第2話

 店を出て10分も経っていないが、僕は今、全力で走っていた。


「ハァ、ハァ……くそ、何でこんなときによりによって、あいつらに」


 後ろを見たら誰もいない。全速力で走って息切れが酷いので、速度を緩める。

 こんな日にうちの不良グループに絡まれるなんて。

 いつも無理やりゲーセンやスロットに付き合わされて金をせびられる。

 借りるだけだといって持っていった携帯ゲーム機もゲームソフトもまだ帰ってこないんだ。

 それらももういい。くれてやる。

 でも今日だけは、今日だけは捕まりたくなかった。

 この紙袋の中には僕のこれからの人生がー入ってるんだ。

 でもあいつらの1人が僕が抱えた紙袋に手を伸ばしたから、

『何嬉しそうにその袋抱えてるんだ? 俺達にも見せろよ』

 だから隙を見て全速力で逃げた。


「ちくしょう、あきひこの奴どこに逃げやがった!」


 バタバタと走る音が近づいてきた。

 駄目だ、捕まる。隠れないと…… 

 周囲を見回すうちに、ふと駅の公衆トイレが目に入った。

 逃げ込むならここしかない。

 青い人間マークと赤いスカート型の人型マークがあった。

 男性トイレに入ったらきっとすぐに見つかる。

 だが、もう片方は女性トイレ。こちらはすぐには見つかりにくいが、男の僕は入っちゃいけない場所だ。

 公共のトイレに男性が入ったとこを見つかれば下手すれば、こちらが通報される。

 どっちを選ぶのか。

 今ここで決めないと―ー。


 ふとさっきの怪しい洋裁店のお姉さんの言葉が浮かんできた。

 『2、3日考えることを約束しなさい』

 でも、どうやら僕にはそんな時間が無いようだった。


「あきひこの奴どこだ!」



 背後で声がした。奴らが迫っている。学生服の黒い影が見えた。僕を追いかけているのだ。

 ああ、もう考えている時間はない。進むのか引き返すのか。決断の時だ。

 そうだ、青い方のマーク、男性トイレを選んだら、すぐにあいつらに捕まってボコボコに。いつもの僕に逆戻り。

 女性トイレに逃げ込んだら、僕が変質者になる。

 幸い今は気配がなく誰もいないが。

 そして……もうこの制服を着るしかなくなる。

 僕は考えるーー。

 捕まれば、この紙袋にある双葉女子高校の制服のことも露見する。恐らく取り上げられ、奪われるだろう。

(嫌だ)

 今までと変わらない屈辱の日々が待ち受けている。

 もう一度あいつらに押しつぶされる劣等感の日々だ。

 赤い方のマーク、女性トイレの方に入ったら、その先は―ー。

 わからない。でも未知の可能性が待っているような気がした。

 体が自然と動いた。 

 今更引き返せない。決めた。

 あの見慣れた青いマークに背を向けた。

 そして、紙袋を抱えて赤いスカートの人型マークが掲げられた側の入り口へ。

 そして新しい世界があることを信じて。


「きゃあ! 何? あんた!」


 入るなり悲鳴がした。

 誰もいないと思ったけれど、運悪くOL風の女性がいた。

 でももうここで止めることはできないんだ。

 そのまま、個室へと飛び込んだ。

 一番端の個室が空いていたので、そこに飛び込んでそのまま扉を閉めた。

 ガチャンと鍵をかけたと同時に外から声がした。


「ちょっと、男用はあっちよ! でていきなさい! 人呼ぶわよ!」


 だが、もう出て行かない。引き返すことはできない。

 僕は心の中でそう言い返してやった。

 なんだかんだと叫び声がしたが、すぐに止んだ。

 トイレに静けさが戻った。薄暗い狭い空間、目の下の和式便器。男用のものと何ら変わりない。

 深く息を吸うと、見ると色々思いが浮かんだ。


「はは、昔もこんなことあったっけ」


 小学校2年の時。放課後悪い奴らに強要されるがまま女子便に閉じ込められた。

 あの時僕は思ったんだ。たった今女の子になれれば、女子便にいても問題ないのに―ー。

 でもそんなのは当然無理で。

 その後、男子が女子便に入ったと、騒がれ学校中の嘲笑の種になった。

 より一層いじめられるきっかけになった。

 あの時と同じだ。

 でも……違う。今の僕にはこれがあるんだ。紙袋を強く抱きしめた。

 もう一度やり直すんだ。僕は生まれ変わってここを出る。

 早く。時間がない。

 上半身の学ランのボタンを外す。そしてワイシャツも脱ぎ捨てる。鞄にぐしゃぐしゃに入れてシャツ1枚となった。

 そして紙袋を開いた。

 折りたたまれビニールに詰められたそれ。

 一番初めは白いブラウスだ。

 覆われているビニールを手で引きちぎると簡単に破ける。

 すばやく取り出して広げる。

 シンプルな長袖のブラウスだが、首の所にある可愛い丸襟リボンが特徴的。

 あの双葉女子の生徒が着ているものと同じだ。

 でもとっても小さい。女子用Sサイズだ。いくら僕がチビ男でも一回りいや二周りも小さい。

 ボタンをするどころか、腕を通すことすらままならない。

 無理だ、これを着るのは無理。小さすぎる。

 でも手にとった瞬間僕は感じた。

 着れる。

(さあわたしを着てーー)

