第8話 その男、絶威

「そこまでばれていたとは」


「ばれるもなにも、私が土地転がしの情報を流したときに近付いてくるなんて、当の本人以外ありえないじゃない。そして、政治家はここにはいない」


「そのとおりだ」


「あなたが、その、人じゃないとは、思わなかったけど」


「ああ。たまたまウイルス実験で生まれた身でな」


「そうなの?」


「シンジケートの言いなりをするしかなかったんでな。ありがたいよ、本当に」


「そのファイルを、人質に取られてたのね」


「そうだ」


「なんなの?」


「訊くと、シンジケートに追われるが」


「公官庁敵に回した時点で、同じものよ。それよりも、知りたいわね。その中身」


「作り方だよ。俺の」


 電子的な生命体の、作成方法。


「これがあるとな、俺みたいなのが延々と生まれるから。誰にも渡せなかったんだ」


「それで、シンジケートの下請けでどうでもいいウイルス売ってたのね」


「作った薬は素晴らしいものばかりだけどな」


「あ、そう」


「おまえも。趣味で正義の味方、なんだな」


「あなたと同じよ」


「そうか」


「もう行くわ。この街に、興味がなくなった」


「名前を、教えてくれ。また、会うことがあるかもしれない」


「名乗らなかったっけ。ファイアクラッカーよ」


「花火、か」


「違う。ぜんぜん違うわ」


「そうなのか」


ファイアの、クラッカーよ」


「本名なのか」


「ええ。あなたの名前も訊いておこうかしら?」


絶威z2e


「Z2のeファイルなのね。あなたも本名そのまんまじゃないの」


「おたがいさまだな。また会おう。燃える美人さん」


「またね、機械のイケメンさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る