第13夜 2021/11.24 間合いを測り距離感を掴む事


 どうも。藤宮はなです。今回は間合いについて、です。


 間合いとは。居合いとか剣術の話ではありません。読書についてです。

 わたしが話す事だから、そういう話になるのは当たり前ですが。


 さて。本を読み始めると、ん?ちょっと読みづらいぞとか、ふむふむこんな感じならサラサラ読めるぞとか、どういう話なのかまだ掴めないぞ、などと色々考え、感じながら先を読んでいくワケです。

 まぁ、人によっては何も苦もなく何でも読める人も居るんでしょうけど、わたしはそうじゃないので。


 で、ですよ。


 段々読み進んでいくと、おお!こういう風な本かと得心がいったり、その本の著者の書こうとする感覚への距離感が、適切な微妙な目測が測れてくる事も多いんですね。感覚が合うというのか、それこそ本と自分の間合いがピッタリになってくるのです。


 そうすればシメタもの。そういう時の読書体験は至福になり、本の楽しみは大きいと思われます。


 また結構の割合で、自分が距離を掴めなかったり、相手の間合いに入れなくて難儀する本もありますよね。

 どうしても自分と合わない本は、本が悪い訳でも読者が悪い訳でもなく、単に相性が悪かったというのもあるみたい。


 勿論、駄作もあるでしょうし、悪書もあるにはあるのですけど、小説だと出版されているものはまぁ読者がそれなりに付いている訳で、それなりに面白がれる部分はあったりします。


 自分が面白がれないだけで、他の人には傑作かもしれない。逆も然り。何の感動も起きない小説もあれど、それは単に自分がその世界に入り込めないだけで、本当に読めない場合を除けば、趣味の違いに過ぎないのかもしれないと思ったりします。

 いや、これはホントに傑作とされる作品が、自分の感性に合わず、何にも面白くない、読んだの失敗だったー!っていう経験が沢山あるから言っているのです。


 そして、再読時に間合いが合う場合もあるのです。

 音楽でもそうなのですが、遠くを旅するようにあれやこれや読んだ後に再読すると、あら不思議、というくらいに感じ方に変化がある事多々あり。

 感性が変化したのか、見えなかったものが見えるようになったのか。時間を置いて、本を寝かせて読むと違う感慨に襲われる事もしばしば。


 そこで批評というものの難しさも考えます。

 ある意味作家にも読者にもそれぞれの流儀があって、技術論では正反対の事が語られる事も多いです。

 読者も完全に客観的な批評など無理でしょうし、作家も自分の作品を客観的に見る事は困難ではないかと。


 だから一読者としては、最近あまり貶す言葉は語らないようにと、自戒を込めて気をつけたいなと。それでも何かの拍子にポッと酷い感想も言っちゃうかもしれませんが、極力自分に合わなかったものはそっとお別れする、っていうスタイルに切り替えていきたいなぁなんてボンヤリ考えたりするワケです。


 勿論、健全な批評空間は存在すべきだとも思います。

 優れた読み手の案内などで、自分の見えなかった世界が開ける事も多いですし、着眼点の多様な感想などを見ていると楽しいですし。


 といっても意外に作中の描写を間違って認識しているケイスも割と見られます。

 自分でも誤認してるケイスも多いので、読む本によって人それぞれ解像度が違うのかもしれません。まぁ単に読解力の問題だと切って捨てる人も居ますが。


 そこで強調したい事は、世の中や批評の世界で傑作とされているものでも、自分と感性や思想性が違ったりして、面白く読めない、その良さが良く思えないパターンも沢山あるという点。

 音楽にも自分の好きなジャンル、苦手なジャンルなどいっぱいあるんじゃないかと。それが突然苦手の克服が出来る場合もあり、また逆もありなのが不思議で面白い所。


 間合いが合わないというのは、野球なんかでもそうかなと。

 能力差ではなく相性が悪い相手で、成績が如実に違う選手って居るものですよね。


 苦手な投手や打者、そういうのも実は本や音楽の世界にも存在するのではないか。

 自明の事かもしれませんが、結構そこを見落として駄作とか失敗作の烙印が押される事例が多く見受けられるんで、今一度原点に立ち返ってみたかった、という話でした。



今夜の1曲 Muddy Waters ”Long Distance Call” (1951)

「え?距離の意味が違うって?いやいやご尤も。まぁ、こういうのも一興です」


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