 この白いブラウスがそんなふうに語りかけてくる気がした。

 僕の制服なんだから、これを着られるんだ。

 そう信じて制服に片方の腕を通した。


「え?」


 難なく腕が入った。

 そして。もう片方の腕を通した。やはり、腕が通った。

 もう疑いはない。僕は小さなブラウスを着たんだ。大きさなんて関係なかった。

 落ち着け。

 震える手でボタンをはめた。女物は男とは逆のボタン、左前が上のそれを慣れない手つきではめていく。

 あはは、なんてことだ。ボタンがはまっていく。

 綺麗に一つ一つ。


「!?」


 上から2つめまでボタンをはめたところで、違和感を感じた。

 少しボタンが苦しい?胸が……胸が当たってボタンがきつい?

 まさか、胸の膨らみのせいでブラウスがきついのか。

 つまりこの感触って僕の胸が大きくなっているのだ。

 おっぱい、乳房ーー。いろいろな言葉が頭に浮かんだ。

 全てのボタンを閉じたとき、今までになく気分が高まっていた。

 今のボクの状況を確認したかったが、じっくりこまごまと観察している余裕はない。

 次はスカートだ。

 スカートを袋から取り出そうとした。


「おい、こっちにはいないぞ、本当にこっちか?」

「おっかしいなあ。確かにここに入ってくるのを見たんだがなあ」


 声が個室の向こうから響いてくる。

 あいつらだ。声はすぐ隣、男性トイレからしてくる。

 僕を探している。


「あきひこの奴、ひょっとして向こうの女便所に……まさかな」

「いやそうかもしれんなあいつのことだし。ひゃひゃ、あいつならやりかねん」


 早くしないと……。

 この上着だけ女の子の状態で見つかったらしゃれにならない。

 蝶のイメージが何故か頭に浮かぶ。

 そうだ蝶だ。今の僕は蛹から脱皮する蝶なのかもしれない。今一番無防備で危険な時。

 ベルトを外し、学生ズボンをズリ下げた。

 もうパンツ一枚となった。

 そして包んでいるビニールを破り、それを手に取る。

 濃紺、膝上ぐらいまでの短めのスカート。双葉女子の生徒はこれを可愛く身につけている。

 足を通して穿くだけのごく簡単な行為だが、僕の中にいる男である自我が最後の抵抗をし始めた。


『穿いちゃ駄目、穿いちゃ駄目。僕が消えちゃう。男の僕を消さないで』と。

 股間がそう主張する。

 でも一方で、手に取ったスカートが強烈に促す。

『さあこれを穿きなさい』と。

 その強い声なき声に動かされ、僕はスカートに足を突っ込んだ。

 スカートはやはりSサイズで小さいから、両足を一度に入れられない。片足だけ。

 僕の男の自我が悲鳴をあげた。

 けど、それ以上にスカートが優しく語り掛けてくれる。

『いいわ。そのままあなたの下半身を包んであげる』

 さっきと同じだ。

 ブラウスと同様、こんな小さいスカートなのに、何故かスルスルと穿きあげることが出来る。

 最初は足を入れるのもやっとだったのに。

 もうくるぶしまできた。

 ズボンと違って二股じゃなくてふわふわしている。あっという間に、腰まで上がった。

 パンツを穿いた尻もスカートに飲み込まれていった。

 最後だ。横のファスナーを引き上げて、スプリングホックを留めた。

 ずり落ちないようにしっかりと。

 スカートが僕を祝福してくれた。おめでとう、よくやったわ、と。


 あああぁぁぁ!


 男の自我が最後の断末魔の声を上げた。

 穿いた、今スカートを穿いたんだ。


「ん……」


 その瞬間一陣の風が下半身を通り抜けたような感触に覆われた。

 すぅっと冷たいような、何かが抜けていくような感触。

 急に股間が寂しくなる。そう、このスカートの中がとっても寂しいんだ。

 スカートには股が無い。しかも膝上までしかない短めスカートなので、ちょっと風も感じる。空気が当たるたびに寂しくなる。

 こんな感触始めてだ。今まで守っていた大事なものがいなくなった喪失感。

 寂しくて寂しくて、両腿を思わずくっつけてしまう。

 どうしても、擦り合わせたくなる。内股にしちゃうんだ。

 自然に女の子の腰つきになっちゃう。どうして?

