第二十一話「戦闘①」

「よーし今週もやっていくぞ。今回のルールは前回と変わって、魔法の範囲を限定させてもらう。肝心の範囲だが、魔法を使っていいのは校舎の外だけだ。制限時間は四十分、今回の報酬だが、それまでに残っていたものが部員に対して一つの願いを要求する権利を得るというものだ。何か質問のある者はいるか」


 ざわつき始める周囲の部員。


「せんせー。それって何でもいいんですよね」


 わざとらしい石墨の質問が飛ぶ。


「もちろんだ。ただ、法律は守るように。…………よし、それではいつもどおりに開始時間になるまで待機だ」


 部活の顧問である東の掛け声で部員が定位置へと動き出す。石墨と、みどりからアイコンタクトに反応し、目線を送る。


 いよいよ、作戦決行だ。と心の中で呟き、校舎庭へと歩き出す。

 

 吹き抜けの天井から降りる光を浴びて育った一本の木。その周りには座ることのできる、木管楽器のような四角い茶色の木材が360度並んでいる。


 広さは教室二個分くらいで、みんなはここでよく昼食をとっている。そこへ、一人の影が歩み寄る。


「あなた、前の……」


 魔法病以来の再開。ヘアピンが何個もあることに感じられずにはいられない独特な容姿に加え、茶色に染めた光沢のある髪。


 

「この前はありがとうございました。でも、勝負は勝負です」


 石墨いわく魅了というのは通称で、実際は頭の思考が遅くなる効果を持った魔法らしい。しかし、思考できる情報量ならばその効果は薄い。

 

 ただ、無意識の魔法は小規模かつ、弱い。実際の出力の魔法が来れば、一瞬で身動きが取れなくなる。


「いいですよ、私も全力で行きます」










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