第三十一話「石墨という男」

 「石墨、ご苦労。これで重要なサンプルが集まった…………答えを求めるときが来たようだ。人間の発祥へと君も協力してくれるね」


 そこはどこかの研究施設。


 「はい。分かっています、いつもどおり僕が皆を誘導します」


 石墨は宣告を受け入れ、その場を去る。


 「君だったか……後を着けたのに報告はしないのかい?それにしても空に居たのにどうやって君は盗み聞きが出来たのかな? 」


 入り口で待ち伏せていた一ノ瀬未来が質問を投げ掛ける。


 「どこの誰か知らないが首を突っ込むのは止めてくれないか。ここが俺の居場所なんだ。それに魔法がある世界を僕は望んでる」


 その言葉が案外一ノ瀬に効いたようでそこからは沈黙の中、石墨がその場を離れるのみだった。


 「困ったな。そういう意見に悩まされるのには慣れていたんだけど。それにしても、彼の魔法と引き換えにしたものって一体……」

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