 思わず自分でそのスカートを捲って中の様子を見たくなった。

 股間がどうなっているのか確かめたくなった。


「おい、いるんだろ! あきひこ」


 中を伺う様な声。

 き、来た。

 スカートの裾を摘んだ手を引っ込めた。

 あいつらの声を聞いた途端、言い知れぬ不安が僕を襲ってきた。

 自分の体に起こった大きな変化。

 自分には着られないはずのサイズの制服がすっぽり納まった。

 ブラウスを着るときには胸に柔らかい違和感。二つの双丘。

 さっきからスースーするスカート。

 なにより体が縮んでいる。袖やスカートから伸びた手足は小さく細くそしてツルツルしている。

 起きた変化の大きさに僕がついていっていない。

 どうしよう?どうしよう?不安だ。

 怖い。またいじめられる。いつもの僕に戻る。

 と、紙袋の中から僕を呼ぶ声のようなものがした。

 あれ、まだ何か残っていたかな。

ーまだ最後のあれがあるよー

 手を止めて紙袋をまさぐった。あ!黒い革靴があった。双葉女子のローファー。

 これに足を入れる。

 21~22cmくらいの本当に小さな足のサイズだ。

 だがもう履くことに心配はなかった。つま先から、片方ずつ小さな足を入れた。

 履けた。すっぽりと収まった。

 後はカラメル色のスクールベストだけ。これは男も女も同じ。ただ同じように着るだけだ。

 頭から急いで被った。首穴から頭を出すとき、少しいつもと違う感覚。

 髪が少しだけ伸びたような気がした。

 これで終わりだ。

 着るものは全て着た。

 双葉女子高校の制服を着た。

 その途端、別の変化が起こってきた。それは体の感覚ではない。


(何これ……?)


