第34話 瞬間移動―テレポーテーション―

1593年10月24日



 フィリピンのマニラにて、スペイン人兵士ヒル・ペレスは宮殿の警備を行っていた。



「あー、何か疲れたわ。ちょっと寝よか」



 彼は壁にもたれかかって目を閉じる。少し仮眠を取るつもりだったが――。



「誰だ、お前は!?」



 ペレスが目を開ければ、見慣れぬ制服を着た兵士数人が声を荒げて立っている。



「私はマニラにてダスマリニャス総督の宮殿を警備するヒル・ペレスである! ダスマリニャス総督亡きあと、次期総督になる男だ!」



 ペレスは威風堂々と宣言したが、兵士は互いの顔を合わせて肩をすくめた。



「マニラ? ここはメキシコシティーだぞ! 気でも狂ったんじゃないのか?」


「この曲者め! 脱走兵に違いない!」


「牢屋に放り込んでしまえ!」



 かわいそうなペレス。こうして、彼は数か月間投獄され、ダスマリニャス総督の訃報が伝わってから釈放されたのです。めでたしめでたし、瞬間移動テレポーテーション



※※※



202×年4月29日



 芭尻ばじり先生は目を閉じて必死につぶやく。



満地まんち先生を助けたい、助けたい、助けたい……」



 彼女が再び目を開ければ、最強キマイラに背骨をへし折られんとするマンティコア満地先生が立っていた。



「うぐぐぐ、芭尻ばじり先生、何でここに……?」


「誰が来ようと一緒よ!」



 何と、彼女はカウンセラー室から屋上に瞬間移動テレポーテーションしていたのだ。こういう瞬間移動テレポーテーションの事例は上記の出来事以外にもたくさんあるので、調べてごらん面白いよ。



 さて、彼女がやるべきことはただ一つ。マンティコアを救うために、自らもモンスターになることである。



満地まんち先生、加勢するわ!」



 彼女はマンティコアのサソリ尻尾をつかんで、毒針を左手の甲にぶっ刺した。



(続く)

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