第58話 作者は語る

「○○新聞の武内です。本作に氷室智花もとい花京院智子は、足立あだち先生本人なのでしょうか?」

「お読みいただきありがとうございます。確かに、『智花』は私と同様、片目の視力を失い、眼帯をしていますので、そう思われるのが自然ですね。

 でも、一概に私がモデルだとは言えません。この物語はあくまでもフィクションでもありますし」


「週刊××の斎藤です。では、似てはいるが、先生ご自身ではない、ということでしょうか?」

「そうとは言ってません。『智花』は私の一部であり、『深雪』も私の一部であり、『彩香』もそうなのです。それでいて、作者はただひとり。三位さんみ一体いったいが、物語の世界でのことわりなのです」


「小説△△の三田みたと申します。宗教的なラストとも言うべき展開となっていますが、先生ご自身は、何か宗教に対して、思い入れなどがあったりしますか?」

「お読みいただきありがとうございます。そうですね、関心はありますが、特定の宗派に属しているとは思っていません。

 あまり深掘りすると、ネタバレとなるので、簡単に申しますと、『神様』と言うのは、彼女が選んだ言葉に過ぎないので、本当に宗教的な意味合いでの言葉ではないと思います。

 すべてを包括ほうかつし、大いなる愛によって、人間を救う、そういった点に神との共通性を見出したのでしょう。

 それともう一点。主人公は、幾多の悩みや精神的困難にぶつかります。

 そして最後は、非常に辛い決断を下します。

 そう言った点に、十字架を背負って、すべての罪を人類の変わりに受け、そして復活したとされる、キリストに似た強い波動があったのでしょう」

「なるほど………ありがとうございました」


「では、本日はこれにて足立先生、新作出版記念インタビューをお開きにさせていただきます。足立先生、そして記者の皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございました」



「足立先生、こちらに」

「うん、ありがとう、宗久むねひさくん」


 彼女を楽屋へと続くドアへと誘導した編集者かマネージャーのような若い男性は、彼女と同じように右目に眼帯をしていたのだった。

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ヤンデレ美少女は司書兼メイド勿論彼女 綾波 宗水 @Ayanami4869

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