第18話 ウェールズの強さ
「ここが30階層ですか」
30階層に着いてステラは少し心配した様子でボソッと呟く。
「本当ならオークキングと戦う所なんだけどな」
「ウェールズというドラゴンが出てきてしまったと」
「ああ。——でも、大丈夫だ。絶対に勝てる」
「はい。アランさんならきっと」
俺たちは30階層へと入っていった。
「フライア大丈夫か!」
中に入ると俺は大声で叫んでいた。
「私は大丈夫だが……」
そう言って目線を後ろに向ける。そこには疲弊し座り込んでいるサーラとソフィア、その一歩前にアイギスがかろうじて立っていた。
「アラン⁉︎ 何でアイツがここに……」
「無能が助けに……きたのですか……」
もうほとんど動けない状況だろうに、俺の姿を見ると途端に目を見開いて驚いていた。
「アイギスは知ってたの⁉︎」
「ああ」
「どうしてあんな無能に助けてもらうんですか!」
思い思いに言葉を続ける二人。
「俺だって嫌だったさ。だが死にたくはないだろ!」
その二人に対しアイギスは言葉を荒げて答える。
(全くもって態度は変わってないんだな)
そんなことを思いながら俺は口を開いた。
「もうお前らは早く逃げとけ。そんな疲弊した状態でいられたら邪魔だ」
「はあ! 何様のつもり?」
「そうですよ! 無能が私たちにそんな事を言う権利なんてありませんよ!」
「はぁ……。それじゃあお前達は死にたいのか?」
「「それは……!」」
俺が問いかけると二人して目線を逸らしてくる。分かりやすいものだ。
「アランさん!」
会話の途中ステラがそう叫ぶ。
ステラの声に気づいてウェールズの方へと目を向ける。その刹那、ウェールズは炎のブレスをこちらに飛ばしてきた。
「……っ! やっぱり待ってはくれないか」
『ロックウォール』
岩の壁を作り間一髪のところで炎のブレスを相殺する。
「……詠唱無しだと……」
「お前らは早くどこかに逃げろ!」
アイギス達は突然の魔法に驚いていたが、そんな暇は無い。
「くそっ……。サーラ、ソフィア行くぞ!」
「え、ええ」
「分かりました」
ようやくアイギス達が逃げてくれる。これで何の気兼ね無しに戦える。
「アラン! 私はまだ戦えるぞ!」
アイギス達が居なくなった後、フライアはまだ剣を持って立っていた。
「……フライアはステラの防衛に回ってくれ」
「分かった!」
フライアにも逃げてもらったほうがいいと思ったが、ステラを守ってもらえると戦いやすくなる。
それにフライアは帰れと言って帰るような人でもない。
「ステラ! 支援を頼む」
「はい!」
『我が求めるは強化の奇跡。貴殿に戦神の加護をヴァルキリーエール』
ステラのヴァルキリーエール。力と素早さ、耐久力を三倍にまで引き上げる支援魔法の中でもトップクラスの魔法だ。
魔法が完璧に効いたのを確認して動き出す。
『大和の太刀。雷斬剣』
電光石火のスピードでウェールズのよりも早く動き斬りつける。が真紅の硬い鱗は綻びを見せる事は無かった。
「ぐらあ!」
「——なっ!」
ウェールズは邪魔だと言わんばかりに腕で俺を薙ぎ払ってくる。
「アランさん⁉︎」
「大丈夫だ」
ギリギリのところで避けることができた。ステラの支援魔法がなければ危なかっただろう。
(これは油断してたらやられるな)
最初は出来るだけ温存したかったのだが、そんな事を言っている暇は無いな。
『サイクロンストーム』
『ブリザード』
オークキングを一撃で倒した時と同じ方法で行く。それに加えてステラの支援魔法が有る。十分戦えるはずだ。
『大和の太刀。空斬剣』
「ガル……」
衝撃波を目に放ち一瞬の隙を作る。そして
『大和の太刀。鬼斬剣』
「グルウゥ……」
ウェールズの翼を一刀両断する。
「まだまだ!」
『メテオブレイク』
ウェールズの胴体近くある巨大な隕石をウェールズに突き落とす。
ウェールズはその岩に埋もれ動かなくなった。
「……やったのか」
フライアは小さく呟く。
その直後俺が落とした岩にヒビが入る。
「いや、まだだ!」
「グラァア!!!」
その岩からウェールズが飛び出してくる。
「そんな……」
「傷一つ無いだと……」
「やはりキツイな……」
普通なら大きく深傷を負っているはずだ。だが、出てきたウェールズには傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
その上出てきたウェールズは雰囲気がまるきり変わっていた。
「あれは……炎を纏っているのか!」
「ああ。あれがウェールズの本当の姿だ」
ウェールズはただの赤いドラゴンでは無い。相手を見極め本気を出すと体に炎を纏う。
これをされては中々近づけない。
「来るぞ……」
気持ちを落としている暇もなくウェールズは物凄い速さでこちらに向かってくる。
『アイス——』
「ぐああっ!」
詠唱無しの魔法でもウェールズの速度に間に合わず、俺の数百倍あるであろう巨体の体当たりをもろに食らってしまった。
「アランさん!」
「アラン!」
俺を呼ぶ声が段々と遠のいていった。
「あんなの……勝てるわけ……無いですよ……」
「ス、テラ……」
ステラのその絶望に満ちた声を最後に俺の意識は完全になくなった。
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