第35話 バジリスクTFタイム

 芭尻ばじり薬江くすえの左手の甲にマンティコアの毒針が刺さると、変化がその左手から始まった。



 手の産毛が赤く太く長くなり、羽毛に変わっていく。両腕がインコやオウムのような派手な羽となった。芭尻ばじりは物や自身の体がつかめなくなり、戸惑いの表情を浮かべる。



 腕以外は褐色かっしょくうろこに覆われていく。頬から首筋、胸、腹にかけてはクリーム色のうろこで、蛇腹の模様が生じる。両脚は徐々にくっついて1本の足になる。足の指先も境目が無くなり1つになって、先細りの尾になった。それは長く長く伸びて、床を這うのに適した形となる。



「体が熱い……、あああ、いいいたいいい」



 彼女の舌の先が2つに裂けて、細長くなる。犬歯は牙と化し、有毒な液体がたらりたらりと落ち始める。自転車のサドルのような平べったい顔に替わり、耳が埋没し、眉毛も無くなってしまう。ただ、唇とカールした髪はそのままだ。



「シャアシャアシャアアアア!」



 バジリスクと化した芭尻ばじりは、口を大きく広げて最強キマイラを威嚇いかくする。だが、キマイラはどこ吹く風でマンティコアの攻撃を緩めない。



 そこで、彼女は実力行使に移った。出来立てほやほやの翼をばたつかせて、少しだけ宙に浮く。



「これでも喰らえっシャア!」



 彼女の両眼が赤く光ると、キマイラの体に向かってビームを飛ばした。



(続く)

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