第二十三話「琴吹の心」

 ふと僕は思い出した、深介の魔法の副作用という言葉を。仮にもし、彼女の副作用が無意識の魅了なら。今まで使っていた魔法は本来の魔法だろうか。


 いや、むしろ副作用が別にあったとして、それはデメリットとは限らない。僕の副作用は記憶を失うが、みんながみんな魔法を使うと記憶を失うわけでは無いし。


「精神が壊れる前に早くしないと…………」


 影の檻から聞こえてくる噛みしめるような声。それと同時に激痛が体をほとばしる。


 さっきまで防御していた精神魔法をせき止めきれなくなった。しかも、その後ろからさらなる衝撃が流れ込んでくる。




 一瞬、それと一緒に彼女の記憶が流れ込んでくる。


《なんで、こうなんだ。僕はこんなんじゃないのに! 》


 僕? 彼女は男だったのか。いや、魔法の代償がもし…………。


「琴吹っ、君は魔法で何を失ったんだ!? 」


《なんで誰も本当の自分を、僕を見てくれないんだ》


 琴吹の心が流れてくる。








「きれいね、瑠花。あなたはやっぱり女の子だわ」

琴吹の母親だろうか。歪んだ顔で、琴吹を見ている。


「僕は男だよ、お母さん……」


その瞬間。パチンという音と視界が倒れる。

「あなたは女の子なのっ、わかる?! ねえっ」






《誰も僕を見てくれない……。児童養護施設の人も、お母さんも、友達も……。魔法なんていらない。僕は普通が良かったのに!》


 僕と同じだ。魔法が人生に影響しているんだ。彼もまた、魔法の被害者なんだ。


――――――彼を救ってみせる。





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