第9話 サイド領にて ③

次に向かったのはシーサイドという、海辺の町だった。



リバーサイドの次はシーサイドって…そのまんまの名前じゃないですか。

サイド伯爵家の初代はどうやら、ネーミングセンスがなかったらしいですね。



まぁ別にそれはいいんですけど。



あそこシーサイドって言うより、島ですよね?

船に乗るなら乗るって、先に言ってください……



船…苦手なんです……



ヘロヘロですが、そのまま船を降りる訳には行きません。

私は国民の憧れの【勇者】ですから!



自分に回復魔法を掛けて回復します。

精神的にはヘロヘロですが、見た目だけでも取り繕わなければ!



ハーシーを先頭に船を降り様としたのですが、誰も出迎えに来ていなかった。



アレ?早く着き過ぎたのでしょうか?

港の職員すらいない……

何かあったのでしょうか?

何やら町の方が騒がしいですけど。



護衛騎士に様子を見に行ってもらった結果、どうやら私達より先に【聖女】と名乗る女性と女パーティーの一行がやって来て、島民達の治療をしたそうです。



しかも治療費として、支払いを請求したのだとか。

それって詐欺では?



そもそもサイド伯爵領で、毎年行われる治療会はサイド伯爵家と、国費の一部で賄われているので無料なのですが。



支払いを請求されてから、詐欺だと気づいた様ですが、治療費を払わない訳にもいかず、渋々払ったそうです。



問題はその後……



帰ったと見せかけて、島の代表者の屋敷に押し入り、強盗をして逃げたのです!!



島民達の何人かはその時に怪我をして、集会所で手当てをしているのだとか……



さっそくその集会所に行って、仕事をしなければなりませんね!

幸いと言ってはなんですが、重傷者の方はいらっしゃいませんでしたので、#回復魔法__ヒール__#で間に合いました。



回復した島の代表者から詳しい話しを聞いたところ……



「【聖女】とその一行が来たのは5日前です。

【聖女】を名乗った女は凄くキレイで優しそうに見えました。他のパーティーメンバーも…… 」


「まさか、アイツらが盗賊だったなんて!」



あぁ…まぁよくある《【聖女】詐欺》ですね。

中にはマトモに治療しないで、高額な代金を請求する者もいます。



後でそちらも確認しないといけませんね。



それにしても、態々治療した後に強盗に入るとか何故そんな面倒な事を?

それに何故直ぐに、外部と連絡を取らなかったのしょうか?



島民に確認したところ、島で唯一の魔力通信塔を偽聖女達に破壊されてしまったそうです。

しかも船も動かせない様に、細工して行ったのだとか……



何と、用意周到なのでしょうか!



しかし、ご安心なさい!

私達の乗って来た、船があります!!

ってアレ?船は!?



えっ!?帰った?

2日後に迎えに来るの?

て…何ですか!?その家の弟が書いている、小説の様な展開は!?



その後、偽聖女強盗団は現れませんでしたが、海がしけてしまい6日島に閉じ込められてしまいました。



まさか此処で、マジックポーチに溜め込んでいた、《栄養クッキー》が役に立つとは思いませんでした。



私達が島で足止めされている間に、島民の一人が偽聖女の重要な手掛かりを、思い出してくれました。



偽聖女の本名と思われる名前です。

《サマンサ》。

そして、お付きの者のフリをしていた女の名前は《ナミ》。



やっと船が迎えが来て、本土側にたどり着いた私達は直ぐに冒険者ギルドに向かい、シーサイドで起こった事件を報告しました。



一緒に島民の代表者を、数名連れて来たので、後の説明は彼等に任せ、私達は遅れている日程を進める為に、次の目的地に旅立つ事にしましょう。



明日から……



だって流石に疲れましたもの………






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