第三十二話「隠したくない魔法」

 部室、といっても誰も居ない空き部屋だ。

 僕には今日解決しないといけないことがある。


「ごめん。待った? 」


「いや全然。来てくれてありがとう。早速本題に入りたいんだけど、今日来てもらったのは琴吹についてなんだ」


「もしかして、前に私が苦手って言ったこと誤解させちゃった? 」


「誤解? 」


「前私が苦手って言ってたのは別に彼女が苦手ってわけじゃなくて、戦う時に彼女が辛そうで倒しづらいから苦手って意味だったんだけど」


 僕は四葉が誰にも等しく優しくするから、ほっとした部分もあったのだが。こちらのほうが四葉らしい。


「そうだったのか。……今日は伝えたいことがあって。おそらくだけど、琴吹は魔法病のせいで心とは別の意思で体が動いていると思う」


「そうだったんだ」


「知ってたのか? 」


「いや、感情がちぐはぐな感じがして、なんとなくだけど」


 頬を指でぽりぽりとかくみどり。


「それと、近い内にドラゴンを従えた一人の男がこの学校を潰す」


「ええー!急にめっちゃ重大情報じゃん」


 目をキラつかせて顔を寄せてくる。


「いや、軽くないか?普通もっと何言ってるんだ、とか頭おかしくなったのか、とか疑わないのか? 」


「だって、魔法使ってる時点で普通じゃないし。もう驚かないよー」


 改めて思ったが四葉って、ノリで日本征服しそうだな。


「じゃあ、もし僕がその男と一緒に学校を潰すって言ったら? 」


「まあ、最後の砦みたいに敵になるのも面白そうだけど、しょうくんについて行こうかな。あ、でもお金が貰えなくなると困るからやっぱりラスボスになるしか――」


「お金ならあの男脅してでも奪うから、せめてそれだけは勘弁して」


両手を差し出して僕が目をつぶっていると、クスクスと笑う声が聞こえる


「冗談だよ。ついて行ってあげる」


「でも、僕はあの男に付いていく気は無いんだ。かと言ってこの学校を潰すのを止める気はない。男が言うにはこの学校は政府の監視下にある実験校らしいんだ。だから男の行動に合わせて、学校から別の場所に逃げる」


「え、じゃあ学校無くなるの? 」


「男はあくまでも魔法病にかかっている人の救出。だから、政府に一般人を人質に取られたら間違いなく動けなくなる。その間に僕らが逃げ出せば、やつも目的が達成できて逃げるはずだ。僕が潰すのはあくまで学校の監視体制だ」


「まあ、お金ならどうにでもなるか……。よし、私は決めたよ、しょうくんに協力するって言っても何すればいいのか分かんないけど」


「みどりにお願いしたいのは一般人の避難誘導、そして部員の説得だ」


「いいの?それって皆に間接的に魔法使いだってことをバラすことになるよ」


「ドラゴンが来るんだぞ?こうなったら何でもしてやるさ」


「……なんか。しょうくん変わったね。よし!じゃあ、まずは隼人からだね」


「ごめん。それなんだけどまずは琴吹から行こうと思う」




















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