 胸の奥の方から湧き上がってくる。

 なんか、本当に自分が双葉女子の生徒であるような気がしてきた。

 そしてほんのちょっぴりだけ不安が消え自分に自信が芽生えた。

 大丈夫、ここからでても。

 このトイレの個室から出たくないという気持ちよりも、ここを出て自分の姿を見てみたいと思うようになった。

 早く双葉の制服を着た自分の姿を。

 あの手洗いのところにある大きな鏡で自分がどうなったのか知りたい。

 さっきまではここから一歩も出られないと思っていた扉を自分の手で鍵を外し開けた。

 薄暗い個室に光りが差し込み、一瞬瞼を押さえたがすぐに慣れた。

 ピンクの色調で統一されたタイルと壁。さっき入るのにためらわれたこの女性トイレが

 先に出現した世界のように明るく見えた。

 今まで暗い思い出しかなかった女子トイレが、こんなに綺麗だなんて知らなかった。

 そして外へ一歩を踏み出した。鏡、鏡を見るんだ。

 スカートの中の太ももをゆっくり上げた。黒いローファーを穿いた足で床のタイルを踏んでー、

 その瞬間ぐらっとよろめいた。


「あっ」


 小声を出してしまった。内股のまま、ぺたんと尻餅をついてしまった。


「いたたたた」


 その時感じた。

 突っ立ったままの時には感じなかった大きな変化に気付いた。

 お尻が大きくなっているんだ。脂肪がついてて重い。

 そしてそのせいで体の重心や支える軸が変わっている。

 一方で脚は細くなり、足も小さい。

 不安定になっている。

 体は小さくとも、お尻は大きく足は細い。

 どうせ華奢でチビ男だから同じものだと思っていたけど、女子は骨格からして違う。

 歩き方を変えないと。もういちどゆっくり立ち上がり、

 今度は下半身、とくに腰に力を入れ、重心を変えた。

 そして再び足を前へ。体の軸がずれてお尻がわずかに右へ。

 次の一歩。今度は逆方向にに体の軸がしなり、左に揺れる。

 スカートを穿いていると、どうしても股間が寂しく、内股になるのでさらに不安定な立ち方になる。

 自然、歩き方もお尻に重心を移した歩き方になる。

 歩くと軸の動きに合わせて左右にお尻が動き、それを包むスカートがフリフリ揺れる。


 そういえば、小学校の頃――成長が早くお尻が大きな子がこんなふりふり腰を振る歩き方をしていたっけ。

 「わざとやってるんじゃないの!」男の子がひやかすとその子は烈火のごとく怒っていた。

 卒業する頃には大体の女子はこんな歩き方になっていた。

 なっていないのは、大根足で安定している女子だった。


 い、今も自分だってわざとやってるわけじゃない。

 こうして腰をふるような歩き方が楽。

 男の子でこんな歩き方したら疲れて痛める。

 でも今は骨盤も違うみたいで苦にならない。

 不安定さを和らげるには、この方が良い。

 すぐにこの歩行方法が身体に刻み込まれたのか、始めの数歩は違和感を感じたが、

 それ以降は意識せずに、この歩き方が出来るようになった。

 そしてついさっきまで学生服を着ていた時とはまるで違うあるき方でーー。

 こつこつと固い靴の音をさせ、ごく自然にお尻を振りながら歩く。

 そして鏡のある洗面台にようやく立った。

 そこに映ったものに呆然と立ち尽くす。


「はは、全然違う、違うよ……」


 考えが甘かった。

 昔から女っぽい男の子と言われていた。細いとか小さいとかそんな理由で周りから言われ続け自分でもそう思っていた。

 このままの姿でも十分女の子として通用する。

 そんなことを本気で思っていた。

 でも鏡に映った自分は想像を超えていた。

 この顔や体は確かに自分だった。

 でも違うんだ。

 顔立ち、目元、鼻や口、顎、一つ一つ調和されたように柔らかい造りだ。

 体は双葉女子高校の制服がブラウスもスカートもピッシリとはまっている。

 控えめな胸、柔らかい体つきと可愛く伸びた脚。

 本物の女の子が鏡に写っていた。

 自分が大きく変わったことを感じた。本物の女の子だ。

 そのままその場に突っ立っていた。


「うう……」


 もう自分が女の子だと自覚した瞬間、胸の奥から大きな感情の波が押し寄せる。大きなうねりとなった。

 あっというまに僕の心を隅々まで大きく飲み込んで染めていく。

 僕は……僕? わたしは……


 混乱していたため気づかなかった。

 いつの間にか鏡の後ろに男が立っていてた。

 突然後ろから手が伸びてきたの気づかなかった。


「よう!あきひこ、こんなとこにいたのか! おら、出てこいよ」


「あああぁぁぁ!」


 小さな肩を軽々持ち上げられ引きずるように外へー。


「おい、お前ら、あきひこやっぱりここにいやがったぜ、ぷぷ女子便に隠れてたなんてな」


「みろみろ! こいつ女装して隠れてやがった。はは、傑作だこりゃ、双葉女子の制服だぜ。どこのショップで買ったんだ?」


「いや! 助けて!」


「いや、最初俺もわかんなかったんだ。なんか雰囲気や仕草が本物っぽくてさー」


「きゃああああ! 離して!」


「おいおい、こいつマジかよ? なりきってやがるぜ」


 ほとんど担ぎ上げられる状態。逃れられない。

 でもなんだっけ? どうして追われてるんだっけ?

 ボクは……あたしは学校から帰る途中に、悪名高い城東高校の不良に追われて……いや、ボクは使いぱしりで、いいえ、なんであたしがこいつらと……。


「なあ、こいつ本当にあきひこか? なんか別人っぽく見えるんだが」


 男達の1人が言った。


「さーて、どうしようか。こいつを」


「しっかしまー綺麗な足だぜ、脛下まで全部剃って、なんかこう、そそられんな」


「おいおい、お前も変態っけあんな。こいつ付いてるんだぞ」


「誰か写真撮ってやろーぜ、あきひこの女装。くく、爆笑もんだぜ」


 トイレの外に連れ出されてゆく。

 何人もの男達の視線。そして自分を捕らえる獰猛な腕。

 足が竦んだ。足が小さく震えた。駄目、動けない。

 さっきからあたし、変。今まで感じたことのない感情が出てくる。

 昔、いじめっこにいじめられたとか、チビだとか馬鹿にされたとかそんなのとは比べ物にならない。

 初めて感じる。獰猛な雄に狙われる恐怖。

 自分が犯される。

 男が怖い。

 カシャっと音がした。


「よし、『あきひこの女装画像』送信っと」


「ああ、やめてぇ」


「はははは」


 理屈とか抜きに恐怖で目に涙が溜まってきた。

 あたしだって、無闇やたらに泣く子じゃない。

 でも今は何故か抑えられない。

 あたしの中の感情の回路が知らない間に変わっていて、勝手にスイッチが入る。


「うわああぁああん、いやああああ、誰か、助けてええぇぇ! 怖いよお」


 大声で叫ぶと同時に涙がポロポロでてきた。

 こんなに大量の涙を、出せる自分に驚いた。


「ちくしょう、何泣きやがる、女みたいに。うっせえなあ、いい加減気色悪いぞ」


「うわあああん! うええええん!」


 そしてかん高い声で叫ぶ自分に驚いた。

 キンキン辺りに響く。


「まったくこいつ本当にタマ付いてんのか? 見てみよーぜ」

「ここまで情けない奴始めてみたぜ」


「こっちです、お巡りさん。怪しい男がトイレに……」

「こら、お前ら何してる!」


 そのすぐ後、何人もの足音が周りに響いた。

 さっきのOLの人が警察を呼んできたのだ。


「こっちで双葉女子高の生徒が襲われてるんです!」


 




 あれから、この不良たちは、警官に取り押さえられそのまま交番に連れて行かれた。

 あたしも一緒にーー。

 奥の方からドンっと強く机を叩く音がした。


「おい、お前往生際が悪いぞ、とっとと認めて謝っちまえ! 女子高生に悪戯しようってな」

「聞いてくださいよ、あいつは男なんです」


「他のやつはみんな謝ったんだ、ええ? お前も男なら潔く認めろ」


 警察の人の激しい叱責に思わずビクッとなる。どうしてだろう?

