終章 公官庁の実力

 レギンスのポケット。震える。


 電話。


 十回以上震わせてから、出た。


『暇ならすぐ出なさいよっ』


「あら。ごめんなさい」


『せっかくZ型式のファイルが手に入るところだったのに』


「それは残念ね」


『依頼主の欲しいものだったのね。あなた、追われるわよ。国に』


「どうぞ。追えるなら」


『はあ』


「どこから焼こうかしら。ためしに官邸と省庁のスプリンクラー全部作動させてみる?」


『やめて。分かってたわよ。あなたひとりにすら、国は勝てない』


「あら。あなたがいるじゃない」


『ええ。見事に負けてファイルを奪われた私がね』


「ご愁傷さま」


『なんなのよ。あの情報処理速度。国家二個分の速さは出てたわ』


「動くイケメンのWi-Fiがいたのよ。しかも有線」


『ええそうですか。いたらぜひ結婚させていただきたいですわねっ』


「Z型式のファイルの中身、知りたい?」


『知りたいっ。めっちゃ知りたいっ』


「分かるわね」


『追わないわよ。ってか、追えないわよ。もう燃えたから、私以外にあなたの足痕を追える人間はいない』


「よろしい」


『で、Z型式のファイルって、いったいなんなの。教えて』


「ひ、み、つ」


 電話を切った。

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ファイル Z 春嵐 @aiot3110

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