第22話 炎狐は幻術が使える

火魔ひま先生、勝ちましたよ、ひ、火魔ひま先生!?」



 マンティコアが血まみれの炎狐えんこに驚く。炎狐えんこはリザードマンの水のボール攻撃で、かなりのダメージを受けている。



火魔ひま先生、私が代わりに戦いましょう!」


「いや、いいです。これは僕と里佐土りさどの戦いなので」



 炎狐えんこは弱々しい炎を吐いて、マンティコアの提案を断わる。



「ひゃっはっはっ! 火魔ひま先生を倒せるなんて、夢のようだなー!」



 リザードマンは胸をそらして笑い、両手をすり合わせて大きな水のボールを作り出す。



「夢? そうか、夢か」



 炎狐えんこはささっとサングラスを取り、鋭い眼光をあらわにした。彼の瞳がリザードマンをとらえる。



「なっ、何だよ」



 たじろぐリザードマンを炎狐えんこは睨む。リザードマンが燃えるような赤い瞳を見続けると、周りの景色が歪んで、野球場に変わった。



「あっ? どこだ、ここ?」



 彼はリザードマンの姿のままでマウンドに立っている。バッターボックスには3m級の筋骨隆々の赤鬼がいる。赤鬼はグオオオと、猛獣の叫びを上げている。



「何かわからんが、とりあえず喰らえー!!」



 リザードマンは巨大鬼目がけて、水の豪速球を投げた。だが、鬼の金棒は容赦ようしゃなく彼のボールを打つ。鬼が打ったボールが、彼の顔目がけて飛んでくる。よける時間的余裕はなかった。



 水のボールが彼の顔面で弾けると、針であちこちを刺したような痛みが走る。さらに鬼が金棒で腹を殴打してきた。



「びゃあああああああ!!」



 彼は素っ頓狂な声を上げ、前のめりに倒れた。



(続く)

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