 自分が怒られているわけではないのに、男の人の大声を聞くだけでとっても怖い。今まではそんなことなかったのに。


「なあ、被害者の子は、謝ればお前を許してやるっつってんだよ。このまま暴行容疑で調書とってとッ捕まえてやってもいいんだぞ?」


「俺を罰するならあいつも罰しないと不公平だ、あいつは男のクセに女の便所にはいりやがって」


「てめえ、言うに事欠いて何抜かしやがる!」


 机を蹴り上げる音がした。

 怖い……。

 さっきから別室から響く声。


「あなたは気にしなくていいのよ」


 あたしがビクビクしているのを見て、目の前にいる女性警官の人は優しく肩を叩いてくれた。


「その制服。あなた双葉高の子でしょ? 可愛いわ」


 応援にやってきた女性の被害者担当と名乗った女性警官さんは、気持ちをほぐそうと色んなことを話しかけてきた。

 おかげで交番にきてからも止まらなかった涙がようやく止まった。

 同じ女性から話しかけられて、安心するという気持ちも初めて。

 ああ、もう色んな感情が湧いてきて説明しきれなくなちゃった。


「今学校の先生に連絡したから、すぐ来てくれるわよ」


 そして迎えが来るしばらくの間、あたしはその女性警官と待つことになった。

 終わった。

 何もかも。

 そう思うと急に安心感が湧いてきた。

 同時に体の中から妙に別の感じがしてきた。

 股間が熱い。

 スカートの中をもじもじ。


「あら。トイレに行きたいの?」


 女性警官はすぐに察してくれた。


「あ、はい……」


 小さく頷いた。

(この感覚……なんか今までと違う)

 おしっこがたまっている膀胱の位置が男の子の時と違うらしい。


「部屋を出てすぐ右の扉よ」

「あ、ありがとうございます」


 今度はふつうに女性用のマークの扉を開くことができた。

 もう慌てない。 

 大丈夫、大丈夫。自分に言い聞かせた。

 そして、個室でスカートに手をかけ、ホックを外した。

 そして立ち上がって濃紺のスカートを巻くり上げ、その中に両手を入れた。

 股間を覆っているものを掴んで下にずらした。

 そのまま膝までずりさげる。

 スカートから出てきたのは、薄っすらピンクのショーツだった。

 ああ、朝穿いたのは白いブリーフだったのに。

 あの特有の股間の穴は無く、前身頃と後見頃だけの女の子の下着。

 パンティという人もいる。

 あたしの股間を覆っていた下着はスカートを穿いてからまったく別物になっていたのだ。

 股間は綺麗だった。

 何も生えていない丘。そこに割れ目があった。一筋。

 男の棒と袋が消えていた。

 体から男性の痕跡が消滅。そして女性の性器があった。

 遂に決定的な物。女性のヴァギナだ。

 それを見た瞬間最後の糸がぷっつりと切れた。

 だって、今この頭には次々とありえない光景が映りだしていたからだ。

 おしっこも忘れてそのままの姿勢で頭を抱えた。


「あ、ああ……」


 次々と再生される映像。それは自分自身の過去の記憶だった。

 脳の奥から引き出されて再生する。

 一番古い記憶から始まった。

 懐かしい。誕生パーティーだ。

 お父さんとお母さんが今よりも若い。そしてローソクをケーキに立ててお祝いしている。

 3人家族がテーブルを囲んでいる。

 なんて懐かしい映像。



―おめでとう、あきちゃんも、もう3つね―

―ほら、誕生日プレゼントだよ。あきこ―

―わあ!あたしの?―

―開けてごらん、ママも考えたのさ―

 そう忘れもしない。これは一番古い記憶だ。

 この時に買ってもらった誕生日のプレゼント、今も忘れない。

 包装をビリビリ破って開けた中から出てきたのは。

 え?ピンク?

