第19話 マンティコアと炎狐の強力タッグ

 炎狐えんこが私の元に近づいてくる。サングラス越しの瞳は、優しさに満ちている。



満地まんち先生、大丈夫ですか?」


「は、はい……」



 火魔ひま先生にマンティコア変身をバレてしまったけど、少しも恥ずかしくない。モンスター化した人間が3人もいれば、“赤信号みんなで渡れば怖くない”のような感じだ。



「ま、満地まんち先生だって……。そんなぁ……」


「ゲッ! マジかよー」


「てめぇら、男2人で女性1人をイジメるなんて、卑怯ひきょうだぞ! それでも男かぁ!!」



 炎狐えんこが口と尻尾両方から、炎を噴き出す。口の炎はリザードマン、尻尾の炎はアイス・ビーストの体を包み込む。リザードマンがすぐに水を出したので、火は弱まったものの、リザードマンの体は黒ずみ、アイス・ビーストの頭はチリチリになってしまった。



「ちょっと待って下さい。このマンティ、いや、満地まんち先生は私の車を破壊したんですよ」


「そうそう。俺を脅して、スマホ没収させたし」


「だからと言って、2対1で戦う理由にならん!」



 炎狐えんこは両方の拳を固めて、闘志むき出しだ。カッコ良さが天元突破てんげんとっぱして、もう彼の嫁になりたいわ。あと、彼のもふもふの胸毛に顔をうずめたい!!



火魔ひま先生、ここは2対2でバトルしませんか?」


「うん? なるほど。それなら、フェアですな」


「望むところよ! 俺らが勝ったら、お仕置きナシにしろよ!」



 リザードマンが炎狐えんこに向かって唾を吐いて叫ぶ。炎狐えんこは左手の平に右手の拳をぶつけて、一息つく。



「いいだろう。その代わり、先生達が勝ったら、相須あいす先生と里佐土りさどは説教たっぷりしてやるからな」



 アイス・ビーストは「ひええええ」と素っ頓狂とんきょうな声を上げて、ムンクの叫びのポーズを取る。



 あれ? これって、勝っても負けても、私は損しない流れかしらん?



満地まんち先生は相須あいす先生の股間か鼻を狙って下さい。どんな格闘の達人でも、そこは鍛えることが出来ませんから。僕は里佐土りさどの奴を倒す」


「はっ、はい、わかりました」



 炎狐えんこが私にそっと耳打ちしてくれる。そう言えば、さっきから、私は人間時の女声が出せるようになってるわ。おっと、そんなことより、あのシロクマおっさんを倒すことに全集中しなきゃね。



(続く)

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