エピローグ

 学と蓮治は変身し、十万、いや百万以上の数のマスカレイドアバターを前にしていた。

「この戦いが終わったら、俺はお前と映画が撮りたい」

 蓮治が言った。

 いつかそんな話をふたりでしたことを学は思い出した。

「そうだな……、でも、俺は罪を償わなくちゃいけない」

 しかし、学は言った。

「罪? 何のだ?」

「俺はこの手で人をたくさん殺したから」

 蓮治の問いに学はそう答えた。それは蓮治も同じだった。暴走状態にあったとはいえ、そのときの記憶がないとはいえ、何十人という一般人を手にかけていた。四六人のマスカレイドアバターも殺してしまった。それ以前もマスカレイドアバターに変身できるようになってからのわずかな時間で、彼は学と同じようにこれまでの人生で自分に辛酸をなめさせてきた人間を手にかけていた。

「俺も同じだ。一緒に警察に行くか」

 蓮治はそう言ったが、学は首を振った。

「お前にはこの世界を守ってほしい」

 そう言った。

 13評議会が、千のコスモの会がまた何かしでかすかもしれない。今、星間戦争を回避できたとしても、いつまたその危機が訪れるかわからない。誰かが世界を守らなければいけない。

 それができるのは、自分だけなのだ。蓮治は思った。

「そうか……、じゃ、俺、待ってる。お前が罪の償いを終えるまで」

 だから蓮治はそう言った。

 学は仮面の下で笑った。

「ありがとう。俺がいない間、妹のこと頼んでもいいか?」

「ははっ、とんだシスコン野郎だぜ」

 まかせとけ、蓮治は言い、

「生き残れよ相棒」

 学の肩を抱いた。

「ああ」

 学はうなづき、そしてふたりはマスカレイドアバターの大群に向かっていった。
















「おかえり、お兄ちゃん」




「ただいま」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マスカレイドアバター 雨野 美哉(あめの みかな) @amenomikana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