第10話 勇者タツヒコの冒険 ❸

王都にたどり着いた翌日、オレ達は冒険者ギルドに向かった。

新しい回復役を雇う為だ。

今度こそ【聖女】を仲間にする!



そう思って冒険者ギルドの中に入った途端、真っ青な顔をしたギルドスタッフに、『直ぐに先日の部屋へ行く様に!』と言われた。



先日の部屋というのはこの前、セイマとの契約に使った部屋の事だろう。

先に【聖女】を募集する依頼を出したかったが仕方ないか……



オレ達が先日の部屋に行くと、既にギルドマスターやギルドの幹部らしい連中が、集まっていた。



「君達が何故…呼ばれたかわかっているかね?」


オレ達の【勇者認定】の為だろう?

それにしては雰囲気が暗いみたいだけど……



あ!?まさか、【勇者】が選ばれたという事は【魔王】が復活したという事か!?

だから皆んな、深刻な表情をしているんだな!



安心しろ【魔王】はオレ達【勇者パーティー】が倒してやる!!



「オレ達が【勇者】に認定されたからだろ?」



そう自信を持って答えた!

しかしギルドマスターを始め、他の幹部達はオレ達の事を白い目で見た。



えっ!?何か違ったのか?



「君達いったい何を勘違いしているんだ!?」


「お前らは只の#稀人__まれびと__#のA級冒険者…それもさっきまでだがな。」



やっぱりオレ達A級冒険者から【勇者】になれたんだな!

それにしては雰囲気が暗い。



「王家と神殿から苦情が来て、お前達の国外追放を要求されている!」



とギルドの幹部達が喚き出した。

えっ!?何で?

冒険者ギルドってそういう権力から、守ってくれる所じゃなかったっけ?



「あ…あの…冒険者ギルドって、権力者の脅しには屈しないんじゃ!?」



マサユキが質問すると、ギルドマスターは悔しそうに……



「普通ならな……だが、今回はそういう訳にはいかないんだよ!

君達が護衛任務を怠った相手が、相手でね…… 」



護衛任務?

そんな…じゃあオレ達が、雇われていたって事なのか?



「まさか…お前達、知らずに仕事を受けたのか?」


「何という事だ!?」


「やはり…急ぎだと言われたからといって、#稀人__こんな奴ら__#に殿下の護衛を任せたのは間違いだったのだ。」



幹部達がまた喚き出す。

殿下って誰だよ?

まさか…あの神官の事なのか?



「嘘だろ?あの、のほほんとしたアイツが殿下?」



ヨウジが驚くのも無理もない、オレだってビックリだ!

アイツが…アイツが王子だったなんて……



「ユイナーダ王国第三王子、セイマ・F・ユイナーダ殿下。

聖魔法の使いの【聖人】です。

君達はその殿下の護衛を、途中で放棄したんだよ!」


「どのみち君達は王家と神殿の両方から睨まれてしまった。

このままこの国で、仕事をするのは無理だ。

即刻退去した方が身の為だろう。」



せっかく【勇者】に成れたのに、ここを去らなきゃいけないのかよ。

すまない…オレ達のミスの所為で冒険者ギルドに迷惑をかけてしまった。



「セイマ殿下はユイナーダ王国の、国民的アイドルでもあるのです。

その殿下を君達が蔑ろにした事が、国民にバレたら…… 」



えっ?マジで??

アイツそんな有名人だったのかよ!?

オレ達ヤバくね?



とにかく、なるべく早くこの国を去るしかない。

くそっ!せっかく【勇者】に成れたのに。

こんなところで、挫折する訳にはいかないんだ!



(まだ勘違い中…… )



こうしてオレ達はユイナーダ王国を去らなければならなくなった。







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