第25話 マンティコアと愉快な仲間たち

 炎狐(火魔ひま先生)がサングラスを取って見つめた途端、リザードマンは急に無抵抗な状態になった。腹に炎狐キックを受けて、その場に倒れてしまった。



火魔ひま先生、何をしたんですか?」


「幻の映像を奴に見せたんですよ。上手くいって良かった」


「そうなんですか。何か凄いですね……」



 私なんか、ひたすらパンチと飛行と毒づきぐらいしか出来ないのに……。あっ、意外とやれること多いわ。



「クンクン。満地まんち先生、少し臭くないですか?」



 炎狐の鼻がヒクヒク動いて、私の周辺を嗅いでいる。それは気づいてほしくなかった。



「うっせぇなぁ! 焦げ臭いあんたよりマシだよ!」



 しまった。思わず私の野性の声が飛び出してしまった。怒られるっ!



 でも、炎狐は全く怒らず、目を細めてニコニコしている。彼は自分の胸や脇を嗅いで、顔をしかめた。



「確かに。僕もかなり臭いですねー。ハハハ」



 何ていいモンスターなのだろう。この人と仲良くできて、本当に幸せだ。



「うーん。里佐土りさど君はどうなったか、あっ、負けてる!!」



 エロシロクマが起き上がった。私と炎狐は彼を軽べつした目で見る。



「なっ、何ですか、2人とも? まさか、これ以上、私を倒す気ですか? やめてほちぃー」



 エロシロクマは急に黒目をウルウルさせて、可愛いクマアピールしてきた。気持ちわるぅー。そんなことやっても、堅物かたぶつ火魔ひま先生には全く通じないのにね。



「約束通り、相須あいす先生と里佐土りさどには説教をたっぷりしましょう」


「わー、やめてくれー! 私はただモンスターの本能に従っただけなんですー!!」



 今度は子どものように泣きわめく。本当にどうしようもない大人だ。



「敗者は勝者の言うこと聞くもんだぜ、相須あいす先生……」



 あおむけのリザードマンが顔だけ上げて、透明の膜(瞬膜しゅんまく)を出してまばたきしながら、消え入りそうな声で言う。悪ノリすることが多い彼だが、敗北を素直に認める姿勢は褒めてもいいと思う。



 こうして、私たち元人間のモンスターは仲良くなれて、学園に平和が訪れた。という形で、この話が終わったら良かったんだけどね……。



(続く)

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