第33話 奇跡を望むなら

 カウンセラー室のカーテンに、マンティコアが最強キマイラに物凄い握力で抱きしめられている映像が映し出されている。その映像を映しているのは、悪魔のテディベアの眼だ。芭尻ばじり先生はイスに縛り付けられたまま、それを強制的に見させられている。



「これでマンティコアは終わりだ。ざまぁみろ」


「何て酷いことを……」



 芭尻ばじり先生は今すぐにでもマンティコアを救い出したかった。彼女は満地まんち先生と初めて出会った日のことを思い出す。



※※※



 放課後、芭尻ばじりがコーヒーを飲んでいたら、1人の女性が訪ねてきた。



「す、すみません。ちょっと聞いてほしいことが……」


「あら、満地まんち先生。どうしたのかしら?」



 満地まんちはイスに浅く座り、体のどこかが常に動く落ち着かない様子を見せる。彼女は軽くタメ息を吐いてから話し始める。



「自分なりに楽しく授業してるのに、前の先生が良かったと言われ、どんどん眠る子や私語を発する生徒が増えて、自分は教師向いてないんですかね……」



 彼女はうつむいて今にも泣きだしそうな顔だ。芭尻ばじりは足を組んで、優しい声をかける。



「あなたの授業、全員聞いてないの?」


「いえ。何人かはしっかり聞いてます」


「なら、その子たちに届くよう、真剣に教えていけばいいわ。クラス全員が集中する授業なんてないもの。もし、生徒の態度が悪すぎたら、担任の先生や学年主任に言ったらいいし」


「は、はぁ、なるほど」


「ましてや、あなたは1年目。ベテランの先生がどんな授業をするか、どんどん見学して吸収していけばいいんじゃない?」


「あー、わかりました。ありがとうございます!」


「いつでも気軽に来てちょうだいね」



 彼女は笑顔になり、軽やかにカウンセラー室を去って行った。それから、何度か世間話をしにやって来ている。



※※※



「彼女を助けたい、助けたい、助けたい……」



 芭尻ばじりマンティコア満地を助け、最強キマイラの暴走を止めたいと、真剣に思っている。悪魔のテディベアに対抗するため、神様や天使に対して強い思いを伝える。その思いが届いたのか、奇跡が起こった。



(続く)

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