第47話 もう遅い

 先輩男子たちがスヤスヤ寝て、数十人のオークたちがセカイくんにやられてノビている。

 そんな状況の中、一応貞操守れて助かった先輩女子たち……なんだけど……


「ほらほら、あんま騒ぐなよ大将軍さま、指がちゃんと折れないだろ?」

「ぱぎゃああああ!?」

 

 ボコボコな顔になった大将軍を更に痛めつけているセカイくん。

 見ていて……目を背けちゃう……


「か、がはぁ、お、おうじィ……」

「かかかか……傑作だぜ……復讐にはまだ早いと思っていたが……早くて悪いことは無い!」

「ばぎゃあああ!!??」


 指の骨を全部……うわ……


「うぷっ……セカイくん……」


 戦闘じゃない。そして拷問でもない。ただ、痛めつけているだけ。しかも、相手が気を失わない程度にジワジワと念入りに。


「あ……あん♡ うん、はあはあ、もう、もう、むり、あぁ、あんな強い彼に、み、見下されて、はぁ、乱暴にされたい♡」

「んあ、あぁん、も、ん~、だ、だめです~。あ、あぅ♡」

 

 こっちはこっちでヤバくて、媚薬を唯一嗅いじゃったラヴリィちゃんとブレスツお姉ちゃんが狂ったように地面をのたうち回っちゃってるけど……セカイくんは一切振り返らず、ただ大将軍を痛めつけていた。


「せ、セカイくん、もう、そろそろ……その人、お父さんたちに引き渡したほうが……」

「かかかか、そんなつまんねーことはできねーさ」

「で、でも!」

「だって……こいつが俺から全てを奪い……そして俺の……親父たちも殺した!」

「……えっ?」


 殺し……え? セカイくんのお父さんを? じゃあ、魔王軍への恨みとかの根本的な原因の……


「魔王軍は皆殺しだ。魔界も全て滅ぼす。その最後にこいつを……ってつもりだったんだが、こいつが最初になるとはな。だが、順序が狂っただけでやることは変わらねえ」


 あっ、ダメだ……これ以上私には何も言えない。

 セカイくんを止めることが出来ない。


「が、あ、……あ……ま、まっへくれ……まっへください! ひょうだ! にゃらば、わ、わらひのかわりに……あなはさまが、あらはなる、まほうに! わ、わらひの、いもうとも、あのむひゅめたちもかえひます!」


 そして、もはや下顎が千切れかかっている状態で何を言ってるか分からないけど、懸命に話している大将軍。

 なんだろう、命乞い? 謝ってる?

 でも……



「いらねーよ。あいつらも、すべからく俺の復讐対象なんだからな!」


「ばっぎゃ!? ぐわあああああああああああああああああああ!?」



 次の瞬間、大将軍の鼻が飛んだ……両耳まで……なんてことを……


「う、うぅ、な、なんなの、彼は?」

「シャイニちゃん、彼は、あなたのお友達? 全然知らないけど……」

「あんなに強くて、魔王軍の将軍が命乞いまでして……」

「でも、こ、こわい……」


 先輩女子たちも怯え切っている。オークたちにレイプされそうになったときのように……

 たしかに、友達になった私でもウッてなっちゃうぐらいの光景だもんね。

 でも、それだけセカイくんは恨みを抱えていたのなら……


「こ、ころひて、くらはい……ころひて……」


 あっ、今のは分かった……あの大将軍……命乞いはやめて「殺して」って……あまりの苦痛に耐えきれずに……


「は? やだよ。殺して楽になるなんて、そんなこと許されると思ってんのか?」

「ッッ!!??」

「何を言っても、何をやっても……もう遅い!」


 だけど、セカイくんはそれすらも受け入れない。

 その瞬間、初めの頃はイケメンだった大将軍が涙流してうずくまってしまった。

 するとセカイくんは……


「とはいえ、これ以上やるのも空しいか……それに、俺が一番ムカついてんのは……あのクソ女だしな」


 そう呟いて、肩の力を抜いたセカイくん。ん? 女? なに? セカイくんはまだ恨んでいる人が?

 でも、これでもうやめるのかな? 

