て、その間にぶっ殺せばいいじゃん」


「「…………………」」



―――――ッッ!!??



「「あっっっ!!!!?????」」


「いやいや、勇者も思いつかなかったのか!? バカか!? 誰か思いつけよそれぐらい!」



 思いつかなかった!? なに、その使い方!

 セカイくんの言う通り、回復魔法としてでなく、睡眠魔法っていう使い方をすれば確かに……


「くそ、さっきから何をベラベラと!」

「ええい、やっちまえ!」

「死ねええええええ!」


 って、呆然としていたオークたちがついに動いて、棍棒を振り回してセカイくんに……


「ほぅ……悲しいぜ。所詮底辺のやつ等じゃ、『俺のこと』までは気付かないか……」


 セカイくんは余裕で……一方でどこか寂しそうに何かを呟いて……


「ばぴゃ!? お、おまへはち、ま、まへ!」


 もう無残過ぎるあの大将軍が慌てたように何かを言ってる。

 でも……



「はあはあ……♡ させないわ! 貞操帯解除ッ! ん♡」



 と、そのときだった。


「お?」

「ラヴリィちゃん!?」


 もう、媚薬効果でヤバいことになりそうなラヴリィちゃんが、それでも何とか精神力で動いて、封印された力を解放。

 セカイくんもそれに気づき、オークたちを迎撃しようとした手を止めて、様子を伺い……


「死ねええええ!」

「オラぁあああ!」

「でやぁ!」


 オークたちが一斉に振り下ろす棍棒を、割って入ったラヴリィちゃんが全身で受け止めて……


「あ……ッ!」


 そして、みんなすぐに知ることになる。

 オークたちが振り回した巨大な棍棒が、全て粉々に砕け散ったからだ。


「な……に?」

「はあ、はあ……」


 これが、ラヴリィちゃんの力。


「いって、な、なんだ、棍棒が砕け……か、かってぇ……手がしびれ……」

「ぐがああああ、う、うで、が、腕が折れたぁあ!」

「な、なんだ、この女の身体は……」


 屈強に見えるオークたちの方がダメージを受ける。

 そう、これが……


「な、なんだ? いま、急激にゴールドビッチ先輩の……身体的なものが……」

「そう、鋼の超防御力」

「ッ!?」

「それが、ラヴリィちゃんのギフト。人並外れ……ううん、異常なまでのその防御力はあらゆる攻撃も魔法も一切受け付けないの!」

「な、なにいいいっ!?」


 これにも驚きを隠せないセカイくん。さらに、オークたちまで驚愕している。

 ただ……


「でも、弱点は……」

「あぅ、あ……んんん♡」

「こんな風になっちゃうこと」


 オークたちの攻撃を受けて無傷……のラヴリィちゃんがその場でうずくまって喘ぎだした。


「お、おい、これ……」

「あはは、ラヴリィちゃんはあらゆる攻撃に対して無傷だけど……でも、強い攻撃を受けちゃうと、なんというか……ラヴリィちゃんは非常に敏感になっちゃって、アネストちゃんのように一回全力で力を使ったら痙攣してしばらく動けなくなっちゃうの……」

「な……っ……」


 これもまた、私とも同じで一回こっきり……だけど、ギフト。

 でも、セカイくんも流石に頭を抱えてしまっている。


「まったく、お前ら全員……諸刃の……いやいや、これもギフトだ。ようは使い方を……だな」

「あっ、んン、いや、み、見ないで、そ、そんな哀れんだ目で私を……ん♡」


 そして、ラヴリィちゃんは既に精神の限界に達しているようでのたうち回っている。

 ブレスツお姉ちゃんもヤバいし……これは、戦争どころじゃないぐらいに……



「まぁ、いい。いずれにせよ……素質は分かった。とりあえず、それで満足。あとは、まずはこのブタどもを……」


「「「「ひっ!!???」」」」


 

 だからこそ、さっさと終わらせようと思ったのか、そこから先はセカイくんがたった一人で――――



「が、あ……なんへ……お、おうじ、が、ほほに……いるんだ? ま、まひゃか……い、いきていはとは……」



 そして、そんなセカイくんがオークたちを蹂躙する光景を、絶望に染まった表情で見ることしかできない大将軍。

 怯えていると同時に……何かにすごい驚いている感じ? セカイくんが強いからかな?



「はあ、はあ……なんて強いのでしょぉ~……あの人の……ん、子供~……生みたいかもです~♡」


「なんて凶暴な目……♡ あんな目で押し倒されて乱暴にされたら……わ、たし、だ、ダメよ、ラヴリィ、私は……逞しい男の子の肉便器になんて、これっぽっちも……なりたく……♡」



 あっ、こっちもダメだこりゃ。

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