第29話 じみへん!~地味な女子高生がムキムキモンスターに変身~

 紀米良きめら伊和いわは今まで地味な人生を送ってきた。



 学校の成績はちょうど真ん中、スポーツはほどほどに出来て、趣味はアニメ観賞とゲーム。イケメンがたくさん出てくるスマホゲーばかりやってるので、ゲームの腕は上手いとは言えない。



 そんな彼女は真物しんもち高校に入って、一大決心をする。今までの地味な自分を捨て、人気者の自分に変身する。眼鏡からコンタクトに変えて、料理を覚えてファッション雑誌を読んで、ひたすら女子力を磨いた。



 2月14日、彼女は学校一のイケメン(当時)の大久おおく先輩にチョコを贈った。大久おおく先輩はチョコを渡してくれた女子全員の顔と名前を覚え、直筆のメッセージつきのチョコをホワイトデーに贈ってくれることで有名だった。彼女は震える手で彼に手渡す。



「あ、あの、これ良かったら、受け取って下さい!」


「ありがとう。大事に食べるよ」



 彼の真っ白な歯がキラリと光る。今までの自分なら出来なかったことが出来て、彼女はとても満足だった。



 しかし、3月14日を過ぎても、大久おおく先輩からのチョコのお返しはなかった。他の女子達は彼のお返しチョコで喜んでいるのに。彼女は本人を訪ねた。



「あ、あの、私のこと覚えてますよね?」



 彼は鳩が豆鉄砲を喰らった顔をする。



「えっと、ごめん。誰?」



 全く覚えてもらっていなかった。彼女はショックで、1週間ぐらい寝込んだ。今まで頑張っていたブラスバンド部を辞めて、怪奇研究会へ入った。どんなに頑張っても、自分は地味で、周りが派手なのは変わらなかった。彼女の深層心理下で、他の奴らを消せば自分が目立てるという“どくさいスイッチ”的発想が芽生えていった。



※※※



 彼女はハイエナとオオタカとシャチという派手な合成獣人キマイラになって、とても目立っている。あり余るパワーで男どもを倒し、標的のマンティコアに襲いかかる。



「ハハハハ。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」



 彼女は拳が100個に分裂して見えるキマイラ百裂拳ひゃくれつけんで、マンティコアの顔を殴り始めた。



(続く)

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