第14話 勇者パーティ1 剣聖加入
アランを追い出して数日後。俺たちはある店へと入っていった。もちろん貸切だ。新しいメンバーは盛大に出迎えないといけないからな。
「ここが剣聖との待ち合わせ場所だな」
「楽しみですわ」
「これで100階層に行けるものね」
俺たちはこれからの未来に胸を膨らませ剣聖が来るのを待っていた。
何しろ唯一の足手纏いだったアランが居なくなり、剣技で最高峰の『剣聖』の称号を持った人物が入って来るのだ。
「まだか……。お! おーいこっちだ!」
数分の間待ち続けていると店に剣を持った女が入ってきた。いかにも騎士って感じな風貌だ。一部が編み込まれた長く真紅の髪が特徴的だった。
剣聖はこちらに目を向けると歩いて来る。
「よろしく。フライア・リノエールだ。勇者パーティの方たちで間違い無いか?」
「おう! 俺はアイギスだ。この勇者パーティのリーダーをしている。こっちがサーラ、こっちがソフィアだ」
間違いなく『剣聖』だ。挨拶を受けて代表して俺が挨拶をする。
「……もう一人居ないのか? アランという男がいると思っていたのだが」
「あいつは雑魚だったからな。追い出したんだよ。あんな奴どうでも良いさ」
どうしてあんな奴の名前が出てきたのかは分からない。多分他の街にもこのパーティが広がっているということだろう。
俺は事実をフライアに教えた。
「……そんな事はない!」
「……っ!」
しかしフライアは少し怒った様な様子で返事をしてきた。
どうせ偶然あいつの良い噂を聞いたと言うだけだろう。
「大丈夫。俺たちだけで十分なのにフライア。君まで入ってくれたんだ。余裕さ」
「だが……」
励まそうと俺は言葉をかけてやる。まぁ良い噂を聞いていたなら心配になるのも仕方がない。そんな心配もすぐに無くなるだろう。
しかしフライアはまだアランについてを質問してきた。
「アランは優しくとても強いと聞いていたのだがな」
「はぁ……。あんた馬鹿じゃ無いの?」
サーラが呆れた様に言葉を発する。
「そうですよ。私たちが強さを見誤る筈ありません」
ソフィアもサーラの言葉に便乗してフライアに断言する。
「しかし……」
まだ何かあるのか。どれだけあいつに執着しているんだ。
「あんたね!」
痺れを切らした様にサーラが声を荒げる。
「まぁ、落ち着け。——そんなに気になるなら一つずつ説明していくぞ」
「…………」
フライアは黙ったままコクリと頷いた。
「まず俺は神に選ばれた『剣神』の剣技が使える。そしてサーラが誰も成し遂げたことがない詠唱の簡略化を成し遂げた。極め付けはソフィアだ。ソフィアは無くなった腕すらも治せるほどの回復魔法をもっている」
俺たちはそれぞれ最強の名に相応しい程の事をやることが出来る。
「だがアランはこれといったスキルは何もない。その上この前のクエストではアランのほとんど唯一の仕事であるソフィアとサーラの防衛を失敗してるんだよ。そんな奴が居ても意味があるか?」
「それは……」
フライアは言い淀む。後もう一押しか。
「これから100階層に挑むんだ。そんな足手纏いを入れていたら行けるものも行けない。だから追放したんだ」
「…………分かった」
結構な間考えていたようだがやっとの事で声を発した。まだ納得いっていない様子だったのは気のせいだろう。
「そう言う事だ」
ようやく分かってくれたみたいだ。
「ねえ、ソフィア。あいつちょっと感じ悪く無い?」
「そうですね。せっかく名誉ある勇者パーティに入れたというのに」
小さく囁く様な声でそう話し合っていた。
俺も少しは思ったが、勇者パーティは全員強いみたいなのが流れていたんだろう。それなら強いやつが抜けたと聞いたら心配になるだろう。
そんな事を考えてフライアの様子は気にせず話を進める事にした。
「早速ダンジョンの話をするぞ」
「もう一気に90階層に行きましょうよ」
「それでも良いが、フライアが転移できないだろう」
「そうですね」
「だからサクッとダンジョン攻略していこうと思っている。7日間有れば90階層までいけるだろう。その間に連携の練習もできるだろうし」
我ながら完璧過ぎる提案だ。この調子で100階層に行けるだろう。
「明日から早速ダンジョンに向かうぞ」
「そうね。早い方がいいもの」
「楽しみですわ」
「分かった」
それぞれが俺の言葉に肯定の意思を見せる。
「それじゃあ今日はゆっくり休もうじゃ無いか。フライアも俺たちの宿に来るんだろ?」
「……そうだな。一緒の方が効率がいいのだろう」
「おう! じゃあ行くぞ!」
話し合いの後俺たちは宿に帰った。フライアも今は恥ずかしがっているはずだ。すぐにアランよりも俺の良さに気づくに決まっている。
宿に戻った後は詳しい自己紹介をして親睦を深めた。
「フライアはどんな剣を使うんだ?」
「『大和の太刀』と言う剣技だ」
「えっ?」
「あの無能と一緒という事でしょうか」
何気なく訊いたフライアの剣技はまさかのアランと同じだった。
「あいつが使いこなせてなかっただけだろう」
「そうよね。剣聖と言われてるほどなんだから」
「やっぱり無能だったのですね」
俺たちはそう笑い合った。
「私はそろそろ」
俺たちが笑っている途中フライアはそんな声を上げた。
「そうだな。もう休んだ方がいいだろう。明日はよろしく頼むぞ」
「……わかっている」
終始不機嫌そうな顔を見せていたフライアは最後にそう言い残して部屋から去っていった。
「あのフライアって人本当に強いのかしら?」
フライアが居なくなった後サーラが心配そうに訊いてくる。
「そうですね。少し心配になってきました」
「まぁ『剣聖』と呼ばれている程なんだ。安心しようぜ」
「そうね」
「はい」
俺たちはその後も夜遅くまで話を続けた。明日からのダンジョン攻略に胸を弾ませながら。
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