第十話「石墨の秘密」
「で、僕をどこへ連れていくつもりだ」
「章くんってさ、嘘が得意だよねー」
言われたその言葉が胸を刺す。確かに素直な心の持ち方をしていたなら、今頃円滑な友達関係が築けていたかもしれない。そうでなくても、今よりは楽だったはずだ。
「君をやった隼人くんについて話してあげるよ。彼はね、転校を繰り返していたんだ。そして僕と隼人は幼少期の友達だったんだ。でも、今の隼人くんは昔とは変わっちゃった……」
それは変わるだろう。何年も経てば、心も成長する。ごく自然のことではないか。そう思っていると、深介は驚きの言葉を口にする。
「魔法を使いすぎて、隼人くんの心は変わってしまった。暴力行為を働いて、学校を退学になったんだ。……そして、この学校に通うことになったんだ」
「そんな、まさか。あいつが暴力を振るうわけ……」
「魔法使いの特徴。副作用。それについて僕は調べた」
深介の低い声が響く。それと同時に何かが起ころうとしている事を本能で感じる。
「……おい、深介。何してる」
まただ。また、何も感じなかった。真横に迫る石墨。
「隼人くん……」
ささやき声で深介はつぶやく。この少年は以外にも信頼できるのかもしれない。しかし、深介の体は百八十度回転し、僕は窓から投げ出された。
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