第三十三話「深介心斗」

「この学校を潰すなんて面白いこと僕も混ぜてくれなきゃ困るなー」


不意に扉から一人の男が入ってきた。


「ぜんぶ、今の話のことは聞かせてもらったよ」


「心斗、なんで……」


「隼人はもう後戻り出来ない。僕もあの未来とかいう人に学校を潰すと話をされたんだ」


「……心斗はどこに付くつもりなんだ」


「もちろん。君に付くつもりだよ」


「一緒に戦ってくれるのか? 」


「うん。ぼくも、一緒に戦う」 


「心斗くんって、気になってたんだけど。どんな魔法なの? 」


 みどりが質問すると心斗は困ったように言う。


「実はさ、僕は二つの力を所持してるんだ。一つは心を読む魔法。二つ目はサイコキネシスに近い魔法だよ」


「じゃあ、あの身体能力が高くなるのはサイコキネシスなの? 」


「いや、あれは別の力で、僕の中にいるもうひとりの僕が使う魔法なんだ」


「じゃあ、実質魔法を三種類使い分けられるってことか」


「でも、隼人くんの魔法の力には到底勝てないけどね」


「うん?隼人の魔法も知ってるってことか」


「そりゃ、知ってるよ」


「――教えてくれッ! 」


 深介の小さな肩を掴み、力強く頼むと、少しこわばった表情で答えてくれた。


「まず、隼人くんの力は三次元じゃなくて、裏の世界に干渉して、流れるものをせき止める力だよ。僕らは通常自分の体とか、周りのものとかに干渉しているけど、隼人くんは力をせき止めて、一気に開放したり、時間の流れを止めたりできるんだ」


「私、そんな風に聞いてないんだけど、隼人嘘ついてたのかな」


 落ち込んでいるみどりを横目に話を続ける深介。


「その力は、ほとんどの魔法が通じない。……というよりも、止められるような力は通じないといったほうがいいかな。単純な攻撃は勿論止められるし、不意打ちでも弱ければ簡単に止められる」


「どんな魔法が届くんだ?」 


「そうだね、例えば琴吹さんの魔法とかは簡単に通ると思うよ」


 だから、あれほど琴吹を嫌がっていたのか。


「みどりも一応どんな魔法か教えてくれないか、戦力を確認したいんだ」


「私は言うまでもないかもだけど、植物に関する生命エネルギーを操る力かな」


 わかりやすいが、それ故に扱いやすく、臨機応変に変えることの出来る一番融通の効く力だと今一度思う。この力だからこそ、他を圧倒することが出来るのだろう。


「植物を急速に動かしたり、成長させたり、逆に枯らしたりも出来るよ。生え伸ばせばコンクリートぐらいなら植物は強いから割れるよ」


「よし、現状の戦力確認はできたから、問題の石墨を解決するためにも、まずは琴吹瑠夏を仲間に引き入れに行くぞー」


「「おー!」」


 無邪気な二人は何だかんだ相性がいいのかもしれない。




 








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