第八話「初めての戦闘」

 事前に渡されたインカムを耳に付け、校舎内で待機する。


《では、五、四、三、二、一、……始め!》


 下駄箱が並ぶ昇降口前。そして二階へと続く階段を上り、上から下を見下ろしていると、足音が聞こえてくる。

 廊下に注意していると、体が見える。


「ごめん。賞金がかかってるから……」


 いつもとは違う本気の声のトーンで真剣そのものの、みどり。


「ちょ、ちょまっ……」


 駆け足で近づいて来るみどりが足早になり、そして走って向かって来る。賞金がどうなるかを心配している場合ではない。


「ごめん、みどりッ! 」


 ペイントボールを思い切り投げる。そして逃げる。

 だが、それでやられるほど相手も弱くは無かった。


 後ろを振り向くとみどりの魔法が姿を現す。

 地面から先程までなにも生えていなかった廊下が鬱蒼とした森と化す。何本ものつるが束となって槍となる。


「みどり、それは、ちょっと……」

 当たったら死ぬ。


「そうだ。これは遊びじゃないんだよ、あきら


「お前いつの間に」


 反応すると同時に腹を殴られ壁にたたき付けられる。背中が勢いよくぶつかり、思わず悶え、苦しむ。走り去ろうとする石墨は思い出したように振り返る。


「おっとペイントボール投げなきゃ、……はい、お疲れさんっと」


 容赦なく体に打ち付けられるペイントボール。そしてインカムから声が響く。


《島崎章、脱落。残り十三名》


 悔しさが込み上げる中、痛みに負ける自分が情けなかった。

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