 そう思ったとき、セカイくんは……


「なぁ、大将軍。テメエ……時空間魔法は使えなかったよなぁ? ここに来るにもマジックアイテム使ってきたんだろうし……」

「……あひ?」

「つまり、移動用の時空間魔法……出口を作らずに、ただ時空の狭間にテメエを放り投げれば、永遠に何もないどこまでも広がる空間を漂うだけ……になるな」

「ッッ!?」


 え?! 時空間魔法って、あのトティモトーイ王国に移動したときのアレだよね? あのとき、空間の渦に飲み込まれて、よく分からない空間を漂って、そこから出口を出たらトティモトーイ王国だった。

 その出口を作らないって……それじゃぁ、永遠にあの世界に!?

 何それ! 死なないけど、何もできなくていつか死んじゃう!? あんな何もない空間で!


「…………くぅ……」


 あっ、でも大将軍はどこか観念したようにがっくりと項垂れて……


「ま、でもそこに放り込まれたら、お前さんは自殺でもして楽になろうとするからなあ……放り込んですぐに死なれたらそれはそれでムカつくし……だからこうしよう! お前を一人でそんな世界に放り込まねえ!」


 そんな大将軍に対して、本日一番最恐に極悪な笑みを浮かべるセカイくん。

 おいおいこらこら、そんな笑顔をしちゃダメじゃないのさ。でも、何を……


「おい、シャイニ。それと女子の先輩方は少し隠れてろ……」

「?」

「んで、この箱だな……あったあった……超精力剤♪」


 そう言って、私たちに隠れるように促したセカイくんは、ノビているオークたちの荷物。箱の中にある大量の超媚薬を手にして、蓋を開け、それを気絶しているオークたちの口の中に次々と流し込ん……なにやってんの?!



「おら、起きろブタどもが!!!!」


「「「「ッッッ!!???」」」」



 しかも、気絶しているオークたちの顔を蹴って起こして……なんで!? ほら、みんな薬を飲んじゃって……


「ふが、はあ、はあ、何が……ウッ、うおおおおお!」

「は、ヒーハーヒーハーヒーハ! 滾るぅぅ、ううおおお!」

「やりてええ、ヤリてええ! 女ぁぁぁああ! 女ああああ!」


 ホラぁ、こうなっちゃうじゃん! 

 もう、股間をすっごいことにさせたオークたちが正気を失った目で勃……起き上がった。

 私たち隠れてるけど、見つかったら……


「時空間……オープン!」


 ただ、そんな中でセカイくんはニヤニヤしながら空間に穴を開けて……


「さて、大将軍。無傷なお尻を出しましょうね~」

「ッ!? ……ま……まひゃか……ッ!!?? うわああああ! や、やめほおおおおおおおお!!」


 ここに来て、潔く観念し始めた大将軍がまた激しく声を荒げて抵抗。

 だけど、セカイくんは無視して、大将軍のズボンを下げて、無傷なお尻をペロンとオークたちに見せて……



「ほらぁ、オークの皆さーん、ここに綺麗なお尻がありますよ~♪」


「「「「ブヒイイイイッ!!??」」」」


「や、やめほおおおおお!」



 あっ、そういうこと……鬼……ううん……鬼大魔王だね……セカイくん……



「「「「ぶひいいいいい、尻いいいいい! 女ぁぁぁあ!! 穴ぁああああああ!!」」」」


 

 お尻しか見えてないオークたち。そのお尻の主が、自分たちの仲間で上官で、ましてや男んだってことも気付かないほど目を血走らせて走り出し……



「ほれ、ポイっと」


「いやはああああああああ、ごめんにゃひゃいゆるひてええええ! いやひゃあああああああああ!!」



 そのままお尻……ううん、大将軍を時空間の中に放り投げ、まったく状況分かってないオークたちもそれを追いかけるように全員時空間の中に入っちゃった。



「かかかかか、超精力剤……オーク一人百発ヤルぐらいだっけ?  30人……最低3000回以上……掘られて狂って死ね!!」


「いやばやああああああああ、きひゃまら、わらひ、んぼおおお!!!??」


「アバヨ♪」



 そして、断末魔のように響いた大将軍の声も、セカイくんが空間を閉ざした瞬間にパタリと消えた。

 もはや、敵に同情しかないぐらい徹底的……



「さて……まずは一人! これで魔界や魔王軍……あのクソ女どももどう動くか? 正気に戻って謝りに来るか? だが……もう遅い!!」



 とにかく、セカイくんを敵に回しちゃダメだね。

 うん。色んな意味で怖いから、セカイくんの身内になっとこ。





――あとがき――


その後、大将軍がどうなったのかは誰にも分からないです。そして残されたのは、媚薬で発情してる二人の少女……さて……どうしましょうかね?

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