―わあ、可愛い、パパ、ありがとう― 

 出てきたのは高そうな生地と刺繍の施されたピンクのワンピース。

 あれ?この時貰ったのは車の模型だったような。

―そろそろ、服ももっと可愛らしいのを着せてやらないと思ってなあ。

 あきこも女の子だしな―

―パパあたし大好き!―

 とっておきのキスを大好きなお父さんのほっぺたにした。

―あきこも、もう来年から幼稚園なんだからオネショしちゃだめよ―

―パパ、お母さんが意地悪するー―

―あなた、もうちょっとあきこにも躾を教えないと駄目よ。女の子は特に―

―はは、あきこはまだ幼いんだからしょうがないさ―

―もう、父親って娘には甘いんだから―

 あれ?ここは違う。逆だ。この時は確かお父さんがお母さんに注意してたはず。

 男の子なんだから甘やかすなって。

 記憶が違っている。

 男の子が女の子にそっくり入れ替わっている。

 あるはずのない記憶。

 自分が少女として生きた記憶だった。

 記憶がどんどん再生される。

 女の子として過ごした幼稚園時代。

 そして小学校。

 一番大切な記憶を思い出した。

 大人っぽくて美人の沙織ちゃんが中学は私立へ行くと聞いたとき。

 女の子なら一度は憧れる名門女子中、双葉女子中だ。

 男の子にも凄いとチヤホヤされていた。

 沙織ちゃんは男の子の前ではいい顔するけど、本当はちょっと嫌味な子。

 女の子ならだれでも知っている。

 いつもトイレでは悪口を言われている。

「あきちゃんが双葉に入りたいって?でもあの制服に子供サイズはないわ」

 あたしが双葉女子に興味を示した時に、影でそういっていたらしい。

 あたしが気にしていることをずけずけと言う。

 成長が遅くて子供体型だってことを。

 だからあたしはこの時、高校は絶対に双葉女子って決めてたんだ。

 もっともっと綺麗になって成長して見返してやる。

―ああ、駄目。密かに好きだった沙織ちゃんが本当は嫌な子だったなんて、そんな記憶―

 密かに抱いた恋心が密かに抱いたライバル心に変わっている。

 でもこれがあたしが双葉女子を受けようと思ったきっかけだった。

 合格発表の日は自分の番号を見て涙が出た。

 双葉女子の制服が着られる。

 記憶はどんどん今へ近づく。

 憧れだった双葉女子の制服を着ている。

 私は双葉女子の生徒……


 今日帰る途中、駅のトイレに寄って鏡の前で髪型と服装を整えていたら急に男が入ってきて―


「……なさい」


「こら、もっとしっかり謝れや」


「ごめんなさいっごめんなさい」


 気が付くと、あたしの目の前で男の子が土下座していた。

 数人の大人が取り囲む中、あたしの前に膝をついている。

 がっくりうなだれてる。

 そのすぐそばにはさっきの婦警さんがたっている。


「ふう、ようやく認めたわ。さんざんあなたを女じゃないとか駄々こねてたけどね」


「君、どうする? まだ気が晴れないってんなら、こいつの学校や親呼び出して公にしてもいいよ?」


 制服の中年ぐらいのどっしりとした体格の警官が、男子を横目で睨みながら言った。

 でも、もうあたしは関心がない。

 この男はあたしにとっては他校に通う赤の他人。


「もう、いいです。早く帰りたいですから」


 いつまでも関わりたくない。さようならだ。


「そうかい、じゃあ二度と悪さしないようにしてやるよ」


 お巡りさんたちは交番内であたしに悪戯した男子生徒全員に誓約書を書かせていた。

 二度とあたしには近づかない、と。


「ちくしょう、こんなことって……こんなことって。あきひこは、あきひこは何処行ったんだ」


「おう! さっさと書けや! 反省してんのか、お前は」


「は、はい」


 終わった。

 書き終わった後誓約書を見せてもらった時そう感じた。

 あいつらとはもう終わり。

 連れ出されていくとき、小声で言ってやった。「今まで散々いびってくれて、どうも。じゃあバイバイ」と。

 ハッと気が付いたようにその男の子は目を見開いた。


「何ボサっとしてやがる、いくぞ。まだ別のことで聞きたいことがあるからな」

「いてて、ひい」


 あたしの目の見えない所へ連れて行かれた。



 次の日の朝。

「おはよう! あきちゃん、昨日大変な目にあったんだって?」


 朝電車に乗ったとき、綾ちゃんに出会った。

 ホームに立っていたらごく自然にあたしをみかけて話しかけてきた。

 以前なら絶対にありえないことだ。時々みかけることはあったけれど、ただ通り過ぎていくだけだった。

 でも今は二人共双葉女子同士の友達だから当たり前だ。


「うん、あそこの高校に生徒にね……トイレにいたら入ってきて連れてかれそうになって」

「さいてーね、ほんと男ってロクでもない奴らばっか、そんなの刑務所行きにして二度とでてこれないようにすれば良かったのに」

