第10話 マンティコアとトイレはセット

 こんなヘンタイな先生に、自分の住所を教えるワケに行かない。私は自宅と逆方向の場所を住所と偽った。トイレのある公園が見えたら、そこで止めてもらう。



「すみません。ここで降ろしてください」


「わかった。お疲れ様です、満地まんち先生」



 彼の笑みからドス黒いオーラが出ている。やはり、この人は信用できない。また誘ってくる気がする。



「お疲れ様でーす」



 私は飛び込むようにトイレへ向かう。そこで全ての服を取っ払って、裸になって、筋肉隆々のマンティコアに変身する。



「う、うう、ウウウ、ウガァァァァァァぁ!!」



 獣の咆哮ほうこうを上げて、ドアを蹴破り、愛須あいす先生の車へ飛んでいく。オレの鼻の中に、あいつの加齢臭がだんだんと増えてくる。あと、足臭くねーか、あいつ。



えっ? オレは今から何しようとしてんだ? まっ、いいか。なるようになるさ。



(続く)

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