第11話 ステラとこれからの事

 ご飯を食べ終わり宿に帰ると見知った人影が見えた。


「ステラじゃないか。どうしたんだ?」

「あ、アランさん。良かった」


 俺の顔を見るなりステラはホッと安打の息を漏らしていた。


「アランさん。少し話があるのでアランさんの部屋にお邪魔してもいいですか?」

「全然大丈夫だが……。ステラは良いのか? もう外も暗くなってくる頃だぞ」

「はい。親にも話はしてますので」


 ステラは俺の疑問に即答する。そんなに大事な話なのだろうかと勝手に考える。


「それなら良いか」


 断る理由もないので俺は自分の部屋へと案内した。


「適当に座ってくれ」

「はい」


 俺はベットの上に、ステラは椅子の上に座った。そして先に口を開いたのはステラだった。


「ダンジョン攻略お疲れ様です。こんなに早く帰ってくるとは思ってもなかったです」

「ダンジョンにずっといてもしんどいからな。目標の階層まで一気に降りたんだよ」

「そんなことができるんですね」


 ダンジョンの事を話に出してきたが、ステラはどことなく上の空と言った様子だった。


「まぁ支援魔法があれば多少楽にはなるんだけどな。攻撃に集中できるし」

「それについて提案があったんです」



 ステラは待ってましたと言わんばかりに、言葉に食いついてきた。


「ふぅ…………。私を、アランさんのパーティに入れてもらえないでしょうか?」


 大きく深呼吸をした後、ステラはその様な言葉を口にしていた。


「それはつまり攻略者になると言うことか?」

「はい」

「良いのか? 家族が大事だからなれないって言ってたのに」


 家が貧乏なため危険な攻略者をやって、家族に心配をかけるわけにはいかない。そう言っていた。

 それなのにいきなりどうしてだろうか。そんな事を訊いてステラの方を見てみると、ステラは真剣な眼差しでこちらを見ながら言った。


「今日母と話したんです。隠しているつもりだったんですけど、バレてしまいまして」


 あはは、と笑いながらそう語る。


「そしたら私はまだ子供だからそんな事考えなくても良いって。いまからでもいってきなさいって言われたんです」

「なるほど……。良い母親だな……」

「はい。とても」


 思わず感嘆の声を漏らしてしまう。その俺の言葉を聞いたステラはどこか嬉しそうだ。親を褒められたのが嬉しかったのだろうか。


「と言う訳なんです。無理な事を言っているのは分かってます。それでも諦めきれなくて」

「…………」


 ステラは俺のことを信用してくれているのだろう。『千里眼』の時に助けた相手が俺だったから。それでも


「本当に俺で良いのか? 俺よりも強い奴だっているぞ。そう言う奴らのパーティに入った方が安全だと思うが」


 いかんせん俺は一人だ。もう少し人数がいればステラを守り切ることはできると約束できるだろう。

 しかし他に誰もいない状況だ。もしもの時を考えてしまう。


「アランさんが強くて優しいのは私がよく知っています。アランさん以外のパーティに加わるなら攻略者なんてなりませんよ」


 即答だった。俺の提案をキッパリと断る。

 嬉しいが何だか少し小っ恥ずかしい気持ちにもなる。


「確かに俺も支援魔法を使える人は欲しいと思っている事は事実だ」

「はい」

「だが俺はあの勇者パーティを追い出されたんだ」

「えっ?」


 見た事はなくても名前だけなら聞いたことがあるであろう勇者パーティ。その言葉を出すと目を丸くしたステラの姿があった。


「それでも良いのか?」

「別に構いませんよ。それが何の関係があるんですか?」


 勇者から見放されたと言う事は弱いと見られるそんな攻略者だと言うのに。分かっていっているのか分かってて知らないフリをしているのか。


  だが、そんなのはどっちでも良い。その対応が俺はたまらなく嬉しかった。どこに行っても『勇者パーティのアラン』見られる状況だった。


 それも嫌ではない。それでもたった一人でも『ただのアラン』として俺を見てくれる人が身近に欲しかった。


「私はアランさんと、何者でもないアランさんと一緒に居たいと思ったんです」

「……分かった」


 ステラにあそこまで言われては折れるしかなかった。

 ステラを守り切れるかは分からないが、大丈夫だろう。ここまで信用されているのだから。裏切る事はできない。


「ほ、本当ですか……」

「ああ。実を言うと俺もステラを誘いたいと思ってたんだ」

「そうなんですか!」

「ああ。知らない人とパーティを組むより知り合いの方が上手くいくからな」


 実際最初に考えついたのがステラだし、向こうから言ってくれるのは本当に運が良かった。


「そ、それじゃあこれからよろしくお願いします」


 ステラは椅子から立ち上がり、綺麗なお辞儀をしてきた。


「ああ。よろしくな」


 俺も立ち上がって、軽く頭を下げた。


「それじゃあ今日は泊まって行くか? 色々話したい事もあるし」

「えっ?」


 最初の挨拶を済ませた後ステラにそう訊いた。もう外も暗いしこれからのことも話しておきたい、そう思ったからだ。


「良いんでしょうか?」

「ああ。この部屋ベットが二つあるし大丈夫だろう」


 最初に借りた時にこの部屋しか空いていなかったため、ベットが二つある部屋を借りていた。


「わ、わかりました……。ではお言葉に甘えて」


 ステラは顔を赤くして小さく頷いた。

 その様子に少し不自然さを感じたが、大丈夫だろうと話を進めた。

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