第3話 戦闘と尋問

「姉ちゃん。なんだい。まだ客引きにゃ早いぜ」


 言った男の顔を、肘で付いた。


 立ったまま、男が絶息する。


「おい」


 それ以上の言葉を、言わせなかった。一人の腹を膝で押し込み、もう一人の背中を手刀で折った。


 三人を蹴飛ばして、近くのベンチに、座らせる。


「そのまま。動くな」


 全員の脚先を、踏みつぶした。声をあげようとしたひとりの顎を、肘で突く。


「聞かれたことにだけ答えろ。質問はひとつ」


 残っている男がふたり。


 ひとりは、震えはじめた。もうひとりは、まだ理解が追い付いていない。


「Z2というファイルを、探している。場所を、知っているか?」


 ふたりの首を触る。太い血管。心拍数。


「もう一度訊く。Z2というファイルを、知っているか?」


「しらない」


 答えた男。本当に知らないらしい。心拍数が、速くなるだけ。血管を、強く抑えた。男の息が、なくなる。


「答えなければ、おまえも、こうなるが」


 残ったひとり。不安定な心拍数。


「ファイルは、どこにある」


 ゆっくりと、血管を、抑える。周りからは、仲の良い人間同士がベンチに座って話しているようにしか、見えていない。


「はやくしろ。脳に血が行かなくなるぞ」


 男。震え出した。


 肩を、強く押す。外れる、音。叫ぼうとした男が、声を詰まらせる。喉を抑えているから、声は出ない。


「社長が」


「社長。どこの社長だ」


「麻亡製薬の、社長が」


「持っているのか」


「探せと、言ってきた」


 政治家に賄賂を与えて土地転がしを支援していた、企業。その社長。


「見つかったのか」


「いや。でも、見つけると、新薬の特許と横流しルートが、約束されると」


 これ以上は、知らなそうだった。心拍数の不安定さがなくなり、加速していく。


 喉を、つぶした。


 ベンチに置き去りにして、その場を離れる。


 麻亡製薬の、社長。




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