第二十二話「戦闘②」

 今回の試合のルールには大きな穴がある。それは外とは一体どこなのか、だ。

そして。中庭は校舎内ではない。そう、外なのだ。


 つまり相手をあの中庭から外に出すことで、一方的に魔法を使用できることになる。今からそれを実行するために、琴吹瑠花をおびき寄せる。


「――――――うっ、頭が……」


 しかし、相手も考えていることは同じ。そう簡単にはいかなかった。


「……………………」


 無言でこちらに近づいてくる琴吹。平衡感覚が狂い、吐き気に襲われる。


 石墨が言うには琴吹の魅了は思考力の低下によるものらしいが、どう考えてもこれは脳に干渉している。だが――――――――――

――――――脳に干渉してくる魔法に対抗できないとは言ってはいない。


「はあッ――――」


 相手の魔法も自分の魔法も本質は同じ。自分の脳に魔法を流し込んでアクセスを止める。


「初めて見た魔法にここまで対応する能力…………。あなたの本能、それとも隼人君の知恵ですか。まあ、どちらにせよここで倒しますッ――――」


 小柄な体格が一瞬で視界から消える。


「自分の精神系に魔法をかけて身体能力と反射速度をあげる技。これも石墨の情報通りだ。ここでそれを使って外に逃げることはしないはず、なら――――」


 目を瞑り、音だけに集中するんだ。きっと今微量ながら僕の目には盲目状態にする魔法がかかっているはず。


 木の裏にある僅かな気配。あの時の、魔法の感覚を思い出せ。時間がゆったりと流れていくあの感覚を。


 瞬間、僕の手から黒い影のようなものが漂う。狙うは木の陰。僕の魔法は影から魔法を発生させることができる効果があると思われる。だからこの時を待っていた。


「――――そこだッ」


 相手のから数本の黒の線が飛び出し、鳥かごを作り出す。残っていたか確認するには、最後に集合場所に行かなくてはならない。人数を減らせば賞金を上げることができるのだから、共闘はしようとはしない。つまり、この時点で僕の勝利はより確実になった。






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