第32話 最強キマイラと和解したい

「もう俺様を地味と言わせない! 俺様はこの世界の主人公ダァ! 破壊しつくてやるぅー」



 最強キマイラは悪人1000%のセリフを吐いて、パンチを繰り出す。相手をよく見たら、髪が長く、胸がふっくらして、鼻周りにそばかすのような斑点がついている。元は女の子だろうか。



「元人間の女の子、地味、もしかして――」



 私の脳裏に1人の女子生徒が浮かぶ。里佐土りさどがスマホをいじっていたことを指摘した女子、紀米良きめらさんだ!



紀米良きめらさん、もうやめて!」



 私は攻撃をやめて屋上に降りる。無抵抗の印に腹を見せて、両手を水平に広げた。



「もう十二分に、あなたは私より目立ってるわ。だから、こんなことしても無意味よ」



 紀米良きめらさんは押し黙って、屋上に降りてきた。わかってくれたかな?



「そうだな。もう暴れるのは疲れた」


「わかってくれたのね。ありがとう!」



 私が彼女と握手しようとすれば、彼女の方から抱きついてきた。あぁー、芝生とレモンが混じったいい臭いがするぅー。うっ、ううう、抱きしめの力強すぎるって……。



「フハハハハハ。このまま背骨をへし折ってやるわぁ!」



 騙された! 私は背骨がポキポキ鳴る音と悲鳴を上げられないぐらいの苦痛で、意識が消えそうになっていく。



(続く)

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