第二十四話「理解」
「琴吹。僕は君を理解できていなかった。でも、今わかった。僕と君は同じだ」
言葉に反論するかのように突風が吹き荒れる。琴吹の黒髪につけられていたヘアピンが外れ髪の毛が乱れる。
「お前に何がわかるッ!私の気持ちのかけらもわからないやつに……、自分の生きたいように生きれない気持ちがわかるかッ――」
僕と同じだ。自分が理解されないことに苦しんで諦めていたあの頃と。
「僕も転校を繰り返していた……だから分かる。孤独とか悲しみとか理解されない気持ちはさんざん味わった。それに君がどんな境遇か僕は知らないけれど、魔法を通じて君の感情は伝わってきた。だから。――――僕にもっと伝えてくれ」
「なんでそんなに構うんだ。初めてあって間もないやつに」
「僕は取りこぼしたくない。誰ひとりとして。日常が壊れるのは嫌だ。だから、日常の一部になった君を取りこぼしたくない」
僕が作った檻の中で少し落ち着いた少女の姿をした琴吹に歩み寄る。
「僕は、子供の頃から魔法が使えていたのかすら今は分からない。魔法がなければいいとも思った、でも。今、こうしていろんな人と出会えたから良かったと思える」
檻の中で疲弊した琴吹が絞り出す言葉に耳を傾ける。
「私を…………僕を見てくれるか……」
彼女、いや彼はきっと認められることを待っていた。僕も、誰かに認められたいそう思うときがあった。だからこそ、琴吹の気持ちは分かる。
そして、僕はこう返事をした。
「もちろんだ」
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