第三十六話「仲直り」

「こんにちは。琴吹さん。私の名前は覚えてるかな……」


「四葉、みどり……」


「――嬉しい。私てっきり嫌われてるのかと……」


 そっと語りかけるように微笑むみどりを見ていると、さすが兄弟が多いだけあるなと思った。


「ぼ、僕は? 」


「深界、心斗さん」


「……ふう、良かった。僕は勝手にだけど、似たようなもの感じていたんだ。喋りたかったけど、なんとなく距離を感じて」


 みんな良かった。琴吹を受け入れてくれている。いい仲間を持った。


「これで琴吹に仲間になってもらえて、ようやく連合は四人か」


「――――隼人が……」


「どうした……深界。隼人がどうしたんだ」


 教室から出たところで青ざめた顔で深界が立ち止まる。


「隼人が、隼人が死んじゃう――――」


「え?」


 あまりにも急な発言にみどりの雰囲気が変わる。一瞬何を言っているのか分からなかった。僕も戸惑い、深界に問いかける。


「どうゆうことだ」


「今、心を読む能力に逆探知がかかって、隼人から章に伝えろって」


 俺宛に……?


「しっかり聞いてほしい、今から伝えることを章に伝えるんだ。一ノ瀬未来は、お前らに嘘をついている。魔法使いを一人残らず殺すつもりだ……」


 伝言を聞いたそのままに伝えられるその言葉に僕らは戦慄した。


「ねえ、それじゃあ隼人はどうするの?出血してるんでしょ? 」


 まだテレパシーのように繋がっているのか、深界は続けて一人で叫び続ける。


「深界さん。ちょっといいかな」


 そう深界に手を触れる。琴吹と深界は同じくらいの身長で、なんとなく双子のようにも見える。


「隼人さんにコンタクトを取れるかもしれない。私の精神魔法にあなたの念話魔法を乗せて、私が逆探知してみる」


 そう言うとしばらく目を瞑り、深界の肩に手を乗せ集中する琴吹。


「――――意外と近いけど、もしかしたら、一ノ瀬って人もいるかもしれない。……気をつけて。場所は校舎裏を抜けた」


「みどり、探しに行こう。二人は一ノ瀬の探知をお願いしてもいいか? 」


「……章。お願い、隼人を助けて…………」


「分かった。絶対にあいつは助けて、生きて帰って。あいつが隠してたことも全部教えてもらわなきゃならないんだ。こんなところで死んでいいわけない」


 歯を食いしばる深界を背に僕はみどりと一緒に隼人を探しに行った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る