第17話 シェラと最後の休憩

「あ、アラン様とステラさん……。その方は……?」


 知らない人影を見るとシェラは急に丸くなった。シェラのこんなところはとても可愛いなと思ってしまう。


「フライアって言うんだ。俺の幼馴染」

「そうなんですね」

「よろしく」


 お互いが頭を下げて挨拶をし合う。


「シェラ。突然何だが今から強い魔物と戦いに行くんだ」

「は、はぁ……」


 突然の事で驚いた様な呆れた様な様子を見せていた。その俺の一言で俺の方を集中して見て口を開いた。


「そんな事を言いにきただけですか?」

「そんな事って……」


 確かにどうでも良いかも知れないけど、もしかしたら死ぬかも知れないんだ。

 俺の顔を見たシェラは更に呆れた様に言葉を続ける。


「アラン様って時々めんどくさいですよね」

「そうか?」

「分かりますよ」

「昔から変わってないのだな」


 全員からそう賛同された。流石に面と向かってそんな事を言われたら少し傷つくな……。


「とにかく私が言いたいのは、いつも通りダンジョンに行って材料を取って来いって事です」

「…………」

「私はアラン様の事を誰よりも信じているのですよ。だからいつも通りそっけない態度でいてください」


 シェラはその場で思ったことを言っている様に感じた。最初に会った時は口下手なシェラがここまで言ってくる様になるとはな。


「ああ。そうだな。今日は豊作だから期待しといていいぞ」

「はい。楽しみにしてます!」


 その会話を最後にシェラとは別れてダンジョンへと向かった。



***



「アラン様……死なないでくださいね……」



***



「それじゃあフライア。先に30階層に行っておいてくれないか?」

「一人でか?」

「ああ。まだステラとは10階層までしか攻略していない。だからステラを30階層まで案内しなくちゃいけない」

「そ、それなら私は行かないほうがいいんじゃ……」


 俺の説明を聞いてステラは不安そうに声を震わせていた。


「ステラがいないと勝てないんだ」


 俺はきっぱりと断言した。俺一人では絶対に無理だ。アイギスたちと組むのなんてもっての外だ。ステラの支援魔法が無ければ通用しないだろう。


「だからすぐに行く。それまでアイツらを守ってやってくれ」

「……分かった」


 フライアは返事を返して30階層に転移していった。もし俺が間に合わなくてアイギス達が死んだら目覚めが悪くなるだろうそう思ったからだ。

 その点フライアが居たら相当楽になると思う。


「それじゃあ俺たちも行くぞ」

「はい!」


 俺たちも10階層に転移した。そして転移した後30階層に行くまでの作戦を伝えた。


「今からのウェールズ戦に備えてステラはできるだけ温存しておきたい。だから今からステラを背負っていこうと思うだが良いか?」


 これが最短かつウェールズ勝てる最適解だと思う。しかし背負っていくと色々な所が当たるので気にするかと思って訊いたのだが、


「はい! 大丈夫です」


 ステラは即答だった。あまりに早く返事が返ってきたので思わず驚いてしまった。


「良いのか?」

「はい。私はアランさんを信じてますから」

「……そうか。それはありがたい」


 ステラのその言葉を聞いた俺は背中にステラを背負い走り出した。


「早くて少ししんどいかもしれないが我慢してくれるとありがたい」

「分かりました」


 10階層以降を今までで最速のスピードで突破していく。

 そのままのペースで、20階層のボスを倒し束の間の休憩を取った。


「ステラ大丈夫か?」

「……はい。何とか」


 ステラのことも考えながら飛ばしたつもりだったが、結構疲れがきているみたいだ。


「アランさんは大丈夫なんですか? こんなにも飛ばしてて」

「俺は平気だよ。こういうのは慣れてることだし」

「凄いですね」

「全然だよ」

「いいえ。本当にすごいことですよ」

「いやいや」


 何故かこんなやり取りが続いていった。

 ステラが褒めて俺が否定する。そんなやり取りをしている内に、ステラは突然笑い出した。


「ふふっ」

「どうしたんだ?」

「いえ、何だが急に笑いが込み上げてきて」

「そうか」

「でもアランさんは相変わらずいつも通りで安心しました」

「これでも結構緊張してるんだぞ」

「そうなんですね」

「ああ」


 なんせあのウェールズに挑むんだからな。それに前とは状況がまるっきり違う。怖くないと言えば嘘になるがそれでもやらないといけない事だ。


「でもシェラも応援してくれている。帰ったらまたみんなで笑って話し合いたいしな」


 心からの本心だった。


「……そうですね。それでまた皆んなでダンジョンに行って」

「ああ」


 これがウェールズ戦最後の休息だろう。だからこそいつも通りの他愛のない会話を続けていた。


 このちょっとした会話の時間でとても体力を回復出来た。こうやって人と話すことで気が楽になることが最近になってとても増えた気がする。


「それじゃあ……そろそろ行くか」

「……はい。十分休憩は出来ましたし」


 ステラやシェラの為にもいつも通りダンジョンから笑って帰ってくる。これが俺の第一目標だ。

 俺たちは立ち上がりウェールズが居る30階層に向かった。

 

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