「綾ちゃん、それは違うよ。あいつらが悪いってだけだから全部嫌っちゃ可哀想だよ」


「あきちゃん、妙にかばうのね? それともあきちゃん、本当は男の子なのかな?」

「な、なんでそんなこと言うの?」

「んー、まあ、あきちゃんは一緒にお泊りしたときとかで、お風呂入って確かめてるし違うかあ」


 確かに一緒に泊まった記憶がある。

 あたしも綾ちゃんの裸、ふつうにみていた。


「そ、そうだよ、なんでそんなこというの?」

「あら? あきちゃんは知らないの? 我が双葉女子高の伝説。男の子が女子高にまぎれこんでいるって言い伝えよ」


 胸がドキンと鳴った。


「この辺の女子高には必ず一人か二人は男の子がいるって話。うん、もちろん言い伝えよ。そんなのいたらすぐにわかっちゃうでしょ?」


 あたしの頭に浮かんだのはとある裏通りにある洋裁店。あれを利用したあたしのような子が他にもいるのだろうか。


「あきちゃんも、男の子を擁護したり、知ってるようなそぶり見せるとそういうふうに言われちゃうよ?」


「あ、うん、気をつける」


 あそこは誰でも入れるお店。ちょっと他と違う店ではあるが、普通の店構え。

 あたしだけ知っている店じゃない。


「ほら、あきちゃん、電車来ちゃったよ? 乗ろうよ」


 綾ちゃんに手を引っ張られ電車に乗り込んだ。





 女は今日も店に立ち続けた。

 人通りの少ない裏道に立つ店。

 やたらと学校の制服が並べられている店舗内。

 客は滅多に入ってこない。


「あら? どうしたの? 制服の採寸をしたいのかしら?」


 夕暮れ時、一人の少女が店のドアを開けた。

 学校帰りらしく制服を着たままだった。

 入って来た少女はレジにやってきて女の前に立った。


「いえ、今日はその用事できたんじゃありません」


「そう、じゃあ何かしら? 欲しい服があれば見てってね」


「……お姉さん、あたしです。あたしをみてわかりませんか?」


 訴えるように、わかってくれと訴える少女。

 女は大きく頷いた。


「ふふ、その様子だと双葉女子の生徒になっちゃったみたいね」


「そうです、一週間前ここで制服を貰った、あたしです」


「元に戻せってお願いは聞けないけど、雰囲気的にそうではないみたいね」


「はい、今日はお礼に。そしてもうここへ来ることはないと思います」


「たった一週間でこれだけ馴染んじゃうのは珍しいわ。きっとその制服も喜んでるでしょうね」


 女は目の前の少女をマジマジ見つめ、綺麗に整えられた髪、切りそろえられた爪、姿勢や仕草を称えた。

 ちゃんと女の子の身だしなみが出来ていること―


「凄くないです。元々の記憶がそうでしたから」


「あなた……男の子の記憶と女の子の記憶両方があるのね―」


「はい、今のあたしは両方の思い出があるんです。子供の頃からついこの間までのことまで男と女両方あって」


「どう? 気持ちは?」


「凄く辛いです―」


「あら? 今のあなた随分楽しそうだけど?」


「知ってるんです、女の子の記憶の方が後から出来た記憶、本当の記憶じゃないってこと」


 少女は一々自分の記憶を口に出して行く。

 女として成長していった系譜。


「あたしは小さい頃は走り回るより、おままごとやお人形遊びが好きだった。お父さんとは7歳まで一緒にお風呂入ってた」

―それぐらいからは例え父親でも男の人と一緒に入るのは嫌になった。

 女としての自覚が芽生えた時期だった。

 小学校は1年生からずっと同じ赤いランドセル。

 背が小さいことは気にしてなかったけど、体の成長が遅かった。

 他の子はもうブラジャーを着けている子が大半だから、

 まだ必要ないのに無理して着けた。

 お赤飯食べたのは実は中学に入ってから。

 女の子同士の体の悩みの会話に付いていけずにずっと困ってたから、凄いうれしかった。

 後から考えるとこんな苦しい思いを毎月するなら来ないほうが良かったと思ってる。


「実は、あたし中学の頃好きだったバスケ部のキャプテンに告白してるんです。凄いですよね? 女の子のあたしはこんなに行動力がある子なんです」


 校舎裏での告白。結果は見事撃沈。「付き合ってるな人がいる」からって。

 その上その相手はあの沙織ちゃんと付き合っていた。

 あたしの無謀な挑戦はあっという間に広まって。

 一晩泣いた。あたしは誓った。

 もっと綺麗になってやる。綺麗になって、

 あんな公立中のダサいジャンパースカートの制服じゃなくて、憧れの双葉女子の制服を着る。そしてあの沙織もバスケ部の先輩も驚くような女になってやるって。

 大人の女への道標。


「でも、この記憶は全部嘘。本当のあたしは、ゲームとか漫画に逃げて心を紛らわして孤独だったーー」


「そう良かったじゃない。充実した人生に生まれ変わったのなら―」


「違います」


 少女はきっぱり言い切った。


「今のあたしがあるのは男子だった自分のおかげ。一番苦しんで頑張った。でもあたし自身には、もう感じることがほとんどできないんです」


 男と女の両方の記憶はある。でも今は女の子の記憶が現実味を帯びた記憶となり、 対して男の子の記憶は実感のない記憶。言って見れば夢。

 色あせて忘れていく。


「日が経つにつれて自分でも信じられなくなってくるんです。頭ではわかっていても、自分が男の子だったこと」


 女子トイレに入るのにためらったこと、スカートを穿くだけで恥ずかしさを感じたこと。

 新鮮な思いも戸惑いもみんな色あせていく。


「お姉さんが言った意味、わかりました。あの言葉です。」


 制服を渡された直後に言われた言葉だ。「2,3日よく考えなさい」と確かに言われた。

 確かに2,3日時間を置いていたら、もしかして着てなかったかもしれないと思う。

 自分が夢のように消えていく怖さに思い至ったかもしれない。


「でも、もう後戻りはできません。この制服を持ってあの女子トイレに入った時から、そう決めたんです」


 あの時不良から逃れようとしたとき、迷ったんだ。どっちのトイレに入ろうか。

 あれは運命の別れ道だったんだ。

 あの時、赤い女性マークの方へ向かったあたしは戻れない道へ進んだ。


「これはあたしが選んだ道。後悔したらこの制服が可哀想です」


 ならばその後の運命も受け入れるべきだ。


 話を終えた少女は店をでようとした。


「前にも、言ったと思うけど、その制服には心が宿っているのよ。あなたが信じる限りあなたの味方よ」


「はい、卒業まで大切にします」


 そう言うと少女は笑顔をみせて店を出て行った。



「あきちゃん、どうしたの? 長かったね」


 店の外では親友の綾が待っていた。


「あ、ごめんね綾。もう終わった」


 綾は店の外から、洋裁店を眺めている。


「こんなとこにこんなお店あったのね。不思議な店。指定校ってわけでもないのに色んな学校の制服があって……あ、これあそこの学園の制服じゃん」


「ねえ綾。綾は双葉以外の制服着てみたいと思ったことある?」

「んーそうねえ、他の学校のはブランドデザインのがあるから羨ましいと思うことあるわ」


「そうじゃなくて、他の学校の制服着て学校に通うって別の学校生活というか人生を送ってみたいとか」


「は? まあそりゃそんなことができるなら、って何でそんなこと。あきちゃん、まさか共学に行きたかったとか今更言いたいのかな?」


「え?な、なんでそうなるの?」


「あ、今ので思い出した。あきちゃん、つい最近、他の高校の男の子の告白振ったっての聞いたわよ? 本命は誰?」


「あ、綾。その話はもう……」


 どこかで見られていたのだろうか。

 もう、女子高はこんな噂が駆け巡るのが早い。24時間ワイドショーをお互いにやってるようなもので気苦労が耐えない。


「中学時代のバスケ部の先輩ですって? あきちゃんが一度振られた相手じゃない。もう痛快ねえ、今更おめおめ、やっぱり付き合ってくれって。あきちゃんは女の鏡よ」


「そうじゃなくて今はそれどころじゃないってだけで」


 色々女になって幾ばくもないので付き合うなんてできなかったってのが理由なのに、尾鰭がついてしまった。


「ま、沙織と付き合ってたような女を見る目ない奴だからきよちゃんは正解よ。あんなケバイギャルなんか」


「綾ちゃん、それあたしもショックだったんだから」


 高校で再開した時の沙織。

 ギャル風の睫、化粧、日本人にはありえない色の髪の壮絶なスタイルと化していた。

 しかも肌は早くもシミとニキビがいっぱいであの小学校の大人っぽい気品さのかけらもなくなっていた。


「本当、わからないよ、女って」


「あきちゃん、あなたも『女』なのよ」

「ああ、やっぱり店に戻ろうかな?」


 やっぱり自信がなくなってきた。


「なーにわけわかんないこと言ってるの? さ、あきちゃんの本命教えてもらおうかしら? ほーらその大きくなった胸、モミモミ」

「あ、綾ちゃん、変なとこ触んないで! あ、あぁ!」

「いいでしょ、“女同士”なんだから」




 来客が去った洋裁店は再び静まり返った。

 レジの椅子に座った女は一人つぶやく。


「珍しい子だったわね。女性になって精神崩壊する子も少なくないのに」


 そして次の客を待ち続けた。

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洋裁店の秘密 安太レス @alfo0g2g0k3lf

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